#029 『 即位 』
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隣国マーシアとの戦争を終えてから一ヶ月。
もはや青空など存在しないくらいに空が雲で覆われる頃、俺は遂に領内の不穏分子を纏めて一掃することができた。
中には、領外へと逃亡しようとする者やいっそのこと団結して反乱を起こそうとする者なども現れたが全て、未然に防ぎきり、捕縛しそのまま裁判を行なった。
裁判とはいえども、前世のような公明正大に行われるようなものなではなく、むしろ領主の独断と偏見による一方的な弾劾のようなものだった。
そして、昨日。そういった不穏分子は見せしめ及び国民の娯楽として全て首を切り落とされて処刑された。
今日は、不穏分子が携わっていたであろう事業や領土の管理などを誰に任せるのかを決めるべく、俺を筆頭に経験のあるエクトル、そして兄のケイ。相談役としてマーリン。また、学習としてのオリヴィアの他に領内の財務官であるロタール、戦費を苦労して確保したエドモンドが集まっていた。
「不穏分子は片付けた。あとは空いたポストを誰に充てがうかだが、この際にいっそのこと後の建国に向けて色々と組織化したい。」
俺の言葉に、賛同するように皆一様に縦に頷いた。
俺の目指す国は官僚体制がなければ元も子もない。故に、今回の粛清で空いたポストというのは基本的に優秀な文官に任せて領内の力そのものを底上げできるようにしたかった。
加えて、粛清された者たちの財産などは一部を除いて全て領の財源へと返還されたことで比較的原始的な官僚体制程度であれば構築、運営が可能になった事もある。
また、俺自身の目標としては自由で平等な社会の構築であるために、身分制をどうにかしたかったというのもあった。
現状、文官の多くは貴族出身者が多い。その理由としては皆、教育を受けたことがあるからであり、教育を受けたことがない人は独学しない限りは成り上がれない社会になっている。
前世の幼い頃では勉強が嫌いだった俺も、次第に成長するにつれて勉強の意義がわかってくるとドンドン楽しくなって積極的に学んでいくようになった。
それもこれも、周囲にはそれを支える基盤があったからというのはこの世界に転生して改めて思い知らされた。
また。教育も転生してからも行なっていたが、この世界の教育は全て家庭教師によるものだったので結構な額をエクトルに請求されたのは今でも覚えている。
とはいえ、身分社会を早急に変えるようでは、全貴族を相手にすることにもなるので徐々に絶対的な身分社会から相対的な身分社会へと移行できるように時間をかけて行うつもりだ。
その第一歩として、今回は原始的官僚制の導入を俺は提案した。
「とはいえ、アルトス様は具体的にはどうするおつもりでしょうか?」
財務を担当するロタールが尋ねるように話す。
「そうだな。学力的な面からしても貴族の存在は外せない。そもそも、学力のある領民は限られているしな。」
俺が一人頭を悩ませていると、隣に座っていた相談役のマーリンが口を開く。
「それであれば、商人にやらせて見たらどう? 一部の商人は娘や息子に教育を施すからある程度はできると思う。」
「それも考えたがそれを含めても数が……。」
官僚体制は想像以上に人を使う。
特に下へ行けば行くほどその傾向は多くなり、上へ行けば行くほど数よりも学力を求められる。
つまり現状、商人たちなどの一部領民の学習者を採用して運用をしても数が足りなくなるために重労働になる。
また、身分社会の弊害によって昇進は厳しくなるため、やる気も上がることは少ない。
まさに、そんな職場で働きたいと思えるのは経済的な事情で仕事が欲しいか余程の酔狂な者だけだろう。
加えて、そうした職場を一度でも作ってしまえば、後に色々と問題が起こってしまうことにもなる。
そうしたことを未然にわかっていなかったのであればまだいいが、俺の場合は前世の記憶があるためにそこがわかってしまう。
時代背景や文化、民族性などが違うこの世界に前世の常識を持ってくるのは場違いかもしれないが俺としては、回避できる問題はできるだけ回避して、うまいこと前世のイギリスや日本のような社会を築きたい。
そのためにも俺は、官僚制度の問題を重く受け止めていた。
雇うにしても世間にはそう数はいない。いたとしても、貴族などの限られた人物たちだけ。
貴族や豪族などを採用することは可能だが、彼らの多くは向上心がありすぎて、癒着しようとしてくることが問題だ。
癒着し権力を求める。
まさに貴族、豪族に課せられた性が顕著に現れる。
しかし、背に腹は変えられないとのことで俺はある方法をとる。
「よし、今は何がともあれ、まずは内政を磐石なものにしたい。そこで、危険を承知で貴族や豪族たちを採用しよう。」
「でも、それではなんの問題も解決しません。どうするつもりですか?」
「そこは考えてある。貴族や豪族は権力を求めたがる。だからそこに毒を盛る。」
「毒ですか?」
「ああ、権力には義務が生じるが、不正を働く貴族や豪族たちの多くは義務を軽んじる傾向がある。そこで、義務を軽んじた者には統治能力がないとして、貴族の権利を剥奪する。」
俺は真剣な眼差しで告げると反応するようにエドモンドが机を叩き、立ち上がって反論する。
「権利の剥奪って!! それは王の特権ですよ!! 一貴族が勝手にしていいことではありません!!」
驚きのあまり興奮するエドモンドを見ながら、俺は静かに説明を始める。
「そうだな。だが、我が領内ではできる。なぜなら、王位継承権を持つオリヴィアがいるからな。」
「わ、私!?」
突然、名前を呼ばれてドキッと跳ねるオリヴィアを傍目に身振りを交えて、説明を続ける。
「ああ、オリヴィアの存在は王のいない現在において、最も王位に近い存在。いわば、仮ものの王だ。」
そう告げる俺に、誰も反論はしなかった。
仮ものとはいえ王であれば、王の権力を使うことはできる。しかし、それは同時にオリヴィアというカードを使うことにもなる。
他の貴族などにオリヴィアの存在がバレてしまえばオリヴィアの安否が不安になるが、そこはマーリンを警護に当てることで問題は解消される。が、それでも我が領が他の者から白い目を向けられるのは避けられない。
そこで、俺は一計を案じることにした。
「オリヴィアの存在はまさに、我が領にとって薬にもなれば毒にもなるものだ。しかしながら、いつまでも隠せるものでもない。であれば、外部の者にバレる前にバラすことで優位を得る方がいいと思う。」
「だが、それではオリヴィアが危険に晒されるのではないか、アルトス。」
険しい顔で見つめてくるエクトルに俺は視線を向けると、対策を話す。
「それには、及ばないかと。オリヴィアの存在を公表した途端にオリヴィアの警護はマーリンに任せようと考えています。
私と同じ《王の刻印》を持つ、マーリンであれば、誰であろうとそれこそ父上であろうと遅れは取らないと思います。」
「納得だな。俺では、マーリンを引きつけることはできても、倒すことはできん。」
「とりあえずは、わかりました。ですが、一つ質問をよろしいでしょうか? アルトス様。」
一人律儀に手をあげると領主である俺に確認を取ってくる。
「なんだ? ロタール。」
「オリヴィア様の公表や文官たちの事も理解はできました。しかし、アルトス様は後に王国を建国されると言っていました、となるとアルトス様はオリヴィア姫殿下と結婚することになりますが……? いいのでしょうか?」
ロタールの言葉を聞いて、一瞬俺は固まった。
ロタールの言葉は全て理解できたが、結婚という言葉を聞いて俺は身構えた。
前世でも結婚経験はおろか、恋愛経験もほぼ無かった俺が転生してはや十五年早々で結婚となるのは気が早すぎたように感じた。
そもそも、俺自身結婚願望は前世からはある。
だが、それはあくまでも願望であってできればしたい程度だった。しかし、こうして目の前に現象として現れるとどうにも言葉がつまり始める。
加えて相手は王の代理たる姫ということもあり、断ることはできない。
確かに、オリヴィアは可愛いと思う。
難しい話題でも理解できるほど賢いし、顔立ちや身振り手振りも可愛らしく、外見上の問題は一切ない。
また、出るとこも出ているから問題はない。だが、いざ結婚となると話は変わってくる。
特に年齢だ。俺は前世では二十二でなくなり現在転生して十五年。
合計すれば、三十七の年齢だがそんな男性が、見た目十五くらいの女性を好きであるのは何かと問題を感じる。
特に、前世の記憶がある俺はロリという言葉が脳裏を巡る。
前世ではオタクではあった俺でもロリの領域にはついぞ入ることはなかった。
だからそこ、俺は余計に戸惑っていた。
「コホンッ、そうだな。その場合は結婚することになるだろうが、実際にどうなるかはオリヴィアに任せる。俺は、オリヴィアが嫌いではないが、だからと言って彼女を政治の道具にしたくはない。一人の女性として、俺は彼女の気持ちを優先させたい。」
あからさまな咳払いをして、ロタールの発言を払拭すると冷静に言葉を返した。
だが、俺の返事を聞いた皆はそれぞれ別の反応を示した。
オリヴィアは一人、そっぽを向いてはいたが、耳が赤くなっており照れているのがわかった。
マーリンやエクトル、ケイはニアニアと若いのはいいよなとでも言いたそうな雰囲気を醸し出しており、ケイの隣に座るエドモンドは軽く頭を抱えていた。
「と、とりあえずはだ!! 今後俺たちは戦争に備えねばならない。そのためにも一早い復旧と軍備の整理を行うぞ。」
「「「おう!!!」」」
会議を半ば強制的に終わらせるとエクトルやケイは兵たちのところへ、エドモンドは頼んだ救援物資を届け不足がないかを確認しにレクサムへ、ロタールは肩を落としながら自身の作業場である財務室へと帰っていった。
そして、マーリンはなぜか扉ではなく窓から飛び降りるとそのまま身体を浮かせと、何処かへと飛んでいった。
会議室には俺とオリヴィアだけが残され、なんとも気まずい空気が数分続いた。
しかし数分後、会議室を包み込む気まずい空気に耐えきれなかった俺は残された資料等をテーブルにおくと、未だ微動だにしないオリヴィアに向かってそっと謝罪した。
「結婚という大きな事柄を勝手に、決めてしまい申し訳ありません。オリヴィア姫殿下。」
誠意を示すように一礼すると、オリヴィアは恥ずかしさのあまり口を元を隠しながらそっと見てくると、謝罪を受け取った。
「…………い、いいえ、いいのです。私もアルトス卿が王に就くべきだと思うので……、ただ……、ああ言うのは少し……。」
モジモジと応えるオリヴィアに俺は「少し……?」と食い気味に尋ねると、オリヴィアは顔を真っ赤にさせて、殴ってくる。
オリヴィアのパンチをもろに顔面に食らったことで俺は吹き飛ばされたが、即座に立ち上がるとオリヴィアは、なんとも言えない恥ずかしさを堪えるように立っていた。
そして、小さい声で何かをボソボソと呟くとそのまま、会議室を後にして駆け出した。
その後ろ姿を俺は追いかけることはなく、一人会議室に残された。
その日以降、俺とオリヴィアが話すことはなかったが俺は政務を続け、たまに帰ってきたホーリー城ですれ違うとオリヴィアは何かを忙しいようにしていた。
それから、一ヶ月。
ついに夏も本番という時期に準備の全てが整ったことで俺は民衆をできるだけ集めさせた。
ホーリー城のあるベランダから覗くと城には今か今かと待ち構える民衆に加えて、集まった民衆に対して販売を行う行商人やそれらを押さえ付ける兵たちの姿があった。
この日、俺は転生して初めて国を建国することになる。
これから先、俺は数万人の命を背負って生きていくことに覚悟を決め、整然とした態度とこの日のために作らせた特注品の服を身に纏ってホーリー城にある謁見室へと向かう。
一歩、また一歩と進む俺は緊張して呼吸が荒くなる。
そして、謁見室の前にある扉までつくとそこには俺と同じようにガチガチに緊張したオリヴィアがウェディングドレスに似た白いドレスを纏っていた。
そんな俺とオリヴィアにポンとどこからか現れたマーリンが肩に手を置き、囁くように呟く。
「大丈夫。僕っちがいるから。」
そう告げるマーリンの目は優しく、そこまでも俺たちを信頼していた目つきだった。
それを互いに見るとまるで緊張している自分がバカらしくなり、いつの間にか緊張がどこかに消えてなくなった。
そして、俺がオリヴィアを見て、同じように緊張がなくなったのを確認すると扉を守護する兵たちに合図を送る。
木の大扉独特な音を鳴らしながら扉が開き、壮大な音楽が演奏され始める。
普通とは思えないほど豪華な服を纏った貴族や豪族たちが左右に並ぶ中、俺とオリヴィアは中央に敷かれた赤い絨毯を静かにゆっくりと進む。
その先には、もはや先代の領主となったエクトルとその妻メアリーが立っていた。
そんな彼らの元まで近づくと膝をつき、頭を垂れる。
様々な宣誓がなされ、それに「誓います」と応える。
そんな単略的な儀式が終わり、ついに俺はエクトルから、オリヴィアはメアリーから王冠とティアラを被せられると、皆に見えるように振り返る。
そして貴族、豪族関係なしに頭をたれる。
その様子を確認してから俺とオリヴィアは声を揃えて告げる。
「「ここに、新たにウェストリー王国の成立を宣言する!!」」
これにてメインシナリオとしての第一章は終了です!!
あとは軽い後日談と裏話的なものがあって、第二章に突入です!!
なお、第二章に関しては現在、調整中なのでまだ公開しません。m(_ _)m
できれば、今月末くらいには投稿しようと思いますができるかどうかは現在では不明です。
今後とも、よろしくお願いいたします!! (● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
◇・◇・◇
それでは読んでくださってありがとうございます!! ( ^ω^ )V
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また、少しでもこの物語を『面白い』、『続きが気になる』と思っていただけたら、
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( ✌︎'ω')✌︎<オネシャス!




