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Godin Fantasy —異世界建国譚—  作者: 高峰 遼一
第一章 女神の選定と竜の刻印
19/70

#016 『 解決案と天災 』

◇ お知らせ ◇

今日で毎日投稿2日目!!

昨日から始まったこの毎日投稿。来年の1月7日までに合計”20話分”を投稿するのでよろしくお願いします!!


♪( ´θ`)ノ <よろしくお願いします!!

 島に上陸するとゴツゴツとした石が所狭しに敷き詰められており、上陸してきたものを拒むように先の尖った岩が所々に刺さったようにあった。


「周囲の警戒を怠るなよ。十分、気をつけて進むぞ。」


 周囲にのみ聞こえる声で告げる俺に上陸部隊の兵たちは一斉に頷いた。


 石や岩がある海岸線を抜けると今度は不気味に曲がった木々たちが登るのを拒むように生えていた。その光景に兵の誰かが呟いた。


「まるで、侵入者を拒んでいるようだ。」


 その言葉に賛同するように俺は兵たちに抜剣させると比較的登れそうな場所を探すとそのまま海岸線を後にした。


 剣を片手に突き進むと海岸線の林を抜け、ある程度広い草原へと出ると俺は皆を召集し作戦を再度確認した。


「いいな。甲板でも告げた通り、これより先の都市を目指す。何が起こるかは不明なため、常に抜剣の用意をせよ。また、何が襲って来ても大丈夫なよう心構えをしておけ。最後にここは未知の島である。そのため、いざと言う時は味方であろうが置いて逃げろ。わかったな。」


「「「はいッ!!」」」


「よし、じゃ準備が出来次第、都市を目指す。」


 各々、羽織っていた王国のマントを脱ぎ捨て、楔帷子と歩兵用の装備のみに着替えると皆一同に顔をこちらに向け、そっと頷く。

 その様子に俺は準備が完了したと悟るとそのまま都市のあった南側へと進んでいった。


◇・◇・◇


 上陸して早数時間、すでに太陽はその姿を見せ、燦々サンサンと照らし出す中、徐々に俺たちの周囲に人の気配が増してくる。

 すでに都市の入り口が見える位置まで近づいていた俺たちはどうやって都市内へと入るかを検討していた。


 都市は四方を壁に囲まれた城郭都市であり、出入り口となる門には衛兵らしき物たちが検問を行なっていた。


「隊長、城壁の上には兵が配置されていません。恐らく、城壁を登っていけるかと。」


 斥候に出していた兵からの通達に俺は数秒考えるとそのまま三人を選ぶと都市内での情報収集を言い渡した。


「よし、レオ、グルーズ、ジャックの三人は都市の城壁を登って都市へと侵入してくれ。そして、都市内の情報を食料の品から小銭の種類、話す言語などどんな些細なものでのいいからとにかく情報を多く集めてくれ。」


 そう告げ終えると最後にレオだけ再び声をかけると他の二人には聞かれないように、耳元で極秘の任務を託した。


「それとこれは特に知りたい情報だが“白いローブを纏った杖持ちのの女性”については必ず聞いてくれ。わかったな。」


「御拝命致しました。」


 爽やか笑顔がよく似合うレオがそう告げるとグルーズ、ジャックとともにそそくさと生い茂った草を中腰になりながら突き進んでいった。


「アルトス様“白いローブを纏った杖持ちの女性”と言うのは?」


 背後で話を盗み聞いていたフィンが俺に尋ねると俺は都市の方を見てただ呟くように「俺の探し人だ。」と告げた。


 その後すぐさま残った兵に命令を下す。


「レオたちがどれくらいで戻ってくるかわからんが、いつ何時戻ってきてもいいようにそれまで順番に見張りを二人、立てて休憩する。とりあえず、最初は俺とフィンだ。」


「「「了解!!」」」」


 上陸してくれた兵たちに十分な休息を与えながら、俺はフィンへと顔を向けると本上陸についての概要を説明した。


「今回のこの島についてだが正直なところ先ほど告げた女性を探している。その女性というのが恐らく何かを知っていると思う。何をどこまで知っているのか、それこそ俺では知らないがそれでも探すだけの価値があると思う。」


「左様ですか。」


「とはいえ、ここに来た以上もはや目的はそれだけじゃない。これを見てくれ。」


 そう言ってフィンに差し出したのは、濃い茶色で柔らかく粒の小さな土の塊だった。


「土ですか……。」


 苦笑いを浮かべながら告げるフィンに俺は頭をバシッとフィンの頭を手刀で叩いた。


「いいか、この土をよく見てみろ。」


「はい……。」


「これはなエクトル領とは異なっていて土に栄養がある。」


 土に栄養があるという俺の言葉にフィンは咄嗟に反応し、俺の手にあった土を指で触り始めた。


「…………確かに。我が領の土とは少し違う気がします。」


「そうだろう。つまりだ、これで食料問題は解決するかもしれないということだ。」


「食料問題がッ!!」


 まさかの解決案にフィンは声を上げてしまいそうになるが咄嗟に俺がフィンの口を手で押さえた事もあり、周囲にはそこまで広がることはなかった。

 手を離した後すぐにフィンが「すみません……。」と謝ってきた事もあり俺は話を続けた。


「ああそうだ。だが、問題もある。」


「問題ですが……? 一体何が?」


 首を傾げながら告げるフィンに俺は地面を指差しながら告げた。


「この島だよ。」


「島?」


「俺たちはどうやってこの島にたどり着いたんだ。」


「それは、朝日に突如現れた…………。」


 そこまで自分で言ったフィンは問題の内容がわかった。


 この島からの食料輸送による食料解決案の問題点はただ一つ。

 それはこの島とどのように交易すればいいのかという物だった。


 島は基本的には見えない。

 故にこの島と交易するには現段階では恐らく、俺たちがこの島を見つけたと同じように朝日が照らされ出した時間帯に現れた島に向かうことしかない。とはいえ、これはあくまでも仮説であるために毎朝ではないかもしれない。もしかしたら週に一度か月に一度、下手をしたら年に一度しか朝日の光で現れ消えるのかもしれない。

 だとしたら俺たちは、まさにその瞬間に奇跡的に立ち会えたのかもしれない。


 加えて、問題はもう一つある。


 それは上陸する前に見た都市の港だった。

 都市の港には小型船や中型船は見られたが大型船がなく、また大型船を止められるような大規模な港はなかった。


 つまり、多くを交易しようと思えば、どうしても都市の港を大規模に改修しなければならない。

 それはある意味では支配しなければならないということの裏付けでもあった。


 実際に地政学的に見ても、この島は重要拠点となっている。

 アイリッシュ海のほぼ中央に位置し島の大きさも決して小さすぎず、とはいえ大き過ぎない。


 まさに適度な大きさに加えて未だ未開発の森林が多く、一部改修は必要ではあるものの都市があり、また都市があるということはそれだけの人口がこの島にあるということでもあった。


 つまり、この島を拠点としてアイリッシュ海の制海権は事実上、手に入れることができる。

 また、この土から見てもこの島は肥沃であり、肥沃な大地が少ない我がエクトル領にとって非常に重要な食糧庫になる。


 そうなれば手に入れないことに越したことはない。

 加えて、この島の住民は都市の警戒を見ても緩々であり外敵の存在を認識はしているもののそのほとんどが攻めることができないとして厳重に警戒はしていないように見えた。


「どうしましょう。」


 俺の意見を聞くように尋ねるフィンに俺は頭を抱えた。


 まず、この島が何が理由で消えるのかわからない以上、戦闘行為を含めた侵略は愚策だろう。


 仮に攻めても島が消える以上、外部からの援軍は期待できない。

 そうなれば最大戦力で攻めるしかないがそうなれば島がいつ現れるのか、島が消えた状態で島から出られるのかという問題などもある。


 もし、現れるのが不定期で島から出られるのが島が現れた時だけであるならばもはや侵攻した時点で終わりだろう。

 例えこの島を占領できても、最大戦力を失えばどんな貴族や国であろうとも、大打撃だ。


 そうなればこの島の価値はもはや無価値だ。

 つまり、この島は自立した小さな国家としては十分すぎるぐらい条件が揃っているが占領するとなると途端にお荷物になる。


 少なくとも、この島の特性を明かさないまではそうだろう。


「とりあえず、レオの報告を待って考える。行動はそれ以降だ。」


 その後、俺は他の兵に見張りを任せ、俺はフィンとともに休息をとった。

 日が傾き始め、黄昏時になった頃、生い茂った茂みがざわざわと音を立て始めた。

 その音に俺やフィンを含めた兵たちはすぐさま、抜剣し敵の存在に身構えた。


 だが、茂みから出て来たのは敵ではなく、レオたちだった。


「すみません。遅れました。」


「いや、何があった? 聞かせてくれ。」


 レオの帰還に胸を撫で下ろした兵たちに俺は剣を納めるように告げると、休息中につくった簡素な焚き火にレオたちを連れて報告を聞いた。


「とりあえず、報告ですが––––––––。」


 レオの報告を聞き、まとめると言語、文字、種族は我々と同じ。貨幣についても同じではあるものの数に限りがあるために、貨幣があれば貨幣で済ませるが所々では物々交換での交換も見受けれらた。


 他にも島でありながら魚などの魚介類は少なく、島の中では高級品とされているなどの違いがあった。肉などの家畜に関しても非常に人気度の高いラム肉である羊があるほか、数は羊に比べて少ないものの牛や豚、鶏などもあり食料の偏りはなかった。


 農作物に関しては小麦を筆頭に豊富にあり、大規模な農園が島のどこかにあることを連想させられたという。


 そして、問題はレオの持ってきた彼ら曰く見た事もない聞いた事もない食べ物だった。

 丸くて凸凹とした表面とは裏腹に、非常に人気のあった作物らしい。


「これはジャガイモやな。」


 レオの持ってきた人気の作物を手に俺はまさにそう思い、つい口を滑らせた。


「ジャヒモ……とはなんですか、隊長?」


「ジャ、ガ、イ、モ、な。別名、馬鈴薯。そうだな、なんて説明すればいいのか……。」


 俺は幾度と同じように頭を悩ませた。


 ジャガイモ。別名、馬鈴薯と呼ばれるその作物は、南アメリカのアンデス山脈が原産であり、新大陸の情報がないこの世界において言わば、オーパーツのような作物だった。


 まさに、“場違いな作物”そのものだった。


 ただ、逆にいえばジャガイモの発見は非常に良い。

 かつて世界規模で起こったとされる食糧危機において人類を救ったのはいつだってこのジャガイモだった。


 ビタミンCなどの豊富な栄養があるばかりか、保存がきき、料理への応用に関しても幅広く応用できる。また、お腹にたまる事から食料品としてはかなり喉から手が出るほど欲しい作物。


 加えて寒冷地に強く、地中で育つために鳥害に遭わずに年に複数回の栽培が可能なためリアルチート作物としても認知されている。


 実際に世界四大作物としてもその地位は小麦、米、トウモロコシと同等とされている中でそんなチート作物がこの島で取れるということはこの島の重要性をより高めていた。


 一方で俺は、なぜアンデス山脈原産のジャガイモがこの島にあるのかを疑問に思っていた。

 


「まぁ、そうだな。一言でいえば、このジャガイモで我がエクトル領の問題だった食糧難を防ぐことが可能になる。そんな作物だ。」


 俺の言葉に他の兵たちも目を見開くくらい驚いたように俺を見つめた。


「つまり……これがればもう…………飢えないと。」


「そうだ、この作物は年に何回も取れる上に腹持ちもいい。加えて保存も効くからな。小麦の代用品としても遜色はない。」


「「「おおぉぉ!!」」」


 一斉に声を上げる兵たちに俺は、レオたちに告げた。


「他に何がある?」


「他には、チーズやパンなどがあります。それ以外は特段なにかあるわけではありませんが、隊長が探している女性については情報があります。」


 レオのその言葉に俺は僅かに目を見開くと兵たちに野宿の準備とレオたちが持って来た食料を使った宴会を許した。


 その一方で俺はフィンを個別に呼ぶと俺、フィン、レオの三人で女性についての情報を交換した。


「さぁ、例の女性について教えてくれ。レオ。」


「わかりました。とりあえず都市で聞いてわかったことは女性が西の城に一人住み着いていることとこの島の濃霧を発生させていること、そして––––––––これは真偽のほどはわかりませんが……魔法が使えるとのことです。」


 魔法という言葉を聞いて俺とフィンは顔を見合わせた。

 魔法とは一種の厄災であり、人の世における天災。それを知っていたフィンはすぐさま進言してきた。


「アルトス様、撤退しましょう。魔法を持つ女性に会うなど無謀もいいところです。」


「そうだろうな。でも、俺たちはもう引くことができない所まで来ているのだぞ。ならば、もうこのまま進み切るしかない。」


 俺の言葉を聞いて、退路がないことを悟ったのかフィンは苦虫を噛み潰したような顔で目線を逸らすと「すみませんでした。」とだけ謝って口を閉ざした。


「とりあえず明朝、西の城へと向かい例の女性に会う。」


「わかりました。」


 俺の命令にレオは頷くとそのまま他の兵たちの元へ行くと楽しく談笑を始めた。


 その光景に俺は内心で罪悪感を感じていた。

 魔法の力を持つ女性に会うことが一体どれほどこの世界では恐怖なのか知っていた俺は誰にも聞こえないような声で「すまない」と呟くと手に持ったパンを齧った。


◇・◇・◇


 古ぼけた城の一室で女性は一人、椅子に腰を掛け目を瞑り、ぶつぶつと独り言を繰り返していた。


「そうよ、アルトス。私はここにいる。」


 一人、告げる女性の傍には杖と白いローブ。そして、その瞳には見た事もないような模様が燦然と輝きを放ちながら浮かび上がっていた。

読んでくださってありがとうございます!! ( ^ω^ )V


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また、少しでもこの物語を『面白い』、『続きが気になる』と思っていただけたら、

レビューや感想等の方もお願いします!!


( ✌︎'ω')✌︎<オネシャス!

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