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Godin Fantasy —異世界建国譚—  作者: 高峰 遼一
第一章 女神の選定と竜の刻印
16/70

#013 『 二人の魔女 』

◇ お知らせ ◇

長らく、更新を待って下さった方々に朗報です!!

今日(12月24日)から来年の1月7日まで合計20話分を“ 毎日投稿 ”をします!!

( ^∀^)//やったねッ☆

なので、楽しみにしてください!!

 肩先まで伸びたショートヘアの美しい銀髪に加え、王妃と酷似した顔立ちが特徴的な元凶の女性が胸元や太ももなどを一切防御せずに露出しているもはや防具とは言えない軽装を纏い、ゆっくりと迫る。

 その姿に王妃オルティアと白いローブを纏った女性はジワリと迫る冷たいも冷気を背中に感じる。


「終わりにしましょう。何もかも、あの時のように……。」


 狂気な笑みを浮かべながら告げる女性に王妃オルティアは肺いっぱいに空気を吸い込むと残る力の全てを使って地面を蹴り、相手の間合いへと飛び込むとすぐさま応戦する。

 王妃と女性が激しく剣を振り翳す光景に白のローブを纏った女性はすぐさま魔法を紡ぎ出し、王妃当たらないように元凶の女性に目標を定めると王妃を支援する。


 自身にとってさして害の無い魔法が次々と放たれる事に苛立ちを募らせる元凶の女性に王妃は閃光のような鋭い六連撃を女性の胸元めがけて叩き込む。


 刹那、女性はすぐさま剣を王妃の剣先と自身の胸元の間に滑り込ませると攻撃を全て受け止める。

 だが、攻撃を受け止めた影響によって女性は王妃からわずか後方へと吹き飛ばされることとなり、側から二人の戦闘を見ていた白いローブを纏った女性がこの時を待っていたかのように杖を振り上げ、魔術を展開する。


 瞬間、周囲を囲む火災とは裏腹に温度は急速に低下し石畳の床を着霜させ、空気を凍てつかせた。

 そんな中、王妃オルティアは凍てつく地面に足下をすくわれぬように着地するとすぐさま迎撃態勢を整えるが魔法によって生み出された冷気が周囲の火災によって加熱され、霧のように変化すると周囲の視界を遮るように立ちはだかる。


 見えない相手を警戒しながら白いローブを纏った女性は肺に溜めていた空気ゆっくりを吐き出す。深呼吸し上がった息を強制的に整えると冷気によって遮られていた視界がぼんやりと晴れる。


 そこには六蓮撃を防ぎきった姿の女性が石像のように凍てついていた。

 その姿を見て王妃オルティアと白いローブを纏った女性は張り詰めていた警戒心を解くと合流すべく、歩き出す。

 しかし、すでに疲労がピークを迎えた王妃オルティアは安心からかドサッと地面に倒れ込む。


「オルティアッッ!!!!」


 白いローブを纏った女性はすぐさま駆け寄るとオルティアは剣を石畳に突き刺しながら必死に立ち上がり、強がるように微笑みかけると凍てつく女性を眺めてどこか儚い目でそっと呟く。


「それにしても醜いものですね………同じもの同士で争うのは。」


「そうよね………でも、戦わないといけない時は必ず訪れる。たとえ、それが友だったとしても………。」


数秒、昔のことを思い起こすオルティアに白いローブを纏った女性はすぐさま現実に戻させる。


「大丈夫………?」


「ええ、大丈夫。それよりも私はこれから陣頭の指揮に行く。彼女のことは………任せるわ。」


「えっ、陣頭って!!? オルティア、あなた死にたいの!? その傷ではもう戦えないどころか、立っているのも不思議よッ! それにすでにあなたは血を流しすぎてる………。例え、私が傷を癒したとしてもその体ではもう戦闘は行えない。行ったらあなたは………。」


 言葉を切りるように告げる女性に王妃オルティアは優しく微笑むと、被さっていたフードをとりローブを纏った女性と目線を合わせると言葉を返すように告げる。


「わかってる。でも………それでも私は戦わなければいけない。それが民の嘆きを癒す王妃としての役割だから。それにほら、聞こえるでしょ。悲しむ民の嘆きが。民は今、救世主を求めている。だから、私が行くのです。民の嘆き悲しんだ心を癒すのが私の役目であるが故に。」


 体の向きを変え、一歩一歩と力強く歩み出すその後ろ姿にローブを纏った女性は静かに腕をのばし止めようとするが不思議と腕は止まる。

 かつて、自分を救い出してくれた女性の生き写しであるオルティアは長らくその存在を公の前に表すことが許されなかった。故に彼女は常にメイド達に囲まれた王城の奥にひっそりと暮らしていた。


 そんな彼女が数年ぶりに人々の前に現れ、先導するのは多くの者にとって不安かもしれない。

 しかし、今の彼女はまさに王妃にふさわしい態度と覚悟を持ちあわせていた。

 この場で今止めようものなら彼女は王城の奥でひっそりと暮らしていた時のように永遠に籠の中の鳥になってしまう。


 そうした想いが王妃オルティアを止めようとする腕を止め、彼女の背中を見送った。 

 愛剣を携えて瓦礫の山となった王城の一部を登り始める王妃オルティアを見て、ローブを纏った女性はローブの隙間から覗きみえる口元を緩ませ笑みを浮かべる。



 どんな地獄にも、苦しみにも、終わりが訪れる––––––––。

 当然だろう。地獄の中で苦しみの中で希望を見出せた者だけがそれを終結させるのだから。



 想いを胸に刻み、体の向きを変えると背後にある氷の象を眺める。

 だがそこには、すでに氷が溶け切った水溜りだけがあった。


「オルティアッ!!」


咄嗟に声を発するも束の間、瓦礫の山上にはすでに背中から腹部にかけて、剣で貫通させられた王妃オルティアの姿があった。


「相変わらず、甘い連中ね………。反吐が出るわ。でも、今回くらい許してあげるわ。お陰で油断させることに成功したし、この“偽物”を殺せた。ありがとね! マーリン!!」


 氷に囚われていた女性はまるで何もなかったかのように王妃オルティアに刺した剣を引き抜くとドサッと電池が切れたようにその場に倒れ込む王妃を見て、不敵な笑み浮かべる。


 そして、狂気じみた表情で眼下で驚くローブの女性ことマーリンを目線で捉え、楽しそうな声で告げる。


「さぁ、パーティを始めましょう!!」


 その言葉に反応するようにマーリンは声を荒げ、杖を振るう。


「このッッ!!! 今に、殺してやるッッッッッッッ!!!!!!!!」


 刹那、狂乱な女性は瓦礫の山を蹴り、マーリンとの間にあった距離を一気に縮める。


 しかし、それも束の間。


 マーリンは脳内で早々と複雑な魔法式を紡ぎだすと杖を振り上げ、叫ぶ。


「––––––––––––Seas suas, cnap talmhainn!!!! 」


 言葉が途切れると同時に目と鼻の先まで近づいていた狂乱な女性はまるで野球のバットで打たれたかの様に一瞬にして上空数十メートルの高さへと舞い上がる。


 鉄球で打たれたかの様な衝撃で突き飛ばされた女性は、グハッと血反吐を吐く。

 その姿にマーリンは一切手加減をすることなく次々と追撃のための魔術式を紡ぎ出す。


 太陽にも似た火球を幾多にも浴びせる様に放つと女性は瞬く間に空中で爆炎に包まれ撃ち落とされた鳩のようにそのまま垂直に石畳で敷き詰められた地面へと叩きつけられる。


 一際大きな衝撃音と爆風に煽られ、王城は僅かに揺れ動き、残り少ない壁や天井が崩れ始める。


 すでに損傷の激しい王城は後どれくらいの衝撃で完全に崩落するか分からない。だが、その様なことなど些細なことであるかの様にマーリンと女性の戦いは苛烈さを増していく。



「この………クソが………。」



 先ほどまで立っていた床が崩落し、さらに数メートルほど落ちた先の地面から立ち上がるように女性は呟くと打ち上げられる時に落とした剣を握り締め、辺りを見回る。

 落下の衝撃ですでに防具のほとんどは意味をなさなくなっており、ポロポロと溢れるように女性の足元へ落ちた。


 自身の落下によって舞い上がった砂塵と落下物、そして長らく続く火災の煙によって視界のほとんどが遮られていた。


 そんな中、霧の向こう側から突如として火炎放射器のジェット噴流のような炎が女性めがけて放たれ、間一髪で避ける。


 だが、その動きはすでにマーリンに予想されており、女性の背後には瓦礫と霧によってうまいこと隠されていた土塊が漠然と出番を待つように立ち尽くしており、ジェット噴流のような炎を間一髪で避けた女性の左腕をまるで砕く力でドカンと重い一撃で殴りつける。


 女性はすぐさま、剣で防御態勢をとったものの王城の石壁を次々と壊しながら突き飛ばされ、徐々に勢いを失った運動エネルギーによって地面へゆっくり落ちていく。

 着ていた服がビリビリと破れ、腕や脚の至る所を擦る。


 思いの外、強いマーリンに女性は顔を上げると血を吐きながら告げる。


「相……変わらず、ちょこまかと………小細工ばかり…………。」


 すでに左腕の骨と肋骨は折れ全身を激しく打ち付けた女性は未だ、復讐心を燃やしボロボロとなった身体を強引に起こす。


 女性はすでに頭からは血を流し、視界はぼやけていた。

 内臓の一部もすでに内出血しており、女性の身体は悲鳴を上げるように僅かに震えていた。

 されど、足下に落とした剣を再度拾うと覚束ない足取りでマーリンに歯向かう。


 その様子にマーリンは容赦無く魔術式を紡ぎ出す。


 数秒後、太陽光の様に煌く槍が周囲の至る所から女性めがけて飛んでくる。


 その光景に女性は剣を前に突き出すと不適な笑みを零すと口を開き、告げる。


「––––––––Ith.」


 瞬間、女性にめがけて飛んでいた光に煌く槍は音もなく忽然と消え去る。


 そして、どこからともなく現れた“影”によって女性が禍々しく包まれるとほんの数秒まであった傷がまるで無かったかのように塞がっていた。

 体調を戻した女性は意気揚々と叫ぶ。


「ここからが私の出番よ。マーリン!!!」


 謎の影によって回復した女性にマーリンは危機感を覚え、すぐさま手を打ち始める。

 魔術式を脳内で紡ぎながら死角となりそうな場所に魔法陣を刻みこむ。


「––––––––いた。」


 まるで飢えたサメのように火災や瓦礫、崩落によって押し潰された屍の中でほんの僅かに香るマーリン特有の匂いに女性は感付き、その匂いを追い始める。


 影によって強化された女性にマーリンは次々と攻撃を仕掛けるも軽々と躱され続け、遂には相手の間合いに入り込む。


 女性の「取った」という一言に今度はマーリンが吹き飛ばされる。

 黒い斬撃がマーリンを捉え、勢いよく吹き飛ばす姿を見て、女性は何とも言えない快楽が全身を駆け巡る。


「ああぁぁぁぁ〜〜〜〜最ッッッ高!!」


 人を嬲り痛みつけるその姿は女性にとって例えようのない快楽をもたらす。

 だが、その様子に水を差すように女性を殴りつけた土塊が側から現れ、マーリンを守るように女性へと殴りかかる。


 強くそして重い土塊の拳に女性は先程とは違って素早く動きながら数発、躱しきると一切の速度を落とすことなく反撃に出る。


 全身の筋肉を動かし、体重を乗せた鋭い袈裟切りを放ち、一瞬にして土塊を二等分する。


 その様子を傍目で見ていたマーリンは、すぐに起き上がると全身に魔力を通す。

 全身を魔力で包み込むと目にも止まらぬ速さで一気に上空へと浮き上がる。


 だが、その光景を黙って観てる訳ではない女性は影をうまいこと操り、翼を形成すると飛行するマーリンを追い越す速度で追尾する。


 追尾してくる女性にマーリンは空中で体の向き変えると杖を振り、次々と魔法を展開する。


 光に煌く槍や火球が空中で次々と女性めがけて放たれる。一方、女性も黒い斬撃を飛ばしマーリンを斬りつけようとする。


 女性とマーリンの一進一退の攻防についに僅かに残っていた王城が耐え切れなくなり、崩落しかけていた塔が轟音を立てながらゆっくりと崩落する。


 しかし、すでに両者とも地面ではなく空中で戦っていることもあり、塔の崩落を無視するように威力の高そうな攻撃を放ち合う。


 魔法を放っては黒い斬撃によって打ち消される。対して、黒い斬撃も単調な攻撃な為に容易に躱せる。


 そんな中、女性はすでに限界を迎えていた身体をさらに酷使し、一気にマーリンとの距離を縮め、後ほんの数ミリでマーリンを捕まえ刺すことができるというところで––––––––それは唐突に訪れる。


 突如として飛んで来た岩石に両者とも当てられ、崩落する王城の塔へと強制的に押し込まれる。


 

 崩落し傾く塔の中に押し込まれた女性は剣を落とすと空中で揉み合いになる。


 マーリンが女性を風で吹き飛ばし、落ちて行く塔の外壁に叩き付ける。

 その衝撃に女性は一瞬顔を歪めるがすぐさま反撃に転じて、強烈な蹴りをマーリンの腹部めがけて放つ。


 醜くも揉みしだくように殴り、蹴りつけ合う。

 そんな、二人はとうとう決着が付かないまま、両者とも勢い良く地面へと落ち、ドカーーーンという轟音と大きな衝撃を齎した。




 数分後、地面に叩きつけられたことで意識を失っていたマーリンが目を覚ますと周囲を確認する。

 するとほんの五メートルくらいの距離で崩れた塔の一部だったであろう石壁に背を預けて座り込む意識のない女性を見つける。


 その光景にマーリンは咄嗟に身体を動かせ、周囲に落ちていた杖を握ると臨戦態勢で構える。

 しかし、すでに肉体の限界を超え、身体の内外問わず至る所に刻み込まれた傷や打撃痕などからもはや指一本動かせる状態ではない女性を見て、躊躇する。



 そこへ、霧の中から一人の人影がポツンと現れ、マーリンに向かって告げる。


““そこまでにしてもらいましょうか。””


 女性のような可憐な声にマーリンは驚き、質問を投げかける。


「貴方は、誰? 邪魔するなら貴方も彼女と同じような運命を辿る事になるわよ。」


““ほほう、左様ですか。では、見せてください。この私を倒せるのかを………ね。《創世の王》よ””


 謎に現れた女性はそう言葉を返すと途端にマーリンの周囲に無数の人影が現れる。


 ““““––––––––我ら、この世全てに“《《死》》”を与える者。””””


 無数の人影と男女の声にマーリンは「クソッ」と呟くと奥歯を噛み締める。


““––––––––では、何も為さらない様なら、我々は失礼させていただきます。””


 その言葉を最後に、マーリンの周囲を囲っていた人影はスッといなくなり、目の前にいた女性と謎の女性もいなくなっていた。



 火災と崩落に見舞われた王城で一人、マーリンは崩れた瓦礫の山を背に空を見上げるとポツンと涙を流しながら、震えた声で嘆く。


「オルティア………。ごめんね。守れなかった………。」



◇・◇・◇


 マーリンと女性が激しい攻防を王城上空で続けていた中、ディット達王都防衛軍は作戦を開始していた。


「急げ!! 時間が命だッ!!! ほら、早くしろ!!」


 総勢千三百人による王都脱出。

 すでに包囲されていた王都では不可能とされているこれはまさに王都の地下深くに存在するその下水システムによって可能となっていた。


「急げ!! いつ見つかってもおかしくないんだ。」


「はいッ、ほら行くよ。」


 子の手を握り引っ張りながら案内に従って下水道の脇道を進む王都の住民に王都防衛軍は拳を強く握る。


「悔しいです。まさか、自分たちがこうも非力とは………。」


「多勢に無勢。仕方がない面もあるだろうがそうだな。我々は非力だ。だが、これで終わったわけではない。我々は次に備えるのだ。次、我らが帰ってきた時に上で暴れている奴らの顔に吠え面かかせてやるのだ。」


「…………そうですね。この紋章に刻まれた不死鳥の如く、我々は再び戻ってくる。––––––––例え何があっても。」


 そう告げる、青年は王都の下水道脇の小道で復讐を誓い、王都を後にするべく歩み出した。



◇・◇・◇


「殺せ、殺せ、殺せ!! 俺の邪魔をするものは全員殺せッ!!」


 ボーフォード家の紋章を血で染めながら進む男は王都防衛軍のみならず、逃げ遅れた王都の民に対しても剣を向けては惨たらしく殺害していた。

 その狂った様子に味方であるはずの兵すら恐怖していた。

 だが、誰も男には逆らえず、与えられた殺戮という名の命令を淡々と繰り返し行なった。

 全ては自分の保身を願い、敵として粛清されないために。




 そして、王城の完全なる崩落を経て、王都は陥落した。

 その後にも王都での殺戮は行われ王都は陥落してから三日三晩の間、炎と殺戮で埋め尽くされた。

読んでくださってありがとうございます!! ( ^ω^ )


広告の下にある星をタッチすると私を応援できるのでよろしくお願いします!!

また、少しでもこの物語を『面白い』、『続きが気になる』と思っていただけたら、

レビューや感想等の方もお願いします!!

( ✌︎'ω')✌︎<オネシャス!

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