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灯里の成長

 荘太のおばあちゃんの不在期間が今回は長く、既に一週間以上雅之の家に通い詰めている状態になっていた。

 有希ちゃんは、既にペースをつかんでいて、荘太に自主学習させている間に家事をこなしたりと、テキパキと指導を行っている。

 洗濯物に至っては、俺が初日にやらかして以来、俺たちが来る頃にはすっかり片付いてしまっている。

 料理だけは、雅之が好きな味を知りたいと言ってくれて、一緒に台所に立たせてくれるが、それ以外は完全に手持無沙汰だ。


 一方灯里はと言うと、

『ねえねえ、荘ちゃん、見てみて!』

 荘太に見てもらうために頑張っている寝がえりを一生懸命披露して……、

「灯里ちゃん、すごーい!寝返りできたね!」

 んん?

 灯里は昨日の時点でも、まだ、寝がえりは……

 って、できてる!

「灯里、昨日はできてなかったのになんで?」

『初めては、荘ちゃんに見てほしかったんだもん!』

 そんな巧妙にコントロールしなくても……。

「パパも間近で灯里の寝返りを……あっ!」

 下ごしらえが一段落し、灯里の元に駆けつけると、寝返りを頑張りすぎて疲れたのか、灯里は眠ってしまっていた。

 俺も寝返り見たかったのに!


 それからしばらく、荘太は有希ちゃんと勉強をし、灯里は荘太の傍らで眠り続けていた。

 荘太の勉強の邪魔になってはいけないと、灯里を抱っこしようとしたところ、灯里は、しっかりと荘太のズボンを握りしめていた。

 俺は、何のためにここにいるんだろうか……。

「あ、明お義兄さん、お料理、続き教えてください」

 ぼんやりしている俺に、有希ちゃんが優しく話しかけてくれた。


『ねえねえ荘ちゃん!』

 夕食の準備をしている間に目覚めたらしい灯里が、荘太に話しかけている。

『私ね、お座りも、練習してるんだよ』

 灯里は、お座りはチャレンジしてはいたが、出来ていなかったはず……。

 だがしかし、さっきの寝返りの一件もあるし、今度こそ、灯里の初めての瞬間を見逃してはならない!

 灯里のすべての瞬間を見逃すまいと、俺は目を見開いた。

『ほら……あれ?』

 そう『言う』と、灯里は、後ろにころんと倒れてしまった。

『もう一度!ほら!……あれれ?』

 もう一度起き上がって座ろうとした灯里は再び後ろにころんと倒れてしまった。

『灯里、危ないぞ』

 荘太はそう『言う』と、「こうしたら大丈夫かな?」と、座っている自分の膝の上に灯里を乗せた。

 俺は、灯里が上手にお座りをする瞬間を見たくて目を見開いていたのであって、荘太と灯里がイチャイチャするのを見たかったわけではない!

「おい、そ……!」

「明お義兄さん、鍋が!」

「あ!」

 荘太と灯里のイチャイチャを食い止める前に、鍋がふきあがってしまい、俺は、料理に戻らざるを得なくなってしまった。


 その後も、荘太と灯里のイチャイチャをしばらく見せつけられた後、荘太の勉強も一区切りついて、我が家に帰ろうとしていたころだった。

 不意に雅之の家のインターホンが鳴った。

「どちら様ですか?」

 扉を開けた有希ちゃんは、そう言うと、固まった。

 誰か怪しい人なのだろうか?

 そう思ってのぞき込むと、扉の向こうには身なりの良い老紳士が姿勢を正して立っていた。

 何だかどことなく見たことがあるような気がする。

「あ、笹岡様、お久しぶりでございます」

 やっぱり知り合いだったのか?

 でも、俺、こんな金持ちそうな知り合いいな……。

「その声は、高柳?」

 いたーーー!

『中山家の執事だ』

 そう言えば荘太はおぼっちゃまだった!


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