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プリンセス灯里の一日

 今回は灯里ちゃん視点です。

 灯里ちゃんのプリンセス姿は、皆々様の想像力にお任せしております。

 こんにちは、灯里です。

 今日は、この前二歳のお誕生日の時に買った、お姫様みたいなお洋服を着てお出かけです。

 雅之君と、有希ちゃんの結婚式みたいです。

「灯里!今日もかわいいなぁ!」

 パパがそうほめるのはいつものこと過ぎて、あまりプレミア感がありません。

「灯里!最っっっ高に可愛い!今日は、プリンセス灯里ね!」

 ママは、私がめかしこんだ時のテンションが変わるので、今日の服装は可愛いんだと思います。

「プリンセス灯里です!」

 さっきママに、プリンセスのご挨拶と教わった通りに、スカートの裾をもってそういうと、ママは「キャー!プリンセス灯里可愛い!」とメロメロになりました。

 今日は、私は一日プリンセス灯里で行きましょう。


 インターホンの音がしました。

 私は走って玄関まで行きます。

 玄関には、王子様みたいな荘ちゃんがいました。

「荘ちゃん!プリンセス灯里です!」

「プリンセス灯里、こんにちは、じゃあ、今日は灯里だけの王子様かな?」

「うん!」と言って私は荘ちゃんに抱き着きました。

「お、荘太……って、何灯里とべたべたしてるんだ!」

「パパ!嫌い!」

 荘ちゃんをやたらと怒るパパには、秘儀、パパ嫌いビームです!

 悪いパパはパパ嫌いビームで、がっくりうなだれています。

「プリンセス灯里、今日は、おめでたい日だから、もう、許してあげよう?」

 荘ちゃんが、私の目を見てそう言いました。

 荘ちゃんがそういうなら、仕方がないです。

「パパ、よしよし」

 そう言って、パパの頭をなでてあげると、パパは、復活しました。

 パパが凹み散らかしたときは、98%の確率で、私のなでなでで復活します。

 残りの2%は、ママから喝を入れてもらわないといけないです。


 今日は、荘ちゃんのおばあちゃんはお仕事が入ってこられなくなってしまいましたが、荘ちゃんは一緒に行きます。

 荘ちゃんのおうちの高級車という乗り物に、みんなで乗ります。

 ママは、思いっきりくつろいでいますが、パパはカチコチに固まっています。

 私は、大好きな荘ちゃんと車窓の景色を楽しんでいます。

 高級車はとても広くて、すごいなと思いますが、私の家に着くまでは荘ちゃんは、この広い車の中で一人きりだったのかと思うと、何だか悲しくなりました。

 でも、今日は、プリンセス灯里なので、私は泣きません。

 その代わりに、荘ちゃんの頭をなでなでしました。

「灯里ちゃん、どうしたの?」

「なんでもないの!」と、言いながら、私は荘ちゃんの頭を撫でました。

 車が目的地に着くと、荘ちゃんは、私より先に降りて、私が、車から降りやすいように、手を繋いでくれました。

 その王子様みたいなしぐさに、近くにいた女の人たちが、ほほを染めて見ていましたが、今日は荘ちゃんは私だけの王子様なのです。

 車から降りた私は、荘ちゃんと手を繋いだまま、歩き出しました。

「あ、灯里、まって!」と、慌てて追いかけてくるパパに、「プリンセス灯里!」と、言い放つと、荘ちゃんと手を繋いだまま私は歩いていきました。

 そうです。今日の私はプリンセス灯里なのです。灯里などと野暮ったく呼んではいけないのです。


 たどり着いた場所には、ジュースとお菓子が置いてありました。

 こういう時は、ママと、荘ちゃんの顔を見ると、食べていいかどうか教えてくれます。

「このあと、もっとおいしいごちそうが出てくると思うけど、のどが渇いてるならジュース、もらう?」

 荘ちゃんに言われて、私はうなずきました。

 荘ちゃんと並んで座って、ジュースを飲んでいると、スーツを着た女の人の案内で、みんな動き出しました。

 この飲みかけのジュースはどうしたらいいのでしょうか?

 そう思っていると、隣の荘ちゃんが、スーツの人にジュースを預けていました。

 スーツの人は私のジュースもあずかっていきました。

 今日はプリンセス灯里なので、付き人がいるみたいです。

 私も、荘ちゃんと手を繋いで、みんなのところへと向かいます。


 次にたどり着いたのは、お菓子もジュースも置いていないお部屋です。

 そこには椅子しかなくて、何かピアノみたいなのを弾いている変な格好の人がいます。

「あれは、オルガンだよ」と、私の視線の先に気づいたのか、荘ちゃんが教えてくれました。

 椅子はたくさんあるのに、一番前にじいじとばあば、その後ろに、ママとパパ、そして、その後ろに、私と荘ちゃんの三つしか椅子を使っていません。

 通路を挟んだ反対側にも椅子が置いてありますが、そちらは二つしか使っていません。

 後ろががらんと空いたままでしたが、司会の人がお話を始めました。

 そして、雅之君が入ってきました。

 今日の雅之君は、いつもより、格好をつけたような服装をしています。

 雅之君が、一番前までやってくると、今度は、有希ちゃんが入ってきました。

 真っ白なドレスで、私よりももっとお姫様みたいにめかしこんだ有希ちゃんはとても綺麗で、夢中で手を振っていると、有希ちゃんが、こっそり手を振り返してくれました。

 今日はプリンセス灯里が一番かわいいと思っていたのですが、今日の一番かわいいは有希ちゃんに譲ってあげます。


 一人で歩いて行った有希ちゃんは、雅之君のところまでやってきました。

 いつの間にか雅之君と有希ちゃんの前に、外国人のお爺さんがいて、何かカタコトの日本語で何か言っています。

 あんな風にしか話せないのなら、有希ちゃんは英語が得意なのだから、英語で話してしまえばいいのに、と思いながら荘ちゃんを見ると、荘ちゃんが小さな声で、「今、雅之お兄さんと有希さんがお互いに、ずっとずっと大好きだよって神様に誓っているんだよ」と言いました。

 私も、小さな声で「私、荘ちゃんのこと、ずっとずっと大好きだよ」と荘ちゃんに囁いてにっこりすると、荘ちゃんが、「僕も、灯里のこと、ずっとずっと大好きだよ」と囁きました。

 そして、雅之君と有希ちゃんが、誓いのキスをしたときに、荘ちゃんがみんなに内緒で私のほっぺたにキスをしました。


 それからは、お庭に出て花びらを雅之君と有希ちゃんにかけたり、みんなで写真を撮ったりして、広いお部屋に移動しました。

 待ちに待ったごちそうです!

 私のごちそうは、ママやパパと違うものが載っています。

 どれも私が大好きなものばかりです。

「プリンセス灯里には特別メニューね!」とママが言いました。

 今日の私はプリンセスだから、特別メニューなのね!と嬉しくなりました。

 ごちそうはすぐおなかがいっぱいになってしまいます。

 それに、デザートのためか、すっごく大きなケーキがあります。

 これは、少し歩いておなかをすかせなければいけません。

 それに、有希ちゃんにプリンセスのご挨拶がまだできていません。

 有希ちゃんのもとへ駆け寄ろうとしたとき、私は躓いて転びそうになりました。

「大丈夫?」と、可愛いお姉さんが、私を抱きとめてくれました。

「ありがとう!」と、私はお姉さんに言うと、「プリンセス灯里です」と、プリンセスのご挨拶をしました。

「可愛い!」と私を褒めちぎったお姉さんは、「プリンセス灯里、私は、有希ちゃんのお姉ちゃんの清花です」とプリンセスのご挨拶を返してくれました。

 清花お姉さんは、プリンセスのご挨拶のわかる大人です。

「プリンセス灯里、一緒に、有希ちゃんのところに行こう!」と、清花お姉さんは、私の手を取って、有希ちゃんのところへ向かいました。

「有希ちゃん!プリンセス連れてきたよ!」と、清花お姉さんが言うと、有希ちゃんは、私を見て笑顔になりました。

「有希ちゃん、プリンセス灯里です!」と、有希ちゃんにもプリンセスのご挨拶をしました。

 有希ちゃんは、メロメロになって、「一緒に写真を撮ろう!」と言いました。

 そこで、はっと気づいて、「あら、プリンセス、プリンスを呼ばなきゃダメじゃない!」と言って、荘ちゃんを呼びました。

 荘ちゃんが、王子様らしく、私に膝をついて挨拶すると、清花お姉さんと有希ちゃんが黄色い悲鳴を上げながら写真を撮り始めました。

 清花お姉さんはカメラを持っていたのは知っていたけれど、有希ちゃんはどこにカメラを隠し持っていたのか、今度問い詰めてみる必要があるかもしれないです。


 楽しい時間はあっという間で、私たちは帰りの車に乗っていました。

 ママは相変わらずくつろいでいて、パパは変わらずカチコチになっています。

 荘ちゃんとみる外の景色はだんだん暗くなっています。

「今日、すごく楽しかったね!」と、私は荘ちゃんに話しかけました。

「そうだね、いつか、灯里とあんなパーティー開きたいね」と、荘ちゃんが言いました。

「うん!」

 そして、夕暮れを走る高級車の中で、私と荘ちゃんは微笑みあいました。

 笹岡!後ろ!と言いたくなる瞬間があったりなかったりしたのではないかと思います。

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