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春が来た

 しばらくはこっちを執筆していく気合でいます!

 ノープランなので、途中で止まることがしばしばあると思います。

 春になり、俺は育休二年目に突入した。

 最初から二年で申請していたので、誰からも何も言われていない。

 むしろ、幸か不幸かNICUの職員の誰一人として俺に連絡をしてこない。

 まあ、そのおかげで、灯里との楽しい生活が約束されているわけなのだが。

「パパ!どうじょ!」と、灯里は自分の食べた食器を俺に渡した。

 一歳にして自分の食べた食器を渡すことができるなんて、天才なんじゃないだろうかと思いながら、俺は、ありがとう、と、灯里から食器を受け取って、洗い物をした。

 俺が家事をする時間は、灯里は、翠先生が爆買いした絵本を読んだり、おもちゃで一人遊びしたりして、お利口に待っていてくれている。

 一歳にして、こんなにお利口でいてくれているなんて、うちの灯里はやっぱり天才……。

 と、思っていると、インターホンが鳴った。


 俺が育休二年目ということは、四月に入ったばかりということで、当然あいつがやってくるのだ。

 俺は、インターホンに返事をすると、扉を開けた。

「荘太君、いらっしゃい」

 育休開始から一年過ごした俺は、宿敵を笑顔で迎え入れることだってできるようになった。

 そう、俺の宿敵荘太は、春休みに突入していた。

「お邪魔します」と、荘太が入ってくると、「荘ちゃん!」と、灯里が駆け寄った。

 荘太のほうが、たまにしか会えないから、灯里が駆け寄るのも、致し方ない、と、俺は自分に言い聞かせて、笑顔を作った。

 そうだ、育休二年目に突入した俺は、寛容なんだ。


「荘ちゃん!おままごと!」

「灯里はママやるの?」

「うん!」

 灯里は、おままごとが好きなのだが、灯里のおままごとは一味違う。

 まず、パパ役の荘太が、家事をしている。

「ただいまー!疲れちゃった!」

 帰ってくるのはママ役の灯里だ。

「灯里ママ、おかえり、ごはん、おいしいの作ったよ!」

「あ、病院から呼び出されちゃった!行ってきます!」

 うん、確かに、我が家でありがちな風景なのだが……。

 そんなにリアルに再現しなくても……。

「荘太パパ、ちゃんとしょんぼりして!」

「あ、うん」

 そんなところまでリアルにしなくても!


 灯里一人で遊んでいるときは、本を読んだりして、あまり体を動かさないことが多いから、荘太が来てくれると、一緒に体を動かしたりするので、荘太がくることも悪くはないな、と、最近では思うようになっていた。

 おままごとに飽きたらしい灯里は荘太と追いかけっこをしていた。

「まてまて!」と言いながら、荘太は、灯里がほどほどに走れるくらいの速さに調節しながら走っている。

 キャッキャとはしゃぎながら走っていた灯里は、不意に躓いて転んだ。

「灯里、大丈夫か?」 と、駆け寄った俺に、荘太が『すまない、俺の不注意だ』と、『声』で、珍しく反省した。

「ああ!灯里ちゃん、おでこが赤くなってる!」

 泣き出しそうな灯里を、荘太が抱きしめた。

「僕がちゃんと責任を取るから!」

 そういうと、荘太は俺を振り返った。

「お義父さん、灯里さんと結婚させてください!」

「何でそうなる?」と、荘太にツッコミを入れた時、インターホンが鳴った。


「お邪魔します」と、入ってきたのは、有希ちゃんだった。

 一緒に、雅之もいる。

 四月からも家庭教師を続行するため、打ち合わせに来たようだ。

 打ち合わせと言われても、俺は、ただ荘太と灯里を雅之の家に連れていくだけなので、日程云々を荘太と話し合うだけのようだが。

 有希ちゃんと、荘太が日程について話しているのを、何故か灯里が熱心に聞いていた。

 雅之は、俺のところにやってきた。

「翠先生は、忙しそう?」

「まあな」

 灯里のおままごとの通り、翠先生がほとんど我が家に落ち着けないくらいに、忙しい日も多かった。

「今度の日曜日は家にいるって言ってたな」

「そっか」と、雅之は言うと、「じゃあ、日曜日、空けといて」と言った。


 そして、日曜日、何故か少しおしゃれなお店でご飯を食べに行くことになった。

 雅之と有希ちゃんのほかに、可愛くめかしこんだ灯里と、翠先生と俺、それに、荘太のおばあちゃんと、荘太もいた。

「実は、有希と結婚しようと思います」

 雅之が、その場の全員に宣言した。

 全員が、やはりそういうことかと納得している中、俺だけが、「ええっ!」と驚いて立ち上がってしまい、全員から白い目で見られた。

 仕方なく、座って食事を再開した俺だったが、思わず有希ちゃんに話しかけた。

「有希ちゃん、雅之、こう見えてめっちゃ腹黒いけど大丈夫なのか?後悔しない?俺としては有希ちゃんみたいないい子が妹になってくれるのは本当に嬉しいんだけど、本当に、雅之、腹黒……うっ!」

 そんな俺に、翠先生から強烈なパンチが脇腹に直撃した。

「大丈夫です。ちゃんと、後悔しないって、覚悟を決めたので」と、ぼんやりする視界の中、有希ちゃんが微笑んだのが見えた。

「確かに、雅之君は腹黒いと思うけど、身内は大切にするから、有希ちゃんのことは幸せにしてくれると思うわよ」と、翠先生も有希ちゃんにフォローしていた。

 俺の脇腹にパンチしたくせに、翠先生も、雅之は腹黒だと思っていたらしい。

 腹黒い雅之にも、とうとう春が来たということのようだ。


 雅之たちは、結婚の報告と、二人の仲が深まるきっかけとなった荘太と荘太のおばあちゃんにも可能であれば結婚式に出席してほしいということを話したかったらしい。

 だが、会が終了するころには、翠先生と有希ちゃんと、荘太のおばあちゃんの目の色が変わっていた。

「灯里ちゃんに似合う服を探すわよ!」

 彼女たちの目的は、当然、可愛い灯里をめかしこませることだった。

 有希ちゃんの家庭教師継続だけで終わらせるつもりが、結婚報告まで行ってしまいました。

 まあ、そんなもんです。

 ちなみにこの後、式が半年後だったことに気づいて、張り切った大人たちが崩れ落ちます。

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