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翠先生の作戦?

 うーん、これは、やばいかもしれない。

 そう思ったのは、クリスマスの3日後のことだった。

 なぜなら、3日間ずっと、ワン吉は廃人のようになっていた。

 原因はわかっている。

 灯里が自分のことを一番最初に「とーたん」と呼んでいたと思い込んでいたのに、荘ちゃんのことを呼んでいただけだったし、初めて「パパ」って呼ばれたと思いきや、「パパ、イヤ!」て言われてしまったし。

 確かに、私が同じ立場だったら、凹むと思うけど、さすがに3日間も凹み続けるとは思ってなかった。

「ママ!どーじょ!」

 灯里はワン吉が凹んでいても通常営業だ。

「パパ、どーじょ!」

 灯里が言ってくれているのに、ワン吉は黄昏ている。

 うーん、何だか、我が家の空気が淀んでいる感じがする。

 ここはひとつ、ワン吉を何とかしなければ……。


「明くん、灯里がどーぞって言ってるよ!いつまでも凹んでちゃダメだって!」

「ママは荘太の次に呼ばれたからいいんですよ……」

 うわー、鬱陶しい感じに凹んでる!

 そう思うんなら灯里のマイブームのどうぞに乗っかって仲良くしたらいいのに!

 うん、まあ、作戦その1、直接励ますは見事に失敗したな……。

「灯里!どうぞ!」

「あいがと!どーじょ!」

 ワン吉も、このめっちゃかわゆいやり取りでもしたら少しでも癒されただろうに……。

 灯里のために、子育ても家事もいっぱいいっぱい頑張ってたから、自分のことを呼んでもらったのが一番最後だったのが辛かったんだよね……。


 よし!次の作戦だ!

「灯里!おもちゃ、ないないしようか?」

 灯里は私に言われて頷くと、「ないない!」と言いながらおもちゃをおもちゃ箱に入れた。

 さすがワン吉の娘!片付けできる女子だわ!

 作戦その2は、頑張る灯里を見て立ち直ってもらう!

 どうだ、頑張る灯里の姿を見て多少なりとも心を動かされ……てない!

 それどころか、片付いてスペースのできた部屋の隅っこに収まった!

 そーゆーの、求めてないから!

 まだ、灯里のす〇っこぐらしブームは訪れてないから!


 部屋の隅っこにうずくまったワン吉を視界の端にとらえながら、私は、軽くため息をつきながら考えた。

 まあ、「パパ」が最後になってしまったのは、数々の不運が重なったせいだろうなぁ。

 ワン吉はワン吉で、「とーたん」って呼ばれたと勘違いして、急に自分のことを「父さん」って呼び出すし。

 私も私で、「明くん」って呼んだりパパって呼んだりしちゃったし。

 雅之君は「兄貴」って呼んでるし。

 有希ちゃんは「お義兄さん」だし。

 荘ちゃんは「明おじさん」だし。

 みんながみんな、ばらばらの呼び方してたから、灯里がワン吉のことどう呼んだらいいのかわからなくなっちゃったんだろうな。

 普通にみんなで「パパ」に統一していたら、3番目くらいには呼ばれていただろうに……。

 まあ、考えても結果は結果なんだから、致し方ない!

 今は、ワン吉の心を浮上させる方法を考えなければ!


「明くん、今日は私が夕ご飯準備するよ!」

 作戦その3!頑張る奥さんを見て、やる気を出してもらう!

 よし、腕によりをかけて夕ご飯準備してもらうもんね!

 うーん、全然、心に響いている気配は感じないけど!

 料理とか、灯里の離乳食くらいしかまともに作ってないけど!

 やろうと思えば何でもできる!

「翠先生……まずいです」

 やる気出なかったうえにまずいって言われた!

 灯里の離乳食は、ワン吉の作り置きの冷凍してあるやつで作ったから、美味しいみたいで、ちゃんと食べてるからいいけど。

 いや、私が作ったからってそんなにまずく……まずい!


 あーあ、ワン吉は凹んでるし、ご飯も美味しくないし、どうしたものか……。

 ワン吉は、私の手料理をほとんど食べることなく、またしても部屋の隅っこに引っ込んじゃったし……。

 すると、離乳食を完食した灯里が、椅子から降りると、うずくまるワン吉のもとへと駆け寄った。

「パパ!よしよし!」

 そう言うと、灯里は、ワン吉の頭を撫でた。

 うずくまっていたワン吉は、顔を上げた。

 さっきまでとは打って変わって、その表情にはやる気が満ちていた。

「灯里によしよししてもらったら、パパ、やる気出てきた!」

 やった!ワン吉復活!

「まずは、夕ご飯、作り直しますね!」

 せっかく腕によりをかけて作った夕食をダメ出しだけでなく、作り直しになって凹んだ私が、今度は灯里によしよしされることになったのは、それから数分後のことだった。

 こうして笹岡家は無事にお正月を迎えることができましたとさ。

 めでたしめでたし。

 ネタは尽きかけていますが、一応最終回ではありません。

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