灯里の決意
こんにちは、灯里です。
今は世間は夏休みというやつみたいで、いつもよりたくさん荘ちゃんが来てくれます。
お外が暑いのがしんどいと思う日もあるけど、荘ちゃんがいてくれるから平気です。
最近は、パパと荘ちゃんが喧嘩する、というか、パパが荘ちゃんに張り合うことが減った気がします。
きっと、荘ちゃんが夏休みに入った日に、パパが倒れて、荘ちゃんにお世話になったからだと思います。
その日、明らかにパパはお熱がありました。
私もママも言ったのに、パパは自分がお熱だと気づかずに、いつも通り家事をしていました。
なので、私は、パパに触られるのを極力拒否して、ママは、離乳食を介して私がうつらないように、離乳食づくりと食べさせる仕事をパパから取り上げました。
ママは、パパの体調を心配して休もうとしてたのに、パパは自分の体調不良に気づいていなくて、それを断固拒否してしまいました。
ママが、荘ちゃんがその日から夏休みということに気づいて、早々に連絡してくれていなかったら、パパはずっと倒れたまま放置されていたと思うし、私も、クーラーを切られてしまった暑い部屋で熱中症になっていたと思います。
本当に、ママと荘ちゃんの機転に感謝しかありません。
風邪をひいてから、パパは咳が出なくなるまで2週間ほど寝室謹慎になっていました。
ママと、荘ちゃんが相談して、なるべく長めに謹慎させようと言っていたからです。
パパも、ママから説明されてしぶしぶ納得していたようですが、寂しかったみたいで、謹慎が解けた時、大号泣しながら私を抱っこしていました。
それからパパは、しばらく私の様子を見られなかったブランクや、荘ちゃんへの感謝の気持ちがあってだと思いますが、荘ちゃんを尊重するようになりました。
やっぱり、皆仲良しが一番楽しくて、でも、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいました。
「これで、この時期の離乳食と、もう少し食べれるようになった頃の離乳食は行けると思う」
荘ちゃんにそう言われて、パパはうなずいた。
「灯里ともうまくやってるから、俺がいなくても大丈夫そうだな」
今日は、ママがお仕事で、私とパパだけなので、荘ちゃんはワイルド荘ちゃんです。
「あれ?荘太、どこか行くのか?」
この会話、どこかで聞いたような……。
「明日から、幼稚園だ」
あ、春休みが終わる時にも同じやり取りしてたんでした。
あの時は、荘ちゃんにご褒美にギュッとしてほしくて頑張って寂しい時間を我慢していました。
あの頃の私はまだ幼かったですね。
でも、今回の私は一味違います。
荘ちゃんが来なくなる分、パパは家事をする時間が増えて、一人ぼっちの時間が増えますが、全く問題ありません。
なぜなら私は、一人遊びを習得したのですから!
荘ちゃんがいると思わず甘えて一緒に遊んでしまいますが、私は一人でも遊ぶことができるのです!
最近は、荘ちゃんがハーフバースデーにくれたお歌の絵本がマイブームです!
楽しいお歌がいっぱいで、楽しい気持ちになります。
そして、私には、秘密の目標があるのです。
それは、言葉を話す練習をすること。
まだ、あーとかうーとか大したことが話せないですが、お歌の絵本を聞きながら発声法を練習して、1歳の誕生日までに、一番大切な人を呼べるようにするんです!
この目標は、荘ちゃんにも、パパにも内緒です。
春の時を思い出してか、荘ちゃんが不安そうにやってきました。
『灯里、また、寂しい思いをさせるな』
パパも来ました。
「大丈夫だ、荘太の分まで俺がしっかり面倒見るから!」
『そもそそれだが、家事もちゃんとしろよ』
「そ、そりゃあ、もちろん、やるさ!」
『私、一人遊びもできるから、心配しなくても大丈夫だよ!』
「さすが俺の娘!」
パパが感動していたところで、お鍋が噴きあがる音がして、パパは慌ててキッチンに戻っていきました。
『灯里、春休みが終わる頃にはあんなに寂しがってたのに、平気なのか?』
何だか荘ちゃんが訝しがっている気がします。
『荘ちゃんにもらったお歌の絵本があるから、寂しくないよ!』
『そうか』
そう言うと、荘ちゃんは、そっと私の頭を撫でました。
パパよりも、ママよりも小さいその手は、何故かすごく安心しました。
いつものように時が過ぎ、ママが帰ってきて、ご飯をだべて、荘ちゃんのおばあちゃんがお迎えに来て、荘ちゃんは帰っていきました。
いつもと違うのは、明日から、荘ちゃんは、お昼間にはほとんど来てくれなくなってしまうことです。
それでも、明日からは、特訓の日々です。
荘ちゃんも、ママも、パパも、びっくりさせてやります!
決意を胸に、私は眠りについた。
灯里ちゃんが、初めて話す言葉は何なのか、答えは次話で!
ついこないだハーフバースデーだったのに、いきなり半年経過しますとも!




