第21曲 お買い物
どうも。文化祭で燃え尽きていた作者です。
この度、漸く復活しました。
それでは、本編どうぞ。
フリギア王国。そこは旅人の国と言われる程に入国に対して寛大であり、最強の国と言われる程力を持つ国であった。
荒くれ者の集う『冒険者組合』。
王国守護を第一とする『王国守護騎士団』。
魔術師の育成期間『ルミナス学園』。
これらの機関により国の守りは万全で、その寛大さの理由もここにあった。軍事力において過剰とも言える程の力を持つ国だが、この国の特徴はそれだけではない。
この国の持つもう一つの力、それは貿易力だ。旅人の国と呼ばれる程に訪れる者の多いこの国は、物流に関してはまさに目を見張るものがあった。それは様々な国から訪れる商人達によってもたらされる装飾品や、各国の魔術師達によりもたらされる魔道具など、幅広いものであった。
それに伴い、フリギア王国にてこの名所が出来たのは必然であった。『トラベラー市場』。この国の大通りに数々の店が構えた結果、それはとてつもなく規模の大きい商店街となってしまった。曰く、「トラベラー市場に無い物など無い」とのこと。
そんな市場に、彼等は現れた。
「ふむ、なかなかの活気だ」
そう言ったメイビスの格好はいつものローブではなく、黒いコートを羽織り、手にステッキを持ち、黒いシルクハットを被っていた。だが、コートのサイズが合っておらず、丈が足元まであり、袖が腕より長く大きい為、振袖のように余ってしまっている。しかし、その何処かミステリアスな姿が異様に似合っていた。
この服は全て、冥府の館に元からあったもので、恐らくカーデットのものだったと思われる。故に、サイズが大きいのだ。
何故、メイビスがそんな服装をしているかと言うと、単純にあのローブは目立つからだ。故に、クローゼットの中で眠っていた奴の服を拝借した。
そして、訪れたのがここ『トラベラー市場』である。メイビスは眷属達が揃っていることを確認し、話を始める。
「よし、皆、揃っているな。これより物品購入を開始する。各自、渡したメモに書いてあるものを買ってくるように。店の場所はメモに書いてある。足りなくなればオルフェウスに報告すること。二時間後には私の元へ集まること。問題は起こさないこと。ああ、それから余った金は自由に使ってもいい。分かったな?」
『はっ!』
「では、解散」
その言葉と同時に、各自、目的の店へと嬉しそうに、あるいは憂鬱そうに散って行った。メイビスとジルバを残して。
「……何故俺がここにいる」
「私が呼んだからだ」
メイビスの隣には、キリリとした鋭い目、灰色の髪、他人を寄せ付けぬオーラ、それらを携えた青年がいた。言わずとも知れたジルバである。
「何故俺が人間の街なぞに……」
「そう言うな。人化のテストにもなるんだ、買い物くらい手伝え」
「はぁ……分かった」
渋々といった感じだが、やはり応じるジルバ。彼が頼まれたら断れないタイプの人狼なのは把握済みだ。
「しかし、意外だな。まさかお前が買い物の仕方を知らないとはとは」
「森にいたせいか、世間に疎くてな」
「何処の隠者だ、まったく」
「ハハハハハ」
嘘である。
この男、この世界での買い物の仕方などジャダからの情報で既に把握している。それどころか眷属に買い物の仕方を教えたのはメイビスだ。
では何故、そんな嘘をついているか。今回の買い物、メイビスと眷属全員でやって来たが、こやつら、何をしでかすか分からぬ。何人かのフォローは効くだろうが、全員は無理であることを悟っていた。ならば、目の届く場所に居させれば良いと思うが、効率を重視したいのでそれも出来ない。故に、メイビスは何の事情も知らないジルバをフォローに回したのだ。
要は、この子らの面倒見てね。である。
「しかし、彼等が話に聞くお前の眷属達か。ノアのことは知っていたが、他にもまだいたとはな」
「ああ、皆自慢の眷属だよ」
そしてこれより貴様が面倒を見る者達だ。
メイビスはニヤァと気味の悪い笑みを浮かべる。その様子は心底嬉しそうであり、何処か肩の荷が降りたように穏やかでもあった。
そして、メイビスとジルバは目的の店へと向かい歩き出す。二人が市場の真ん中を歩いている間も左右から客引きの声が飛び交う。その様子はまさに活気のある商店街のようで、メイビスは何処と無く親近感を覚えた。
「そういえば、気になっていたんだが、その杖は何だ?足は悪くないはずだろうに」
地元の商店街の様子を思い浮かべていると、唐突にジルバが問い掛けてきた。ジルバの言う杖とはメイビスが今まさに握っているステッキのことである。それは黒を基調に紫で所々を装飾されており、不気味な雰囲気を醸し出していた。
「ああ、こいつか。まあ、持ってみれば分かる」
指摘されたのがこの杖だと分かるとメイビスはジルバに杖を手渡した。何が分かるというのかという疑問を持ちながらも、ジルバはその杖を握る。
『ハァーイ♪初めまして、ジャダちゃんデス☆』
すると突然、頭の中に男とも女とも聞き取れる声が響いた。
「な、なんだ……頭に声が……」
脳内への突然の来訪者にジルバは困惑する。耳から聞こえてくるのではなく、脳に直接響くせいか、立ちくらみのような状態に陥る。
「そいつはジャダ。またの名を魔鎌・死神の鎌。カーデットの武器だった者だ」
「何?武器……だと……?」
「ああ、奴が常に侍らせていた鎌があったろう?あれだよ。どうやら【魔武器】と呼ばれるものだったらしく、意志を持っているらしい。それがそいつの正体だ。武器の状態だと触れた者に対して念話が出来るらしい」
余談だが、使い手であるメイビスは触れていなくともジャダとの念話が可能である。
そう説明してみてもジルバの顔には未だ困惑の表情が張り付いている。確かにこの説明だけで、ああ、そうか、と納得出来る者はいないだろう。他にもまだ色々と疑問点が残っているのだから。だが、ここから先を説明するつもりはメイビスには無い。否、正確にはする必要が無い。
『その通り!そして今はメイちゃん様の武器に鞍替えしちゃったから貴方達コボルト…いいえ、人狼に手を出すつもりはこれっぽっちもナイわ』
どうせお喋りなオカマが全て説明してくれるのだから。
「なるほど……納得はしてないが理解はした。だが、何故鎌が杖になっている?」
同胞を殺した奴の味方だった者に対して、そう易々と心を開くことは不可能だろう。しかし、だからといって今ここで仇を取るというのもお門違いだ。だからこその『納得はしないが、理解はする』なのだろう。やはりジルバは心の広い男だ。許しはしないが、罰しもしない。今はそこが限界だろう。
そんなジルバの心境をジャダも理解したようで、何処か申し訳なさそうにしながらも、自身に興味を持ってくれたことを喜んでいる。
『ンフフ♪アタシに興味持ってくれるなんて嬉しいわァ。それにとってもイイ男♪惚れちゃいそう♡』
「御託はいい。質問に答えろ」
『つれないわねェ。けどま、イイわよ。答えてあ・げ・る♡』
「………」
会話を始めて五分も経っていないが、既にジルバは疲れたような様子を醸し出している。
『アタシはね、今まで色んな使い手に出逢って来たわ。だけど、大鎌なんて使いにくい武器は敬遠されがちで、ろくに使われなかったわ。でも、そんなの悲しいじゃない。武器としてろくに使われないまま使い手が変わるなんて。だから、アタシは形状を変えた。様々な使い手のニーズに応えられるようにね』
「なっ!?そんなことが有り得るのか!?」
話を聞いていたジルバがあからさまに驚愕している。確かにこれは有り得ないことだ。ただの武器なら、だが。
「可能だ。長い年月を過ごした【魔武器】は魔力を蓄え、魔法すら使えるようになる。そして、そいつはその中でも逸脱した時を過ごす【魔武器】。となればそれくらいのことは可能だろう」
『これぞアタシが生み出したスキル《変質》の力なのデス!』
自慢げに語るジャダに対して「何でもありだな」と呟いたジルバには深く共感するが、ファンタジーの世界なので仕方ない。起こること全てを『ファンタジーだから』で済ませられるファンタジー先生は偉大だ。
そして、何だかんだと喋っている間に目的の店に着いたようだ。
さて、とっとと買い物を済ませて眷属達の様子を見に行くか───
◆
結論から言うと買い物は終わった。店に入るなりいきなり店員に向かって『ここからここまで全部寄越せ』と言い放ち、大量の金をカウンターに叩き付けた。向こうの店員が固まっている間に購入した家具などはそのまま《空間の歪》で冥府の館に直送した。
これでメイビスの担当していた物の購入は終えた。しかし、このお買い物はまだ終わらない。否、ここからが始まりなのだろう。
眷属達の抑止。それを果たさねばこのお買い物は終わらない。眷属達の居場所は《探知》で分かるので問題無い。
買い物も済ませた。神様にお祈りもした。眷属達の所業にガタガタ震えて泡を吹く心の準備もOKだ。後は向かうだけだ。
そして、メイビスは足を踏み出す。眷属達の様子を見に───
「ん?何だ、まだ何か買うのか?」
───生贄を連れて。
次回『眷属達のお買い物』
お楽しみに!
P.S
文化祭で友人がデスソースを食べ、悶えてました。ワロス。




