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転生死神と眷属による異世界奇想曲  作者: 田中 てんまる
プロローグ
2/33

第2曲 眷属

今回は眷属達の紹介みたいなものです。

※改稿により変わっているところが多々あります。

主に眷属の服装が変わっております。

許してくださいごめんなさい。

 

 AROは剣と魔法の世界を舞台にしたRPGだ。

 勇者と魔王の戦いを描いたストーリーとなっている。表向きは。

 このゲームでは勇者が魔王を倒して終わりではない。そこから新たな敵が現れる。


 それこそがラスボスである死神、メイビス・クライハートだ。


 ラスボスなだけあってこのキャラはAROで最強、特に魔法はAROにあるほぼ全てを習得している。さらに、眷属として九体のモンスターを従えているという徹底ぶりである。


 もはや世界が滅びる。

 つまり、最強最悪のモンスターという訳だ。


 だからこそ俺は頭を抱えている。

 そんなチートの集合体のような化物である死神、メイビス・クライハートになってしまい、目の前にその眷属達がいるのだから。


 こういう時どうすればいいの?110番?119番?異世界に転生した時のマニュアルなんてありませんでしたが?

 落ち着け、俺。焦るな、きっと見間違いだ。もう一度自分の姿をよく見てみよう。


 すぐ側にある池で、水に映る自分の姿を確認する。

 まず、撫でやかな乳白色の長髪を携えている。そして、闇を体現したような漆黒、血のように赤黒い宝石、それらを携えたローブを羽織っており、内側に身体を這うように取り付けられた黒金の装飾がしてあるインナー、ベルトを巻きつけ拘束しているような黒のボトムス。身体は雪のような色白の肌をしており、首を縫合痕のような傷が一周している。極めつけに、薄く開かれた目に漆黒の虚空のような瞳をしている。


 うん、見間違いじゃねえわ。

 どう見ても俺の設定した死神だわ。


 これはあれだろうか、神様が転生させたとかそういった感じのあれなのだろうか。だとしたら一言だけ言わせてもらおう。



「ファッキューゴッドォ!!」



 俺は常々不幸だとか不運だとか思っていたが、とうとう臨界突破(クリティカルオーバー)した。不幸とか不運どこらか死になってた。絶望的と言うか絶望そのものになってた。


 異世界に転生したことを理解した瞬間頭を過ぎったのは、元の世界への帰還だった。いきなり異世界と言われても対処が出来ない故、当然と言えば当然の発想だった。

 しかし、俺はこの発想を即座に忘却の彼方へ追いやった。考えてみれば自分は元の世界で天涯孤独の身であり、彼女や妻も居ない独り身の中年男だ。やり込んでいた趣味なども無いし、仕事も労働基準法に違反したブラック企業。更にここまでの人生もかなり悲惨なものばかり。となれば最早元の世界を見限るのも当然と言えた。



 故に、この瞬間俺はメイビス・クライハートとしての生を選んだ。



 そうなると、これからの生活、異世界での過ごし方、この世界の状況と当面様々な問題があるが、さしあたっては眷属達についてだ。

 もし彼等が本当に俺と一緒にこの世界にやってきたというなら俺同様、設定通りだと思うが本当にそうかどうかは分からない。外見はそうでも中身は別人が憑依したものや、正真正銘の化け物になっているかもしれないのだ。そんなことを信じたくはないが、もしそうならそれ相応の対処も考えなければならない。

 という訳で、しばらく観察してみることにした。



「どうかなされましたか、メイビス様。」



 そう言ったのは前髪を下ろしたオールバックの金髪で、シトリンのような瞳の上に眼鏡を掛け、片手に聖書を携え、神父服を着た目付きの鋭い二十代くらいの男性だった。


 ガーゴイルであり、鋼鉄の鏖魔──オルフェウス。

 メイビスの眷属の中でも最強の硬度を備えている。メイビスへの忠誠が人一倍強い堅物で、メイビスを神と崇め信仰している狂信者だ。



「いやなに、今は眷属達をじっくり観察したい気分なだけだ。気にしないでくれ」



 平静を装い返したが、内心小躍りした。何故なら、自分の作ったキャラクターが具現化され、会話まで出来たのだから。 小さい頃からの夢が叶った。まさにそんな感じだった。しかし、浮かれている場合ではない。このやり取りでオルフェウスは設定に忠実であることは判明した。このように他の眷属ともコミュニケーションを取り、状態を確認していくべきだろう。



「へー、メイビス様って僕の事そんな目で見ちゃってたんだー。いやーモテる男はつらいなー」



 おどけた口調でふざけたような発言をしたのは、黒髪の青年だった。


 その風貌はマジシャンのようで、黒のシルクハットを被っている。白黒のハースキン・チェック柄のベストの上にタキシードを着て、蝶ネクタイをしておいる。最も特徴的なのは、頬の左にハート、右に涙のマークが入っていることだ。


 ドッペルゲンガーであり、狂想の道化師──パンドラ。

 見てわかる通りのお調子者で、サーカスのピエロのような男でありながら、驚きを提供するマジシャンのような男でもある。


 すると、さっきまでこちらを見ていたはずのオルフェウスの視線がパンドラに注がれていた。そこには、有無を言わさぬ憤怒が宿っている。



「おい貴様、今すぐその減らず口を閉じろ。メイビス様への無礼が分からんのか。」



 その言葉をきっかけに、さっきまで人の良さそうな笑みを浮かべていたパンドラの額がピクリと動き、顔が挑発的なものへと変貌する。



「お前こそ、その堅苦しい敬語やめなよ。メイビス様が嫌そうにしてるの分かんない?」



 まさに売り言葉に買い言葉。二人の視線がぶつかり合う。

 この二人は実に仲が悪く、本当にちょっとしたことですぐに喧嘩に発展してしまう。しかし、それも致し方ない。オルフェウスは堅物、かたやパンドラはお調子者。この二人が争うことは最早運命だと言えるだろう。



「クズが」


「バカが」



 罵り合う二人。やめて、私のために争わないで。

 次第に掴み合いの喧嘩に発展していく。両者の視線が近距離でぶつかり合い、火花を散らす。これはどうにかした方が良いのだろうかとメイビスが動こうとした時、けだるげな声が聞こえた。



「ほっといていいと思うっスよ」



 そこにはローズレッドの長髪に荊を巻き付けた少女がいた。黒い瞳をしている彼女の服装は大胆なものだった。少女というには露出が多く、葉っぱを集めて作った下着を着ており、まるで山の奥深くの秘境に住む民族、もしくは無人島に漂流して一ヶ月目の人がしているような格好をしている。


 アルラウネであり、荊の女王──リーベ。

 後輩口調で半分閉じたような垂れ目をしている。マンドラゴラの亜種で、幼い見た目をしているが千年以上の時を生きている。

 先程の発言、恐らく年長者として何か深い考えでもあるのだろう。



「せっかくだからあいつらの様子を見て楽しむっス」



 リーベは楽しそうに笑っている。彼女は重度の嗜虐趣味者(サディスト)であり、他者を心身共々傷付けたり、傷付けさせたりすることに快楽を見出している。



「……ほどほどにしておきなさい」



 自分達の争いをドSの娯楽としてしか扱われていない彼等がもういっそ哀れだ。


 メイビスは目をそらすように眷属の一人を見た。視線の先では、足元まであるターコイズブルーの長髪を携え、頭にホワイトブリムを装着し、メイド服を着た糸目のどこか抜けたような顔でかわいらしい容姿をしている者が穏やかな笑みを浮かべ立っていた。


 スライムであり、原初の混沌──カオス。

 彼は所謂男の娘というものであるが、それは性別が無い故に男でも女でもなく、男でも女でもあるからである。姿形は人の姿を模しているが、彼に実体はなく、その身体は象られた粘土のようなものである。



「皆さん仲良しですねー」



 このようにだいぶおっとりした性格をしている。

 癒し系男の娘が欲しくてこんな感じにしたことは自分にしてはかなりの功績だと思う。



「やーメイビス様、どうしたんだい、そんなに忙しなく私達を見て。何か面白いものでもあったのかい?」



 白衣を纏った女はおどけた調子で言う。エメラルドグリーンの長い髪は無造作に伸び、ボサボサになっている。白衣の下には下着の代わりなのか包帯が身体に巻き付けてあり、右手に黒いグローブ、左手に白のグローブと色違いのものを装着している。グレーの瞳で顔には縫合痕があり、額から左目の下にかけてを走っている。


 リッチであり、死骸の聖女──テレサ。

 体の半分が生きていて、半分が死んでいるという特殊な体質をしている彼女は、そんな体質のせいか、屍体愛好者(ネクロフィリア)という歪んだ性癖を持っている。



「ふふっ、やっぱりメイビス様とカオスちゃんのカップリングはそそるなぁ。せっかくだしくっついてくれない?」



 訂正しよう、どちらかというと腐女子成分の方が強い。身も心も半分腐ってやがる。



「いえ、遠慮しときます」



  きっぱり断った。残念ながら俺にそっちのけは無い。カオス?奴は男の娘だから仕方ない。



「ハハハ、冗談さ」



 彼女はこのようなヘビーな冗談が大好物なのだ。しかし、今のは本音な気がする。これからは身の振り方には気をつけよう。



「メイビスさまー」



 今度は幼く、愛らしい声が聞こえた。そこには、おでこに小さな角が生えている黒髪ロングの幼女がいた。ぐるぐると螺旋を描いたルベライトのような瞳で、黒のワンピースに身を包み、鮫のようなギザギザの歯をしている。


 ベヒモスであり、万物の捕食者──ファナ。

 その二つ名に負けない程の食いしん坊さんだ。食べれるものもそうじゃないものも彼女には関係が無い。皆等しく食料となる。


 そんな彼女は美味しそうに赤いぶつぶつのグロテスクな果物らしきものを食べており、口元が赤い汁で汚れていた。



「おいしいのみつけたー。メイビスさまもたべる?」


「ハハハ、ノーセンキュー」



 全力拒否。その食物を辞めた何かを食べるのは勇気とは言えない、無謀である。



「じゃあ、ホルンにあげるー」



 ファナはテテテという擬音が似合う走り方でホルンと呼ばれる男の元に駆け寄る。


 そこには、ジャボと呼ばれる胸飾りを身に付け、ワイシャツに黒のスラックスという格好をした背丈が二メートルを越す大男が立っている。しかし、筋肉質かと言われればそうでもなく、どちらかと言うと痩せ気味である。髪はミッドナイトブルーの長いくせ毛で目が見え隠れしており、光を避けるように白いフードを頭から被り、全身を覆っている。フードから覗くラピスラズリのような瞳はどこか虚ろで、時折見える目元には大きな隈が目立っている。


 クラーケンであり、深淵の海魔──ホルン。

 その容姿からも分かるように実に暗い男だ。だが、一般的な根暗とは次元が違う。彼は周りの目など気に留めない。自分の世界で過ごしている為、とてつもなくマイペースである。



「ホルンー、いっしょにたべるー」


「……」


「はい」


「ありがとう」



 あ、食うんだ。まぁ、ファナが食べられるんだし、大丈夫だろう。俺は食べないけどね。

 しかし、こうして見ると巨人と幼女にしか見えない。


 すると、突然背中に何かがぶつかって来た。



「おい、メイビス様!さっきから他の奴ばっかり構いやがって、あたしにも構いやがれ!」



 振り返ると、オッドアイで八重歯の目立つ可愛らしい女の子がいた。ハイネックでノースリーブの黒いヘソ出しのピチっとしたインナーを着て、下に三分丈のスパッツを履いているというスポーティな格好をしているが、それらの服には全て金の装飾が施されている。


 ゴルゴーンであり、白蛇の魔女──メデューサ。

 愛らしい見た目の彼女だが、魔眼使いという恐ろしい称号を持っている。ありとあらゆる魔眼の持ち主である彼女は、常にお気に入りの魔眼を装着している為、右はルビーのような、左はイエローダイヤモンドのような瞳をしている。本来の彼女の髪は赤眼の白蛇となっており、その蛇の目が見た情報は全て彼女に伝わるが、目への負担が大きく、普段はただのグレーの長髪に姿を変えている。



「無視すんなよ!」



 怒られた。

 余談だが、彼女は寂しがり屋のかまってちゃんという面倒臭い性格をしている。十分おきにメールしろとか言う彼女みたいな性格をしている。



「構えよー構えよー」



 しつこく迫ってくるメデューサをどうしたものかという気持ちと、これはこれで悪くないという気持ちが鬩ぎ合いを続けていると、白い糸がメデューサを縛った。

 ぐえっ、という悲鳴が漏れる。



「………うっさい」



 糸の先には不機嫌そうな顔をしている赤眼の童女がいた。まっさらな白髪を肩の辺りまで伸ばしたボブカットに触角のようにはねたアホ毛、着物にスカートを身に付けた和洋折衷の衣装、所謂ゴスロリ着物を肩からずり落ちそうになりながらだらしなく着こなし、黒地に白い蜘蛛の巣をあしらった振袖に、紅い帯を締め、真っ黒なミニスカートを履いている。


 アラクネであり、死の蜘蛛──ノア。

 見た感じの印象としては常に寝起きのような立ち振る舞いをするジト目童女だ。彼女の背中からは六本の大きな蜘蛛の脚が生えており、爪にあたる部分は恐ろしい程に鋭く尖っている。しかし、大きなと言っても彼女の腕より大きいぐらいである。



  「ノア、てめぇ何しやがる!」



 蜘蛛の糸で体を縛られたメデューサは脱出しようと身悶えする。しかし、糸は一向に解けない。



「私の眠りを妨げるな……」



 ノアは眠そうな目でメデューサを睨む。彼女は一日の半分は寝ないと気が済まないという超睡眠気質なのである。故に己の眠りを妨げる者に容赦しない。



「解けよ!解けよ!」



 それでもノアは糸を緩めない。それどころかより強固に糸で縛っている。



「解けよぉ…」



 段々、メデューサの声が弱くなっていく。さっきまでの強気はもう無く、 目に涙が溜まっている。



「解いてよぉ……うわあぁぁぁん!」



 とうとう泣き出してしまった。メデューサは普段強気な分、このように一方的に責められると弱気になり泣いてしまうのだ。名付けるなら、内弁慶泣き虫っ子。



「ノア、その(あたり)にしておけ」



 流石に可哀想だ。まぁ、女の子の泣き顔というのは嗜虐心がくすぐられるものがあるが、ここは一男として止めるべきだろう。



「メイビス様が……そう言うなら………」



 ノアは渋々糸を解き、回収する。

 束縛から解放されたメデューサは泣きじゃくりながらメイビスに抱き着いた。彼女はローブを鷲掴みにして顔を埋めて泣く。

 こらこら、ローブを引っ張るんじゃありません。


 ふと、メイビスは思う。

 そういえばあの二人の喧嘩はどうなったのだろうか。仲直りはしてないだろうけど少しは収まっていてほしい。視線の先にいる彼等は未だに言い合っていた。しかし、その内容は変わっていた。



「眼鏡男子が一番に決まっているだろうが。思考回路がイカれているのか?」


「いやいや、オシャレ男子がナンバーワンでしょうが。眼鏡イカれてんじゃねーの?」



 おい、てめぇらもうそれ俺関係ねーじゃねぇか。

 一人どうやってここまで話しがそれたのだろう。てか君らにもオシャレとかの概念あるんだ。あと眼鏡イカれるってどういう状態だ。



「いい加減にしろ」



 流石にこれ以上話しがややこしくなっても面倒臭いので止めることにした。



「はっ、申し訳ございません!」


「いやーごめんごめん」



 かたや固すぎ、かたや緩すぎ。

 正直、この二体を足して二で割ったくらいが丁度良いんだけどな。



 そして、この時メイビスは実感していた。己の創作したキャラが、本人の予想の斜め上を爆走していたことを。



 ◆



 しばらくして、メイビスは考える。これで全ての眷属を確認した。そして、彼等は確かに設定通りに具現化していた。となると、一つの仮説が浮かぶ。


 ここはAROの世界ではないだろうか。


 それなら、俺が死神の姿をしていることも、眷族達が存在していることも説明がつく。まだ仮説の域を出ないが、そうである可能性は高い。

 まあ、もう一つ仮説はあるが、これは当たって欲しくない。


 しかし、この件に関してはしばらく凍結だ。今は俺達のいるこの森について調査しなければならない。

 何が住んで居るのか、どれほど広いのか、ここは安全なのか、調べなければならないことは山ほどある。そうと決まれば行動だ。



「眷属達よ、集まれ」



 その声に反応し、一瞬で眷属達が目の前に並ぶ。

 こういう時、眷族達は便利だなぁ。

 しかし、俺も彼等の主人なのだ。格好つける所は格好つけねば示しがつかない。間違っても括弧つけるではない。



「貴様等に調査を命じる。この森の情報を集めよ。その際、何を見つけても手を出さず、必ず私に報告することを忘れるな。調査が済み次第、私の元に帰還しろ」



  さて、初行動がどういったものになるかたのしみだ。



「それでは、行動を開始せよ」



 こうして、『俺』のメイビス・クライハートとしての異世界生活が始まった。


まとめてみた。


メイビス…ロリコン死神

パンドラ…おちゃらけピエロ

オルフェウス…堅物眼鏡

リーベ…植物ロリババア

カオス…メイド男の娘

テレサ…ミイラ腐女子

ホルン…陰気蛸

ファナ…食べ盛り幼女

メデューサ…強がり泣き虫蛇少女

ノア…居眠り蜘蛛童女


これだけ覚えておけばOKだぞ!

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