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転生死神と眷属による異世界奇想曲  作者: 田中 てんまる
死の館編
14/33

第14曲 愛する方を

待たせたな皆!

今回はノアのバトル回だ!

皆も楽しみだよな!


だから遅れたことは許してください。


メイビス様はまた次回

 


 ◆



 ワイトは対峙していた。その相手ははっきり言って


 ──化物だった。


 ワイトはこれまでの戦いを思い返す。


 あの娘が訳の分からないことをブツブツと口走っていた隙に、ワイトは先程の《火球(ファイアーボール)》三連発を喰らわせた。避ける様子は無く、全て直撃した。その瞬間、口角を上げ、笑みを浮かべていた自分が今では腹立たしい。何故そこで追撃しなかったのかと過去の自分を叱咤したい。いや、恐らく生半可な攻撃をしても意味は無かっただろう。

 奴は、あろうことか三発もの火球(ファイアーボール)を喰らい、()()()()()()()()

 そして、果てしない憎悪を込めた瞳でこう言った。



「……この程度か………」



 その時、娘は袖に隠れた手を軽く動かした。それは誰の目から見てもなんてことは無い動作だった。しかし、ワイトは直感的に悟った。「何かが来る」と。

 ワイトは咄嗟にその場から横に飛んだ。その判断は正解だった。ワイトの居た場所に突如斬撃が飛んだ。細く深い溝が床に掘られている。



「くっ!?これは魔法か?いや、そんな素振りは無かった。つまりは奴自身の技術ということか……厄介な!」



 ワイトが推測を立てている間も斬撃は飛んでくる。



「ならばこれでどうだ!」



 《障壁(バリア)



 ワイトは防御魔法を展開し、見えない斬撃を防ごうと試みた。が、斬撃はいとも容易く障壁(バリア)を引き裂く。そして、そのままワイトの身体を袈裟斬りにした。


 そして、今に至る。

 斬撃が障壁(バリア)を破った瞬間、後ろに飛んでいなければ身体も引き裂かれていただろう。



「…………トドメ」



 不意に娘は呟いた。その言葉にワイトは身を震わせ─



「ふはははははハハハハ!!!」



 ───笑った。



「ナメるなよ小娘ぇ!!!あの方の腹心であるワタシがこの程度ダト思ったカ!!見セテヤロウ!私ノ真ノ強サヲ!!」



 ワイトの姿が変わって行く。脇腹から更に腕が生え、下半身が蛇のように変化していく。その有様はまるで地を這う昆虫のようであった。



「ケヒッ、こりこそわたすのしんのすがた。くちのこうぞうじょうふまくしゃぺれんのがたまにきずたかな」



 ワイトはその姿を見せつける。しかし、娘は恐怖する訳でもなく、驚愕する訳でもない。何も言わずただ佇んでいる。



「だんまりか。たが、いつまてそのたいどがつつくかな?」



 すると、ワイトは軽く身体を後ろに引く。そして、反動を付け、走った。地を這うように走った。それは肉眼で追えるような速さではない。一秒も経たぬ内にワイトは娘の背後に回り込んだ。



「どうた?おろろいたか?このじょうたいてのわたすのそくどはおとをこえりゅ」



 優越感に浸るワイトは不敵に笑う。だがしかし、これでも娘は反応しない。背後を取られているというのに微動だにしない。すると、沈黙を貫いていた娘が口を開いた。腹立たしいことにそれは、先程かけられた言葉と一字一句同じものだった。



「………この程度か…………」



 ワイトはとてつもない殺気を感じ、思わず飛び退く。

 瞬間、娘の周りに斬撃が飛ぶ。ふと、斬撃を確認すると、キラリと何かが光った。細く、長い何かが。そして、()()()()()という表現が間違いだったことにワイトは漸く気が付いた。斬撃の正体は───



「……いとか!!」



 そう、今まで見えない斬撃だと思っていたそれは、糸の巻き取りにより生じたもの。つまりは糸で切ったのだ。



「くははははっ、なりゅほろ。たしかにこりならばみえないざんげきをつきゅりだすこともかのう!たがしかーし!たねさえわかればろうということはない!」



 すると、ワイトは地を這いながら走り出し、壁や天井を縦横無尽に飛び回る。その速さは音速を越えており、視認することは難しかった。しかし、見える者。例えばメデューサがいたならば顔を引き攣らせながらこう言うだろう。「まるでゴキブリだ」と。



「どうだ!こりならばきさまもいとでわたすにこうげきすりゅことはふかのう!そして──」



 ワイトは走りざまに、鋭く尖った幾本もの爪で娘を切り付ける。すると、ほんの少しだけ着物の裾が切れていた。



「こうすてきりきざむこともかのう」



 ワイトは歪んだ口元を更に歪ませ、醜く微笑む。勝利を確信した笑みだ。



「もういい」



 ふと、娘は呟いた。小さな呟きだったが、その声はワイトの耳に届いた。。ただじっと、ワイトを睨みつける。その視線には明確な殺意が込められており、勝利を確信したワイトでさえも身震いした。



「っ!いくりゃすごんだところれ!わたすのかふぃに!かわりはない!」



 ワイトは先程と同じように音速越えで壁や天井を走り回る。次の一撃で止めを刺すつもりで。しっかりと娘を見据え、攻撃のタイミングを見計らう。──つもりだった。



「はっ?」



 消えた。突如あの娘の姿が消えた。しっかりと見据えていた筈なのに、跡形もなく、消えた。



「ば、ばかな!ありえない!いっひゃいろこに……」



 パンッ



 突然そんな音が鳴った。音は部屋中に反響して何処が音源かは特定出来ない。すると、その音はまた鳴った。今度こそと音源を探すが、見つけるより先にまた音が鳴る。

 風船が破裂したようなけたたましい音。やがてそれは連続で鳴り、部屋中から破裂音が耳に響く。ワイトは恐怖した。何故かは分からない。だが、無意識の内に感じ取っていたのかもしれない。自分に襲いかかる─死を。



「なんなんだ、こおおとはいっひゃいなんなんだ!!」



 ワイトは思わず叫んだ。すると、突然音が止んだ。先程までとは打って変わって静寂が室内を包み込む。ふと、部屋の中心に目を向けると、先程までは無かった娘の姿があった。

 ワイトは娘の姿を確認すると脇目も振らず飛び込んだ。身の危険を感じたワイトは何かされる前に娘を殺そうと動いたのだ。が、しかしもう遅い。



 ワイトの身体は()()()()()()()()()



 ワイトの身体には無数の透明な糸が絡まっていた。糸が身体を固定し、ワイトは空中で停止した。娘はその様子を嬉しがることも、怒りをぶつけることもせず、ただ無機質に眺めていた。その瞳は深淵を覗き込んだと間違えるほど深く、暗い。



「な、なんだこりは!?」



 ワイトは驚愕した。娘に向かって特攻を仕掛けた瞬間、糸が身体に絡まった。



「く、くそっ!こんなもの!」



 ワイトは糸を引きちぎろうとするが、糸はちぎれるどころか、ワイトの身体に余計に食い込んだ。



「無駄。その糸は私が生み出したもの。メイビス様でもない限り切れはしない。それを部屋中に張り巡らせた」



 娘は落ち着いた口調でありながら、ハキハキと喋った。先程までの気だるげな口調はもう無い。


 ワイトは理解した。先程の音は何だったのか。それは、巣を張る為に奴が飛び回ったことによる衝撃波。それが破裂音のように聞こえたのだ。余りにも速く部屋中を飛び跳ねた為、移動時に衝撃波が巻き起こされ、それが遅れて聞こえてきた。だから、音の鳴る間隔が狭まり、連続で聞こえてきたのだ。



「ぐぬぬぬ!?な、なぜ……なぜわたすにこんりゃことをする!」



 ワイトは身動きも取れず、忌々しげに娘を睨むことしか出来なかった。



「メイビス様に攻撃したから。だから殺す。

 メイビス様を侮辱したから。だから殺す。

 メイビス様の手を煩わせたから。だから殺す。

 メイビス様に付いていけなかったから。だから殺す。

 メイビス様が偉大だから。だから殺す。

 メイビス様が優しいから。だから殺す。

 メイビス様がかっこいいから。だから殺す。

 メイビス様が強いから。だから殺す。

 メイビス様が死神だから。だから殺す。





 ─────私の愛する方を馬鹿にしたから。」



 ワイトは絶句した。この娘はあの男に心酔している。これは最早忠誠心などという生易しいものではない。それよりももっと(おぞ)ましい、愛と呼ぶには酷く歪んだ何か。それを垣間見た気がした。



「あ……あああぁぁぁぁ………」



 名の知れた冒険者でも、誰もが知っている英雄でもない。全く見たことも聞いたことも無い連中。


 それはこの世界において明らかに異質(イレギュラー)な存在。



 そして、理解した。今から自分は───死ぬのだと。



「おねがい……たひゅけ」



 《殺取(あやとり) 壱の業 空締(からしめ)



 娘が背中の脚を動かした瞬間、ワイトの身体が締め上げられ、遂には切断された。バラバラになった死体が地面に音を立てて転がる。



「……寝言は寝て言え………」



 死体を一瞥すると彼女は、脚を操り、糸でハンモックを作り出し、そのままハンモックに身を預け、目を閉じた。

 メイビスが帰ることを信じて──



ワイトの喋り方超めんどくさい。

次回!メイビスVSカーデット決着!!






「──第二形態解放」




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