第12曲 ジルバ轟沈
遅くない?
そんな不満にこの一言!
すみませんでしたあぁぁぁぁぁ!!!
はい、という訳で本編始まりまーす。
ー死の館・二階廊下ー
三人が二階の廊下を進むと、一つだけ風変わりな扉があった。髑髏を象った不吉な扉。誰が見ても一目瞭然だった。
「どうやらここがラスボスの部屋のようだな」
メデューサの見取り図とも場所が一致している。間違いないだろう。ということはこの扉の先にいるのだ。コボルトを絶滅寸前まで追い詰めた張本人が。
しかし、油断大敵。何があるか分からない。ここは不用意に突っ込まず、中の様子を探知してから入ったほうがいいな。
すると、ジルバが大股で早足で扉に近づき、扉に手をかける。
……え?
「ここでうじうじしてどうする。突撃あるのみ!」
「おまっ!ちょ、待っ」
ジルバは一切の躊躇無く扉を開いた。色々と考えていたメイビスはジルバの突然の行動に取り乱す。眷属の前で取り乱すとは何事か。そう思いチラリとノアを見るが、目が閉まっていた。取り敢えず幸いだった。
しかし、安心は出来なかった。案の定ジルバが扉を勢い良く開くと同時に三つの火の球がジルバめがけて飛んで来た。ここでジルバに死なれては計画が破綻してしまう。そう思い、メイビスはジルバのうなじの毛を掴み、後ろに思いっ切り引っ張った。すると、ジルバに向かっていた火の球はメイビスに着弾した。
着弾による煙が辺りを包む。すると、一人の男が足を踏み出す。
「ふははははははは!!どうだ!このワイトの火球の味は!」
そう笑うワイトは神官のような服装をしている。しかし、その身体に肉は無く、俗に言う即身仏のようである。
ワイトは勝ち誇ったような笑みを浮かべ、高笑いを上げる。しかし、そんな勝ち誇った笑みも次の瞬間に消える。
「温い」
煙が晴れるとそこには何事も無かったかのようにメイビスが立っていた。
「何っ!?三つもの火球を喰らって無傷だと!?」
「何だこんなものか。私はもっと熱い歓迎を期待していたのだがな」
しかし、実を言うと俺も一瞬焦った。火球程度の下位魔法なら喰らっても無傷でいられるが、試したことは無いのでどうなるか分からなかった。本当消し炭とかじゃなくて良かった。
「さて、この館の主人はどこだ?」
「き、貴様のような下等生物に教えるはずなかろう!」
ワイトはカラカラに干からびた身体を大袈裟に動かしながら、返答を拒否する。ここは恐らく玉座の間だ。この部屋にラスボスがいたのは間違いない。隠し通路などは無いはずだが奴は一体何処に行ったのだろう。
ふと玉座の前の辺りを見ると、少しだけ景色が歪んでいることに気が付いた。
「《次元の狭間》、確かそれは上位魔法だったか。まぁいい、いるのだろう?」
メイビスは誰もいない場所に向けて問い掛ける。誰もいないのに返事が返ってくる訳が無い。傍から見ればただのおかしな奴だ。街中にこんな奴がいたら誰もが道を開け、奇異の視線を存分に浴びせるだろう。
しかし、返事は返って来た。
「ああ、いるとも。ここにな」
すると、歪みは拡大し、裂けるように広がっていく。
やがては人ひとりなら通れるくらいの大きさまで広がる。その裂けた隙間から
「出て来いよ。何だ、恥ずかしがり屋さんか?」
「いやいや違うとも。戦いの場を用意したのだ」
メイビスは「ほう」と微笑を浮かべながら興味深そうに耳を傾ける。
「準備は整ってある。いつでも大歓迎だ」
裂けた空間の隙間から重圧のある声が響いてくる。
ワイトという男は跪き、その言葉を聞いているが、明らかに苛立ちを発していた。それは勿論メイビスへのものだ。恐らくは主人にここまで言わせたメイビスが気に食わないのだろう。しかし、メイビスにとっては全く持ってどうでもいい。
「ではお言葉に甘えるとしよう」
そう言うとメイビスは先程助けたジルバを連れて行こうとする。戦いを見届ける立会人が必要だからだ。そして、振り向き彼に声をかける。
「さて、行こうかジル………」
振り向いたメイビスの目に映ったのは、某ボクシング漫画の主人公の如く、真っ白に燃え尽きたジルバだった。
「ジルバアァァァァァァァァ!!?」
メイビスは一目散にジルバの下に駆け付け、彼の身体を抱き上げる。
「おい!しっかりしろ!」
「燃え尽きたぜ………真っ白にな……………」
ガクッ……とジルバは力無く垂れ下がる。何故某ボクシング漫画の主人公の最後のセリフを知っているのか問いたくなるがそれはひとまず置いておこう。
「誰が一体こんな酷いことを……」
理由は誰の目から見ても一目瞭然であった。ジルバを火球から庇い、彼を思いっきり後ろに引いたメイビスだが、勢いが強過ぎてジルバは壁に頭を強く打ち付けたのだ。その証拠にジルバのもたれ掛かっている壁には巨大なひびができていた。
そして勿論誰の目にはメイビスも含まれていた。が、庇った相手自分でやっちゃいました☆。と言える訳が無く、普通に無かったことにした。
「畜生おぉぉぉ!!許さないぞおぉぉ!!…えと…あの…その………アイツウゥゥゥゥゥ!!!!」
罪を擦り付ける相手を探すも思いつかず曖昧にはぐらかすメイビス。明らかに最低である。
「アイツだけは許さない!アイツだけはァァ!!」
顔に冷や汗をかきながら、いもしない存在に全ての罪を擦り付け、いもしない存在に勝手に憤慨するメイビス。明らかにクズである。
「さて、じゃあ行くか」
そして、何事も無かったかのようにジルバの頭を鷲掴みにし、引きずりながら連れて行くメイビス。最早元人間のなせる所業では無い。悪鬼羅刹の領域である。
「き、貴様あぁぁぁ!!巫山戯ているのかあぁぁぁぁ!!」
その様子を見て激昂するワイト。当然の反応である。しかし、そんなことで足を止めるメイビスでは無い。ワイトを完全に無視し次元の狭間に向かう。
「待てェ!みすみす貴様を行かせる訳にはいかん!」
ワイトはメイビスに向かい、魔法を唱えられるよう準備する。こうなれば無理矢理にでもメイビスは相手をしざるを得なくなる。しかし、そう考えたワイトは愚かとしか言えない。
「おい、構える相手を間違ってるぞ?」
メイビスの言葉に一瞬、疑問を思い浮かべるワイトだが、その疑問はすぐに払拭される。背後にとんでもない殺気を感じた。いや、殺気を孕んだ言葉が耳に届いたのだ。
「………メイビス様?……攻撃?……下等………生物?」
そこには虚ろな目で首をかくんと横に倒した不気味な状態で佇む童女がいた。前髪が顔にかかっているが、本人は気にする様子も無い。それが余計に恐ろしいかった。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
ワイトは背筋が凍った。殺意、怒り、憎悪、それらが果汁百パーセントのジュースのように凝縮された果てしない負の感情にその身が危険信号を発した。
しかし、もう遅い。何もかもが遅すぎた。彼女の殺意は、もう止まらない。
◆
メイビスはジルバを連れて、もとい引きずって次元の狭間に侵入した。ジルバは目を覚まさないが、その内目を覚ますだろうと入口近くに放置した。
あのワイトという男はもう問題では無い。彼女の怒りを買ってしまえばもうおしまいだ。生存は絶対に有り得ない。
侵入したメイビスの目に映ったのは骨だ。人骨の山だ。人間のありとあらゆる部分の骨が辺り一帯に山のように積み上がっていた。加えて周りは暗い空間に炎が灯され、オレンジ色の光がぼんやりと浮かんでいた。この様子はさながら
「地獄………」
「その通り」
声のした方向を向くとそれはいた。剥き出しの頭蓋、骨だけの手、真っ黒の鎌、それは正しくこの光景に相応しい見てくれだった。
「我が名はカーデット。死の館の主人にしてこの地獄の王なり」
カーデットとやらは両手を広げ、名乗りを上げる。それに呼応するようにメイビスは不敵に笑う。
「そうか、カーデット。私の名はメイビス・クライハート。では挨拶代わりだ」
《煉獄業火》
カーデットの足元から火柱が噴き出す。その炎はあらゆるものを焼き尽くす上位魔法だ。本来耐えられるものでは無い。しかし、カーデットは立っている。火柱が止み、無傷のカーデットが現れる。
「この程度かメイビス?」
「抜かせ。ゲームはこれからだろう。さぁ、楽しい楽しい殺し合いの時間だ!せいぜい私を楽しませろ、地獄の王よ!」
メイビスは両手を広げ高らかに言い放つ。この場において最早正義は存在しない。有るのは二つの悪。絶対的な巨悪。そうして、二つの悪の殺し合いは幕を開ける。
メイビス(「俺」ver)「俺の大活躍は?」
作者「………(๑>•̀๑)テヘペロ」
メイビス(「俺」ver)「煉獄業火」
作者「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」




