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異世界奇譚  作者: 詩野クロ
第壱話:ドラゴンの友人
3/3

子供が読んだドラゴンと愚かな王

――おや、この本が気になるのですか?

――これはですね、この街の子供に読み聞かせる本なのです。

――昔、此処からずっと東の方には、ドラゴンが居たのですよ。

――といっても、十年位前なのですが。

――この本は、説話なのです。

――世界には怒らせてはならないモノがあるという。

――十数年前、愚かにもドラゴンを怒らせてしまって滅んだ国の、滅ぶ少し前までの話。それが、この本には書かれているのです。

むかしむかし、ここからずうっとひがしへいったところ、いくつものやまをこえてもりをぬけたところに、いったいのドラゴンがいました。

ドラゴンはずっとひとりですんでいました。

ドラゴンはひとがきらいでした。

むかし、ひとがいるまちのちかくにあそびにいったとき、ドラゴンはなにもしていないのに“ドラゴンだから”というだけでおそわれたからでした。

ドラゴンはいきものがきらいでした。

ふつうにあるいているだけでおびえられ、すこしつめなどがあたっただけでかんたんにきずついてしまうからでした。

ドラゴンはそとにでないようになりました。

そして、なんねんもすぎたころ。

ひとがやってくるようになりました。

それは、ドラゴンのちが、なおらないといわれていたびょうきをなおしたからでした。

ドラゴンのちにほんとうにこうかがあることをしって、たくさんのひとがちをもとめてやってきたのでした。

けんしがきりつけ、まほうつかいがまほうをとなえました。

でも、ドラゴンにはききませんでした。

かなわないとしったひとびとは「たすけてくれ」といいました。

ドラゴンは「もうにどとこないとちかえるか」ときき、ひとびとは「ぜったいにこない」とちかいました。

でも、それはうそになりました。

そのことをきいたおうさまがおこって、「そのなまいきなトカゲをころせ」といったからでした。

へいしたちはさからえませんでした。

なぜなら、あいてがおうさまだったからです。

そしてそのおうさまは、「へいしがにげることがないように」と、ひとをあやつるまほうをかけたのです。

あやつられたへいしたちは、ドラゴンとうばつにいくことになりました。

だれもいきたくはありませんでしたが、あやつられていてはどうしようもありません。

なくなくドラゴンとうばつにでかけたへいしたちはドラゴンにたのみました。「このまほうをといてくれ」と。

ドラゴンはこまりました。

へたにとこうとするとしんでしまうのろいだったのです。

そのことをしったあるへいしは、「それなら、たたかえないようにしてほしい」といいました。

たたかえなくなれば、へいしたちにかけられているまほうでもたたかわせられなくなるからです。

ドラゴンはそのことばにしたがって、まほうでぐるぐるとしばりあげ、まちのそばにてんいさせました。

おこったのはおうさまです。

じつは、ドラゴンとへいしのやりとりをまほうでのぞいていたのです。

いかりくるったおうさまは、「よくもばかにしてくれたな」といって、てんいしてかえってきたへいしたちをしにかけるまでいためつけました。

そして、「これはドラゴンのしわざだ」とくにのひとびとにいったのです。

へいしたちをまほうではんろんできないようにして。

そしてまいとし、へいしたちをおくりこみつづけたのです。

おそいかかるへいしたちをかえりうちにしたドラゴンは、ひとびとにといました。「なぜ、またきたのか?」と。

へいしたちは「しりあいのかたきだから」とみみをかしません。

それが、まいとしつづいて。

ドラゴンが、おこってしまったのです。

おこったドラゴンはおしろまでとんでいきました。

おどろいたのはおうさまです。

なぜこちらにとんでくるのかわからなかったのです。

あわてて、へいしたちにじぶんをまもらせようとします。

やってきたドラゴンは、「おうはどれだ」といいました。

そのことばにおこったおうさまは、「あのなまいきなトカゲをころせ」といってしまいました。

そのことばで、きづかれてしまうともしらずに。

ドラゴンは「そうか、おまえか」とさめたこえでいって。

そのくびをはねました。

かえりちをあびたドラゴンは、なにごともなかったかのようにかえっていきました。

そしてそのくには、いまでもドラゴンにたいしてへいしをおくっているということです。

ここで字は終わっている……。

読み終えると、さっきの男が話しかけてきた。


――どうでした?この本は。

――こんなに詳しい話をどこで聞いたのか、ですか?

――それは、通りすがりの旅人が置いて行った物なので、そこまでは。


と聞いたところで、カラーン、と鐘が鳴った。


――ああ、もうお昼時ですね。

――ご一緒にどうです?


と聞かれたのを断り、その場を離れ。

《……お前、そういえばあの本持ってたよな》

「――っ!き、聞かないで……」

必死に顔を逸らす同行者。

《読む意味、あったのか?》

と敢えて聞く。きっと顔は笑っているだろう。

そして、それを見咎めて、同行者がふくれっ面になる。


――あのポンコツだった子供と旅をしているなんて、あの時の俺に言ったら、どんな顔をするのだろう。

「な、何で笑うのサ!」

《そりゃ、面白いからだろ?》

まだ当分、旅は続く。

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