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異世界奇譚  作者: 詩野クロ
第壱話:ドラゴンの友人
2/3

酒場の男が語った話

ん?ドラゴンの話だぁ?何でそんなモン俺に聞く?

酒の肴?まあ、いいけどよ。

じゃあ、聞けよ?

一昔前、こっからずっと行ったとこに――

――一昔前、こっからずっと行ったとこにゃ、それはそれはでっけぇドラゴンが居たって話だ。

――あ?何でそんなとこにドラゴンが居たかって?

――俺が知るわけねえだろ、そんなもん。

――まあ、そこにドラゴンが居たわけだ。

――アンタも、ドラゴンの素材が高く売れるってこたぁ知ってんだろ?

――あれは何にでも使えるからなぁ……牙にしても皮にしても。

――まあ、そんな訳で、お偉いさん方、いや、ドラゴンを討伐して名を上げたい奴や金が欲しい奴、素材が欲しい奴……、とにかくまあ、いろんな奴がこぞって狩ろうとしたワケだ。

――結論から言っちまうと、出来なかったんだが。

――あれは、惨憺たるって言葉じゃ足りねえ位の惨状だったなあ……。目も当てられねえっていうか、直視したくねえというか。

――何で知ってるかって?

――そりゃあな。

――帰って来たんだよ。

――ボロッボロな状態で、魔法で転送されてな。

――ギリギリで生きてるけど、最早廃人ってな感じだった。

――街に帰って来てんのに、「ドラゴンが……ドラゴンが追いかけてくる……」ってな具合に、怯えきっちまったように呟いてんだ。

――今思い出しても寒気がするぜ……。

――帰って来た奴らには「次は無い」って字が刻み付けられてたのさ。

――文字通り、ざっくりとな。

――そっから、この街は“ドラゴンにゃ手を出さない”ってなってんのさ。

――だが、お偉いさん方はどーしてもドラゴンを討伐したいらしくてな。

――懲りもせずに、送り込み続けてたらしい。

――数年前まで。

――何で分かんのか、って顔だな?

――この店、酒場だろ?

――アンタが聞いたみたいに酒の肴だったりなんだったりで、情報交換されてたわけで。

――数年前までは“邪竜討伐”の依頼についてよく噂されてたんだが、今じゃめっきり聞かれない。その代わりみたいに、“『ずっと討伐隊を送り続けてた国』が消えた”“ドラゴンの怒りを買って滅ぼされた”っていう噂話が聞かれるようになって、随分と経ってる。

――多分、もう無くなってんだろうよ。

――『警告した筈だ』って刻まれていたらしいし、何より――。

――見に行った奴の話じゃ、ずっと同じところに居た筈のドラゴンは、もう其処には居なかったらしい。

――“飛んで行くドラゴンを見た”ってどっかのガキも言ってたしな。

――聞いたときゃあ、ガキの戯言だと思ってたんだが。


――……これは、“邪竜討伐”に行った俺の知り合いから聞いた話だが。

――討伐するその“邪竜”の傍に一人、ガキが居たらしい。

――ま、これは関係ない話だろうが。

――その時討伐に行った奴らは全員が目撃してたらしいから、一応、な。

――まあ、俺が知ってんのはこん位だな。

つうか、金を貰っといてあれだけどよ、そんなに価値のある話か、これ?

普通こういう話――しかも与太――は良くて銀貨数枚だぜ?

まあ、後で文句言ってこねえなら、いいけどよ。

おっと、勘定かい?ひい、ふう、みい……。確かに。

ウチにゃあ酒と与太話しか無えが、また来てくれよ!

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