語り屋が語るドラゴンの友人
おや、お客さんかい?珍しいね、こちらに人が来ているなんて。
今日の話は“ドラゴンの友人”だ。初めての人はお安くしておくよ。
……さて、御伽噺をしようか。
――昔々、或る処に、一体の竜がいた――
――昔々、或る処に、一体の竜がいた――
竜はずっと、その場所で蹲っていた。
何年も、何年もずっと。
何時からか、その竜の元にも人族が来るようになった。
竜の素材が何にでも使えることを人族が知り、竜がその場所にずっといると知られたからだった。
襲い掛かって来た人族を、竜は容易く蹴散らした。
“人間に害をなす竜”として、討伐隊が組まれ、それ等がやって来た時も。
病を治すため、と叫んだ人族が切り付けてきた時も。
襲い掛かる人が出るたびに、竜は蹴散らし、暫くは人族が来なくなった。
しかし、時が流れて竜の強さを知る人族が居なくなった頃。
またしても、人族は竜に襲い掛かるようになった。
――人が竜に襲い掛かり、竜はそれを蹴散らす――。
そんな流れを繰り返し、何千年と過ぎた頃。
一人の人族がやって来た。
その人族は子供だった。
ふらり、とやって来たその子供は、人族にしては珍しく、竜に襲い掛かってこなかった。
「わあ、本当にドラゴンさんだ」
と、子供は言った。
竜は戸惑った。
「ドラゴンさん、ボクの友達になってよ」
なんて言う人族には、これまで遭ったことが無かったからだ。
沈黙した竜に、その子供は、
「ねぇ、鱗に触ってみてもいい?」
と言って、竜は、
《触るな》
と、答えた。
「触らせてもらうまでここに来るからね!」
と言って、子供は帰っていった。
それから毎日のように、子供はやってきて竜に触ろうとした。
竜はそれを退け、追い払った。
そんな流れが繰り返され、一年後。
忘れられることを待っていたかのように、また人族が襲い掛かって来た。
運の悪いことに、その日も子供が来ていた。
竜は怒り狂った。
子供が、竜への魔法攻撃の余波を食らってしまったのだ。
怒り狂った竜は、襲い掛かって来た人族を全て魔法で皆殺しにした。
竜は嘆いた。
子供の受けた攻撃を、竜の使える魔法では癒やせなかったからだった。
魔法攻撃を受け、死にかけた子供を、竜は時を止める棺に入れた。
こうしておけば、治せないまでも死ななかったからだった。
棺には【不壊の魔法】と【不可視の魔法】を掛け、誰にも手出しできないように仕舞い込んで、竜は旅に出た。
魔法攻撃を癒やす魔法を、子供に使えるようにするためだった。
竜は人に化け、癒やしの魔法を探した。
何年も何年も、探し続けた。
――今でも、その竜がその魔法を見つけたという話は聞かない。
きっと、今も探し続けているのだろう。
また、その子供に逢う為に。
御伽噺はここで一先ずお仕舞い。
でも、「彼」がその店を見つけたなら――。
と、これは関係なかったね。
でも、運が良ければ逢うかもしれないよ?
この御伽噺のドラゴンに。