そ、そ、そ、そうでしたっけぇぇ??
グウェナの経歴はなかなか目を見張るものだった。
幼い頃、奴隷として買われ、
後に奴隷兵としてその戦闘能力を開花させる。
15歳の時に隙をつき屋敷を脱走。
国を2つ跨いだ、最西端の王国で殺し屋として裏の世界で生活を始める。
その手腕を買われ、20歳の時に傭兵団の団長に拾われ傭兵としての生活を始める。
更に23歳の時に、その並外れた戦闘能力を見込んだ辺境の領主に私兵として雇われる。
しかし、その領主は国で禁止されている魔術の研究をしていたようで、捕まり、そのまま死刑。
私兵だったグウェナも捕まり檻に入れられた直後に、
この世界に召喚された。
取り敢えず、そんなグウェナの経歴は良いとして…。
「おいリコ。話が違うぞ」
「な、なにがですか!?」
拠点に帰る森の小径の途中。
グウェナの話をある程度聞き、俺たちの当面の目的を説明したあとに、俺はリコに冷ややかな目を向けた。
「釘の長さで年代も選べるって言ったよな?あの藁人形に刺してたの、せいぜい10cmするかどうかぐらいだっただろうが」
「そ、そ、そ、そうでしたっけぇぇ??」
既に涙目だ。
「15cmで18歳とか言ってなかったか?」
「それはぁ…えっと…わかりません」
はぁ…まぁしかたないか。
実験だったからな。
なんの実験だったかと言うと、
魔獣召喚に藁人形を組み合わせると召喚は成功するのか、
というものだった。
本来なら藁人形のいらない召喚獣の1つである「スノーハウンド」の召喚素材に、藁人形を足してみたわけだ。
ある意味実験は成功と言えるかも知れないが、
リコから貰っていた予備知識はアテにならなかったわけで…。
まぁいいか。
単発ガチャでSレアキャラを無課金で引いたみたいな気分だからな。
悪くない。
「新王候補の候補、と言ったか」
グウェナが若干懸念を込めた声を響かせる。
「王を目指すと言うわりに、
本来なら臣下であるはずの周りの者に叱咤された上に涙を浮かべる軟弱さ。
さしずめ…「未熟王」と言ったところだな」
「ひ、ひどいです!!」
グウェナは豪快に「がははは」と笑いを上げた後、俺に向いた。
「参謀よ。
この未熟王の配下は他にどれほどだ?」
「えっと…俺とコルテラ以外だと、直接的な戦力はあと3人…だな」
「・・・先ほど聞いた話だと、近々「模擬戦争」があるのだろう。
・・・敵方は何人だというのだ」
「現状、見積もりは30人くらいだよ…」
「私程度が加わって傾く戦力差か・・・?」
ごもっともな意見だ。
現状7名のリコ陣営。
リコ、俺、サフラは後衛として、
緋那、バステラ、コルテラ、グウェナの4人で30人を相手取る事になる。
だが、俺は1つの予想をグウェナに語った。
「うまくいけば、敵の内の約10人はこっちの陣営に寝返るさ」
「・・・ほう?して、その策を聞かせてもらおう?」
俺は、現状可能であろう作戦をグウェナに語った。
この作戦は既に緋那経由でバステラ・コルテラ姉妹にも伝わっている。
サフラには直接話したが、
「了承」
とのみ返事をしたので、まぁ大丈夫だろう。
ただ、リコにはまだ話していない。
理由としては、第一にこの陣営でもっとも気が弱いからだ。
説明したところで、戦争当日まで気が気ではなくなり不眠の日々を過ごしそうだからだ。
言うなればそれだけ賭けの要素が強い策だった。
ちょうど拠点に到着する頃、グウェナに粗方の作戦は説明し終えた。
「ふむ・・・そうそう上手くいくとは思えんな」
残り2ヶ月を切った現状、大幅な戦力強化はまず無理だろう。
この作戦を成功させなけりゃどうしようもないのだ。