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そんな運任せな…

「リコ、異世界召喚についてなんだが、ある程度狙った人物を召喚する事は出来ないのか?」


拠点完成の次の日、顔を合わせて開口一番に俺はリコに質問をぶつけた。


「狙った人物を召喚…ですか?」


一瞬驚いた顔を見せたリコだったが、2〜3秒で真剣な顔になり、顎に手を添えて思考を巡らせてくれた。


「古くから「悪魔召喚」や「魔獣召喚」はありましたね。

文字通り、特定の悪魔や魔獣を召喚する召喚魔法ですが、

悪魔の方は「召喚されてもいい」と思っている悪魔が、自ら召喚方法を残したものですし、

魔獣の方に至っては「その種類の魔獣なら取り敢えずなんでもいい」みたいな召喚方法なので、ある意味では「特定の」召喚魔法とは言えないですし…」


意外にもしっかりとした回答だった。

出会ってからというもの、おどおどしているか半泣きか泣いてるかのどれかしか見ていなかったわけで、

そんな少女が饒舌に解説してくれている。


やはり、異世界から人間を召喚するくらいだから、知識はあるのだろう。


「それじゃぁ召喚は本当にランダムなのか…」


「んんん…そうとは言い切れませんね」


「…というと?」


「少なくとも、性別は選ぶ事ができます。

基本製法の「サモンドール」に釘を刺すんですが、胸部に刺せば女性、下腹部に刺せば男性が召喚できます

。刺さないならランダムですけど」


完全に丑の刻参りじゃねぇか…


「釘の長さで年代もある程度選べるんです。

一般的に入手できる中で特に長い15cmのもので…だいたい18〜20才くらいの人ですかね」


15cm…ほぼ五寸釘かよ。


まぁ取り敢えず聞いた内容はちゃんとメモを取る。


「でも、どうしてそんな事を急に?」


「いや、リコの召喚魔法は戦力増強の近道ではあるが、ランダム召喚ってのがネックだからな…」


アプリゲームのガチャよろしく、「10連召喚」みたいな事なんて出来るわけでもないからな…常に単発召喚。

効率が悪いにも程がある。


それなら、協力狙ったキャラを召喚出来るように情報を整理もとい、収集しなくちゃならない。


つまりは、

ドロップを行うよりは、素材を揃えてキャラ合成する方が良いって話だ。


「ちなみに、魔獣と悪魔の召喚は、藁人形を使うのか?」


「んんん…使うには使いますし、使わないなら使わないですね」


「・・・は?」


「つまり、人の形をしている悪魔や魔獣を召喚するなら「サモンドール」を使うんです。

なので、魔獣に至っては基本的に「サモンドール」は使いませんし、

悪魔にしても、人型じゃない悪魔なら「サモンドール」は使いません」


「てことは、人型の悪魔とかなら、藁人形プラス何かしらの素材を揃えるって事か?」


「ざっくりと言えば、そうですね」


なるほど、

藁人形は必須アイテムってわけでもないのか。


となると、

これから召喚魔法を使うなら、ランダムな人間を召喚するより、

言葉の通じる魔獣とかの方が良いって事か?

言葉の通じる…魔獣ねぇ…俺の知識を導入しても何種類居るんだか…。


「それ以外に何か召喚に関連する要素ってあるか?」


「んん…本を幾つか調べればあるかも知れませんが…読んだ覚えはありませんし…


今のところはこんな感じでしょうか?」


これ以上情報がないとしたら…あとは実験してみるしかないか…。

相手が傭兵を連れてるなら尚更人員は必要だ。


「よし、リコ。


まずは実験的に一人召喚してみよう」


〜〜〜〜〜


リコと最初に出会った、少し開けた平らな場所。


せっせと地面に魔法陣を書くリコを眺める俺は、となりに座るライオン姉妹の妹に他愛ない会話をしていた。

出かける直前に起きてきた彼女は、何か楽しそうと言い付いてきたのだ。


「リコさんがハルくんを召喚ねぇ…」


「まぁ俺も信じられないよ。今でもね」


「んで、今日は何召喚するの?」


「取り敢えず実験も兼ねての召喚だからな…誰が来るかはわからん」


「そんな運任せな…」


ほんと、運任せだよなぁ。


暫くして準備を終えたリコが戻ってきた。


「それじゃ、「サモンドール」に釘を刺してっと」


リコは躊躇いなく、鋭い釘を藁人形の腹部に刺しこむ。


俺の故郷じゃなかなか怖い行為なんだけどな、それ。


「それじゃ、はじめます」


リコはカバンから幾つかの小瓶を取り出し、釘の貫通した藁人形の横に並べた。

続けて、到底人の言葉とは思えない…とゆうか、単純に俺が聞き取れないだけかも知れない、意味不明な言葉を呟いた。


淡く魔法陣が輝き出し、その光が強くなると同時に藁人形と小瓶がひとりでに炎に包まれる。


緋那を召喚した時とほとんど同じ光景だ。


そして、魔法陣の光が一瞬強まると、

そこに影が現れた。


フードを深々と被り顔は見えないが、

立ち上がれば身長が2mは有りそうな屈強な人間がどっかりと座っていた。

腹部に釘を指していたから男なのだろう。


「此処は…」


やはり男のようだ。

やけに低く、それでいて響く強い声だ。


俺は前に出て声をかけた。


「初めまして。俺は古泉 春渡。

突然召喚してすまない」


「コイズミ…ハルト?

まぁいい。

此処は何処だ?私は王都の地下に幽閉されていたはずだが?」


「幽閉?」


幽閉されていたと言うには、装備や服はしっかりと着ている。


「ああ、ついさっきな。

私が人の姿を借りた悪魔だと言う理由でな」


人の姿を借りた悪魔。

なんとも、理不尽な理由で捕まったんだな。


…ん?

待てよ?てことは?


「君の…顔を見せてくれないか?」


フードの影で見えない目が、俺を睨んだ気がした。

だが、その視線はすぐに俺ではなく、その少し後ろのコルテラに向いた。


「・・・いいだろう」


数秒の思慮の後、男はフードを脱いだ。


その顔は白い大きな犬…いや、狼?

どちらにせよ人間の面影はなく、完全に獣だった。


「人狼…?」


「ウルフェニアンだ。あんな化物と一緒にするな」


何が違うんだか…まぁ反発してくるってことは相当違うんだろう。


「ごめん。えっと…名前は?」


「グウェナ・クロスロードだ。


・・・てか、やっぱ驚かねぇか」


「驚く?」


「俺の国じゃヒューマンズが世界の9.5割を支配してる。

さっき召喚って言ったな?

てことは、少なくともここは俺がいた国じゃねぇんだろ?

それに、私の常識ではヒューマンズとそれ以外の種族が普通に一緒にいるなんて、まずあり得ない。

つまりここは、私の常識の外の世界・・・異世界ってところか?」


これは、当たりを引いたかも知れない!!

一瞬で自分の状況を見極め答えにたどり着く頭脳。

そして一目でわかる、死線をくぐった経験のある体躯。


「その通りだよグウェナ。


ここは異世界だ。

まぁ…俺もほんとは異世界から召喚されたんだけど、わけあって、このリコを新王にするために戦力を集めてるんだ」


「新王…?なんのために?」


俺から言うのは野暮だろう…。

俺はリコを見た。


リコは一瞬戸惑ったが、すぐに落ち着き、グウェナに力強く言い放つ。


「亜人の権利を、獲得するために」


「・・・」


グウェナは、無言で俺に視線を戻した。


「・・・それでコイズミ ハルト。お前はその参謀といったところかな。


なるほど。


異論はない。手を貸そう」


グウェナがその場を立ち上がり、力強く俺の肩を叩いた。


・・・悪い気はしないけど、めっちゃ痛い!

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