だがしかし!!
太陽がてっぺんに辿り着く少し前に、俺は目を覚ました。
日の出の少し前にリコの家に到着した俺たちは、バステラにコルテラを保護できた事を報告し、
泣きわめいて感謝する彼女をなだめつつ、
日の出と同時に眠りについたのだった。
「さて、取り掛かるか!」
「開始」
サフラの指示の下、俺、リコ、緋那、バステラ、コルテラは、拠点となる建物の建築を始めた。
バステラとコルテラと緋那の3人は近場の木を伐採し、土地を広げつつ材木を確保していき、
リコが魔法で材木を等間隔に切り出しつつ、
サフラが計算し微調整する。
俺は、指示通りに材木を組み立てていく。
最初こそ、組み立ては俺1人だった為にかなりへばった。
そりゃゲーム好きのオタクに体力があるわけないじゃないの?
それに今朝まで歩きっぱなしだったんだから!
ともあれ、
予定通りに土地を広げ終わった伐採係の3人も、途中から組み立てに加勢してくれた為、そこからの拠点完成は早かった。
元々のリコの小屋とは比べものにならない、しっかりとした「家」は、日が沈む頃には、何とか屋根を貼るところまでは完成した。
正直ここまでの短時間でこんな物が出来るとは思っていなかった。
サフラの設計した拠点は、基礎がしっかりしており、余程のことがない限り壊れないであろう事は、素人目にも分かるくらいで、
なおかつ、組み立ては簡単。
扉の建てつけもしっかり計算され調整も行われているので、「建て付けが悪くて動きに難がある」「軋んだ音が鳴る」などといった事もない。
「家具、装飾品、諸々、未作成」
「それでも充分だよ。あのボロ小屋よりは全然いい」
「ひどいですよ、ハルト様!!アレでも私の我が家なんですからぁ!!」
拠点の横にちんまりと立っている小屋を指差しながらリコは半泣きである。
そう。
リコの懇願により、元の小屋は取り壊さずに置いてある。
これからは書庫として利用するらしいが…コイツ拠点にも書庫作れとか言ってなかったか?
まだ本が増える予定なのか…!?
「これが我らの城となるのかぁ…!!
何というか…こう、心が躍るようだ!!」
異世界サムライガールが目をキラキラさせている。
「ま、確かにウチとコルテラだけじゃコレは作れなかったなぁ〜」
「姉さんの言う通りだよ!」
この姉妹は何とゆうか、ライオンの雄と雌みたいだなぁ…。
〜〜〜〜〜
新たに完成した拠点の一室。
俺がサフラに依頼して作って貰った広めの部屋…つまり「会議室」である。
リコの小屋の奥の奥、本棚の隙間に眠っていた黒板が壁に掛けられている他、
拠点完成後に余った木材で作った簡素な椅子が人数分と、教卓のような台があるだけなので、
「会議室」と言うよりは「教室」といった方が見た目は合っている気がするが…。
「それじゃぁ第一回作戦会議を始めまぁ〜す」
教卓(便宜上そう呼ぼう…)の前に立った俺がそう言うと、「はい!!」と力強く緋那だけが返事をした。
「んじゃ、まず…初戦の相手、グルミエーラ卿についてだ。
結論、グルミエーラ卿の邸宅には乗り込んでいないので、ヤツの戦力についての情報は聞き出せなかったけど、
その点はコルテラが情報を持っているらしいので、
それを開示してもらってから考えるって事で。
それと、
現状の人数だとまだ戦力が足りない気がするんだが…」
「ウチらだけじゃ不安だってのかよ!」
バステラが噛み付くような勢いで声を上げた。
「率直に言えばそうだ。不安でしょうがない。
なにせ、相手は既に権力も財力も充分なヤツだ。
俺らの勢力を舐めてかかってくる可能性もあるが、
逆に完膚なきまでに潰しにくる可能性もある。
戦争は常に最悪の結果を考えて行動しないと足元をすくわれるんだぞ」
そう。
幾度となく見てきたんだよ。舐めプするゲーマーはひょんな事でボロボロに負ける事があるんだ。
それに今回俺らは「舐めプされる側」だ。
ギリギリまで戦力の増強を考えるべきだろう。
「な、なんだよ…そんな真剣な目しやがって」
バステラが小声で何か言いながら、少し肩をすくめて椅子に座り直した。
「戦力について考えるために、まずコルテラ。情報を教えてくれないか?」
そう言うと、バステラの隣に座るコルテラが「はいは〜い」と立ち上がり、俺の横に立った。
「まず、グルミエーラが初戦で投入する自軍は約20人の精鋭部隊。
グルミエーラ邸を守る近衛兵と、領地を巡回している遊撃兵の中で優れている20人を投入するんだって。
更に、亜人種の傭兵を10人ほど雇うのも確定してる。
どうやら主力はこの傭兵達で、極力自軍の消耗は避けようとしているみたい」
俺は会議が始まる数分前に聞いていたが、
最初聞いたときは、ちょうど今のリコの様な表情になった気がする。
総数約30人。
一般的な「模擬戦争」の三倍の人数で戦うつもりらしい。
ただ実質的には、傭兵を主に動かし、取り零しを自軍の精鋭が片付けると言った、
作戦とも言えない様な愚策を考えていそうだ。
対して俺らは、
直接戦闘力になるのはせいぜいライオン姉妹と緋那くらいだろう。
サフラとリコは魔法が使えるが、
サフラは魔法より装備開発とか、そう言う技術支援が得意だと言っていたし、
リコの魔法は攻撃と言うよりバフ特化らしい。
となると…
現状考えられる作戦は、
サフラが残りの日数で3人分の装備を開発し、
戦闘時にはリコがバフスキルで3人を支援…とゆうことになる。
だが、それは定石すぎる上に、緋那、バステラ、コルテラへの負担がデカイ。
3人同時じゃなく、2人が戦闘中の時1人は休息と言うのもアリかも知れないが、
30人を制圧するにはかなりの時間がかかるし、そもそも無謀だ。
「しかし、どうも引っかかるのは、なんで雇った傭兵が「亜人種」なんだ?
純人の傭兵もいるはずなのに・・・」
「あぁそれはね、リコさんが亜人種だからだってさ。
亜人種の人権を訴えてる者に亜人種をぶつければ、少なからず戦意が落ちるだろうって」
「うわぁ〜やなやつだな」
「それで、勢いが弱まった所を自軍の兵で掃討するんだって」
なるほど、掃討ねぇ…。
純人至上主義な方が亜人種の傭兵を雇う…。
亜人種に亜人種をぶつける…。
掃討…。
模擬戦争・・・戦争。
「まさかとは思うが…」
緋那が青ざめた顔で俺を見た。
おそらく行き着いた考えが一緒だったんだろう。
まぁよくある話だよな…。
「多分・・・グルミエーラ卿は、傭兵諸共俺たちを倒す気だな」
「こうしては居れぬ!すぐにその傭兵達に知らせて…」
「待て!緋那!!
今言っても一切意味がない!
傭兵は金で買われた兵士だ!
俺らが言って、そうですか、と鵜呑みにする様なヤツはいないだろう!」
「だがしかし!!」
「緋那、落ち着け。
裏切りという行為に対するお前の気持ちが分からないわけじゃないが、今はまだ、動く時じゃないだろ」
緋那の眉がピクリと動いた。
やっぱりな。
コイツは仲間に裏切られ、濡れ衣を着せられ、やがて殺されるその時に、リコにこの世界に召喚され命拾いした。
おそらく、この中で一番「裏切り行為」に敏感なんだろう。
はぁ〜…相変わらず、リコは半泣きで俺と緋那を交互に見てるし、
サフラも、無表情で黒板を見続けているし。
緋那も落ち着くように深呼吸して、椅子に座った。
それにしても、
この考えが当たっているとしたら相当厄介・・・
いや、待てよ?
これは利用できるかも知れない・・・。
俺は脳裏にすぐさまゲームやマンガで得た知識を展開していく。
時間にして10秒前後。
粗方の動きは構築できた。
多分この作戦はサフラとリコ次第で傾きが変わる作戦だな。