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まさか…とは、思いますけどぉ…

グルミエーラ領グルミエーラ邸


「ふん!デミエルフなんぞの小娘を、この崇高な人類の人類による人類の為の国の王にしてたまるか!!」


領地を収めるサンダルフォン・グルミエーラ卿は、手元に置いてあったワイングラスを無造作に投げ放った。

その先には、布一枚を体に巻き手足に枷を付けた亜人種が4名立っており、

その中で右端に立っていたブロンドカラーのボブヘアーをした猫耳の少女は、運悪くワイングラスが頭に直撃した。

ガラスの破砕音が鳴り響く。

少女は頭から、グラスに残っていたワインと血を流しながら、フラフラと直立し続けていた。


「全く…亜人種などが少量でもこの国に残っている事自体が気に食わんと言うのに!!


まぁいい。

このワタシが王となった暁には、全ての亜人種を掃討してやる。

従う者は隷属に、抗う者は殺害する!」


グルミエーラ卿のそばに立っていた執事の男が物静かに言った。


「初戦に投入するご予定の傭兵ですが、ご命令通りに亜人種のみを幾人か選定しております。

おそらく、2〜3日ほどでこちらに到着するかと思われます」


「よし。その他の兵はどうだ?」


「はい。元から選抜していた兵達は、連日訓練に励んでおります。

とはいえ、ベテランの兵からは「何故傭兵を…しかも亜人種の傭兵を雇うのか?」という不満の声が出ております」


グルミエーラ卿はニヤリと笑い、執事の方を向いた。


「単純な事だ。

相手は「亜人種」だからな。


こっちが「亜人種」の兵士を投入することによって、否が応でも「亜人種同士」で戦わなければならなくなるだろう?

仮にも「亜人種の人権」などを尊重するなどとほざく新王様だからなぁ〜。

少なからず戦闘の意思が削がれ、攻撃の勢いが減るだろう。


そこを正規兵達で一掃するのだ。

まさに!完璧な作戦!!!

ふふ…ふふふ…ふはははははははははは!!!!


いやぁ〜!ほんっとうに!自分自身の戦の才能が怖いわ!ふはははははは!!」


得意げに話すグルミエーラ卿の顔は笑顔で歪み、その顔を見た、手足に枷を付けた4人の亜人種は小さく震えた。


〜〜〜〜〜


「ウチはテメェらに全面的に強力することに決めた」


突然バステラが、こちらとしてはありがたい決意を表明した。


「バ、バステラ殿?何故急にそこまで強く決意してくれたのか?」


先ほどまでの、仕方なく強力するといった雰囲気から、余りに一変したため緋那もかなり困惑している様だ。


「グルミエーラってのは「サンダルフォン・グルミエーラ」の事だろ?

あのクズは、裏で孤児の亜人種を誘拐し、奴隷として売りさばく仕事を請け負ってるんだよ!」


初めて俺たちを見たバステラもそんな事を言ってたな…。


「それにしても、それだけ激昂するのは何故(なにゆえ)に…」


「…身内がグルミエーラ卿に捕まった。とかそんなもんかな?」


緋那のセリフを遮り、俺はバステラに確認した。

バステラの目は驚いた様に見開かれた。

だが、すぐに先ほどまでのキリッとした眼差しに戻った。


「…そうだ。双子の妹がな。

先週の話だから、まだ売り飛ばされてはいねぇだろうけど」


なるほど…アニメやらでよくあるヤツだ。

身内が敵に捕まってるから助けたい、って理由に仲間に加わる系のヤツ。


なるほど…イベント発生頻度高いな…この世界。


俺は1つ、認識を改める為にもリコに小声で質問をした。


「少し聞きたいんだが、

この世界は奴隷についてどんな認識なんだ?」


「奴隷ですか?

一応公には認可されては居ません。

ただしっかり禁止しているわけでもないとゆう状態です。


正直なところ、日々の生活が確保されていない貧しい生活を続けるより、少しでも良い家に、奴隷として飼われる方が、安定した食事と寝床を得られるという利点がありますから。


ですが、それは自ら進んで奴隷となる場合の話で、

奴隷にするために孤児を拉致誘拐するのは単純に犯罪ですし、

人身売買とゆう点で、奴隷を売るのも犯罪です」


「なるほどな…」


俺はすぐさま頭の中の知識を駆け巡った。

だいたい20秒くらいだろうか。


後ろの方では、無駄に頭に血が上り始めたバステラをサフラと緋那がなだめているが、それはとりあえず後だ。


「よし!思いついた」


「な、何をですか?」


「リコ。お前は新しい「王様」になりたいんだよな?」


「は、はい」


リコはどこか不安げな顔をしてこちらを見ている。


「王様は隣国との交渉術が必要だからなぁ」


「まさか…とは、思いますけどぉ…」


何か察したリコは涙目でこちらを見ている。


なかまにしますか?

はい

いいえ


とゆう表示が出たら、真っ先に「はい」を選ぶなこりゃ。


「グルミエーラ卿のとこに行くぞ」


「ふぇえええ!!??」


〜〜〜〜〜


「本当に行くんですかぁ…?」


「行くに決まってるだろ」


「リー、文句、多い」


バステラとサフラの協力を得て3日後。

俺、リコ、サフラは、グルミエーラ卿の邸宅に向かってとぼとぼと歩いていた。


この3日の内で、バステラとサフラのことは大体分かってきた。


猫科の生物の特性を持つ亜人種「ヒューマキャット」であるバステラは、その中でも「ライオン」に近しい能力を持っている様だった。

まぁ雰囲気と言い、見た目と言い、なんかそんな感じしたけどね。

そしてサフラの方は、鍛冶や錬金術を得意とする亜人種「ドワーフ」であり、単純な筋力と頑丈さに至ってはバステラよりも優れていた。

低身長なのは「ドワーフ」特有のものである。


なので、模擬戦争においては、2人とも緋那と共に直接的な攻撃手段となってもらう予定だが、もしもあと1人程戦力が増えれば、

サフラにはその知識と技術を活用して貰うため、後方支援について貰うとゆう事で、俺たちは話をまとめていた。


今回、リコと共にグルミエーラ邸に行くメンツにサフラを選んだのは、その知識や冷静さも必要だと感じたからだ。


「サルファウスの森」から出発して、グルミエーラ領に入る頃にはすっかり日は沈んでいた。


「ルト、野営、確実」


「そうだな」


「疲れましたぁ〜」


目的地のグルミエーラ邸宅は、先の方にある少し小高い丘の上に見えているものの、

邸宅の周りは小規模ながら森がありるため、日も沈んだこの時間から行くのは、不審かつ危険な為、俺はテントを組み立て始めた。


このテントは、サフラの技術と、俺の記憶、リコが持っていた本を元に作ったオリジナルのものではあるが、まぁ特に何か機能があるわけではない、ただのテントだ。


テントを立てる位置も舗装された道からはズレた、大きな岩場の影にした。


10分ほどかけて、テントは組みあがり、その間にリコが用意してくれた夕飯を食べる事にした。


「それにしてもハルト様。交渉っていったい何をするつもりですか?」


「いやまぁ、バステラの妹さんがまだ居るかどうかの確認と、まぁ出来ればその身柄の保証をしてもらいにね」


「可能性、低い。奴隷、売買、裏の世界、盛ん」


なるほどなぁ…まぁ後は俺の話術次第ってわけか…。

最悪グルミエーラ卿に捕まるって可能性もあるよなぁ…。


「俺の考えを言うとだな、

グルミエーラ卿は純人博愛主義なんだったら、俺の話はまだ聞いてもらえると思うんだ。

だから、俺が奴隷の売買や孤児の拉致誘拐を摘発すると揺すれば・・・」


そこまで行った時、リコが急に俺のセリフを遮った。


「静かに!

何か…来ます」


数秒耳をすませたリコは、急いで焚き火を消した。


確かに耳をすませてみると、遠くの方から声が聞こえる。

何を言っているかまでは分からないが、大声だ。


「・・・き・・・!は・・・が・・・!!」


「なんて言ってんだ…?」


「「どこに行きやがった」「はやく探しだせ」と言っている様ですね」


・・・リコってめっちや耳がいいのか?

とにかく、誰かが誰かを探しているのか…しかも雰囲気や言葉から察するに、探されてる方は逃げているのだろう。

犯罪者とかは、マジでやめてくれよ…。


「ん?!ちょっと待って下さい…?」


リコが首を傾げた。


「何か近づいて…え?!!」


勢いよく振り向いたリコの背後、岩場の影からものすごいスピードで何かが飛び出して来た。


「ふぇ!?」


「きゃぁ!!??」


俺とサフラは、とりあえず目を逸らした。

岩場から飛び出して来た何かとリコが、盛大に激突したのが見てられなかった為だ…。


「あたたた…」


飛び出して来たのは人の様だった。

亜人種…だよな?猫耳だし。

ん?猫耳…?


「だ、大丈夫か…?」


とりあえず手を差し伸べる。


「ヒッ!?・・・だ、誰?」


いや、それは俺のセリフだよ…。

けどこの怯え様…それと服、だよな?これは?

服と言うにはあまりに簡素な…とゆうか布をただ巻いただけみたいな格好。

まぁ、まずは怖がらせないのが先決かな。


「俺はハルト。あと君の下に居るのがリコ」


「下?・・・うわぁ!ごめん!!」


「ら、らいじょぉぶれす…」


絶対大丈夫じゃねぇだろ、それ。


「君は?」


「ぼ、僕はコルテラ。えっとその…ひゅ、ヒューマ…キャット…」


「おう。見て分かる。

あと、君のお姉さんって「バステラ」?」


とりあえず、猫耳で、奴隷っぽいズタボロな服を着てるから、まさかとは思うが、本当に少しの希望を兼ねて、冗談交じりに…


「姉さんを知ってるんですか!!??」


ビンゴだあ・・・。

イベント回収早いよ・・・。

こんな展開早いラノベなんか、俺もあんま見たことねぇよ・・・。


「あ、あぁ…むしろバステラ由来でここに来たんだよね…」


なんか一気にやる気失せたわぁ…俺の巧妙な話術でグルミエーラ卿を黙らせて戦争そのものを優位に持っていく算段だったのに…。

口実の方が現れてしまった…。


これは、もう本格的に模擬戦争でケリを付けるっきゃないのか…。


「コルテラ、ご無沙汰」


「え!サフラ!じゃあ姉さんも!?」


嬉々とした表情でコルテラはキョロキョロしたが、サフラがそれを静止した。

そっか、サフラとコルテラは知り合いなのか。


「バステラ、いない。リコ、家、いる」


「そ、そうなんだ」


ちょっと残念そうだ。

コルテラは、バステラと似た色のブロンドヘアーだったが、バステラのゴワゴワでウェーブのかかったボリュームのある髪型とは違い、ストレートなショートボブだ。

双子と言っていたが、毛質は似てないのだろうか?

とゆうか…美少女なのには変わりないが、バステラと全く同じ顔という感じではない上に、バステラの様に豊満な胸はない。

二卵性の双子って事かな。


とはいえ、領地に着いたその日に元々の「グルミエーラ卿へ会う」と言う目的が不必要になってしまった。

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