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ひぅ!ごめんなさあい!!

「そもそも召喚した人を勢力として数えるのは()いのか?」


晩御飯を食べている際、不意に緋那が疑問をぶつけてきた。

そういえば…そうだ。


「その点については問題ありません。

召喚獣を使役する方も居るので、召喚した方を戦力に加えるのは問題ないんです」


「待て、召喚獣を使役する?」


だとすると、人数故の戦力差を覆す相手が現れなくもないわけだ…。

これは今後に注意が必要かな…。


「それで、リコ。どうだった?」


俺は若干の懸念を抑えつつ、リコが持ち帰った情報を伺った。

リコは緋那の手当てを完了してすぐに、この「サルファウスの森」に一番近い大きめの街「ナグルカウラ」に足を運んでいた。

これは俺がリコに頼んだ事で、近くの街での情報収集が必要だったからだ。

ゲーム、強いては戦略ゲームで情報収集は要だからな。


「はい。

やはり既に対戦表が出ていました。


私たちの初戦は「サンダルフォン・グルミエーラ卿」です。

根っからの純人種博愛主義で…どうやら私を消す為に根回しをして、初戦の相手になった様なんです」


なるほど、向こうもリコの勢力が少ないのを分かった上で先に潰しに来たわけだ。

にしても、マッチングを任意に出来るほどの権力者か…だとすれば、そんな相手を倒したって結果は、大いに活用出来る。


純人種博愛主義のグルミエーラ卿を鮮やかに倒す事が出来れば、亜人種も俺らに手を貸しやすいだろうからな。


さて…


「問題はその勢力だな」


俺の思っていた事を緋那が代弁してくれた。


「はい。

グルミエーラ卿自体、それなりに権力や財力が有るらしいので初戦は10人かそれ以上の人数を揃えてくる可能性は充分あります。

ただ、領地における税の徴収額や本人の性格から、心酔するような支持者はまずいないだろう、とも聞きました」


「なるほど、絵に描いたような「嫌なヤツ」って事か」


「なので、勢力が10人を超えている様なら、おそらくそれは雇われた人間かと思わる、とか」


長い黒髪を高い位置でポニーテールの様に結った侍少女がこちらを向いた。


「ハルト殿。敵が傭兵を雇っているとするなら、不利になる可能性が高い。

何せ、傭兵とはすなわち「戦いを生業(なりわい)」にしている者達だ。

生半可な戦力では少数精鋭と謳っても、鼻で笑われる」


「だよなぁ〜。「召喚士シリーズ」にもあったわ…「傭兵制度」。アレ厄介なんだよなぁ」


俺が元の世界で熱中していたゲーム「召喚士シリーズ」の第5作目「召喚士と影の軍師」で初めて出たシステムに、「傭兵制度」と言うのがあった。

通常の召喚獣は召喚士の魔力を消費して手に入れるのに対し、

傭兵は見合った金を払う事により、期限付きで戦力に加える事が出来る上に、中の上くらいの召喚獣と張り合える戦力を持ってたんだよなぁ。

まぁ強すぎる上に「召喚士シリーズ」なのに「傭兵」ってどうなの?って事になり、次々回作では無くなった制度だったけど。


「ハルト様?」


「え?ああ!ごめん何でもない!」


いかん。ボーッとしてた。


「取り敢えず、私としては召喚が割と手軽にできる様になったわけですので、

明日にはあと3人くらいは召喚しようと思っているのですが…」


「いや、召喚で戦力を整えるのはギリギリまで控えよう」


俺はリコの意見を静止した。


「え?!どうしてですか?!」


「まず、リコの召喚がランダム過ぎる。

緋那の場合は、まぁ結果的に彼女を救う事になったから良かったのかも知れないけど、俺の場合はゲーム出来なくなったんだからな!

召喚した相手を困らせるのはさすがにダメだと思うし、それで怒ってコッチに攻撃して来る様なヤツだったらどうする?」


「うむ。ハルト殿の意見は一理ある」


緋那も頷いている。


「時にハルト殿。そうは言っても、この戦力差を残り60()程で整えるのは、至難だぞ」


「分かってるさ。だから禁止はしない。ギリギリまでは待とうって事だ。

言うなればあと2ヶ月近くあるんだからな…まだ時間はあるさ」


正直手があるわけじゃないが…極力リスクは避けたいんだよなぁ…。

俺はリコの方を向いた。


「なぁ、亜人種に知り合いは居ないか?

出来れば戦力になりそうな相手が良いんだけど」


「亜人種で、ですか?


うぅ〜ん…直接の知り合いはいないですねぇ…」


「そうか…」


「でも、亜人種の孤児だけが集まる集落が、この森を抜けた所にある「ダンクル」という街の隅にあるらしいですが…


さすがに子供を戦力にするのは…」


「まぁな。

でも、孤児だけで集落を作れるって事は、それなりに歳がいった…少なくとも俺らと同年代のヤツが居て、そいつがリーダーとして機能してるはずだ。

そいつが手を貸してくれそうなら、良いと思うんだがな」


緋那がなるほど、という様に頷き、

リコは納得という風な表情を見せた。


「それじゃ、早速明日にでも行ってみるかな」


〜〜〜〜〜


やっぱり背中が痛い…。


リコの小屋は余りに狭い。

なので俺はリコから毛布を借りて外で寝ている。

緋那は、


「野営は慣れている!」


と言って、近くの木に寄りかかり、座ったまま寝ているが、

流石に俺は慣れてない。


ああ…ふかふかのベッドが恋しい…。


〜〜〜


「ダンクル」までの道のりは、険しくはないものの若干遠く、

日の出後に朝食をとり、すぐに出発したものの、到着した時には既に太陽は天頂を突破し、それなりに傾いていた。


「そろそろ集落が見えてきますよ」


リコが呟いて数分。


街の見た目が一気に様変わりした。

レンガや石でできていた家々が急に無くなり、ボロボロの木や布で、かろうじて家の様に見立てている物が密集した場所となっていた。


「ここが…亜人種の…」


「なんと・・・リコ殿。亜人種とやらの暮らしは、皆こんな物なのか?!」


「いえ…ここはどちらかと言えばひどい方です。孤児だけしかいないと言うのもありますが。


でも、これを見てお二人の様な反応をする純人種の方は、この国では初めて見ました。


誰も、この状況を気にしませんから…」


思っていたよりもひどいものだった。

ゲームやマンガ、アニメで、人間と亜人の軋轢を題材にしたものは幾つかあったし、読んだり見た事もある。

けど、実際に目の当たりにするのとでは…全く違った。

俺の想像は甘すぎた。


ふと、視線を感じた方へ目を向けた。


少し離れた所にある、テントの様に貼られた布の隙間から、誰かがジッとこちらを見ていた。


だいたい…5〜6歳くらいだろうか?


そして、その子が亜人種である事はすぐに分かった。

隙間から見えている手が緑色の鱗に覆われ、爪も鋭く尖っていたのだ。


「テメェら!なんか用かよ!」


「ああ…イベント発生だな…」


突如大きな声を後ろからかけられた。

振り向くと、そこにはゴワゴワのブロンドヘアーに大きな猫耳が生えているスラッとした女の子と

その横でちょこんと立っているかなり身長の低い子供がいた。


声を掛けてきたのは猫耳の方だった。


「え、えぇっと!あの!」


リコは今にも泣きそうな目でアタフタしているではないですか…大丈夫か、この新王立候補者…。


俺が一歩前に出る。


「君たちが、ここのリーダーか?」


「…そうだよ。純人がなんの様だ」


これはガードが硬そうだな…。


「単刀直入に言う。

俺たちに力を貸して欲しい」


俺は精一杯の誠意を見せる為に、頭を深々と下げた。

俺に倣い、リコと緋那も頭を下げる。


「な、なんだよいったい…!?

頭を下げたからって!どうせそうやって、ウチらの内の何人かをまた奴隷として売り飛ばすつもりだろう!!」


くっそ!

純人博愛主義とはよく言ったものだ。

亜人種は人としても見てないってことかよ!

亜人種の孤児を奴隷として売っただと…!!

リコの進もうとしてる道って、かなり厳しいんじゃないのか!?


「頭、上げて」


声を聞いて、ゆっくり頭を上げた。

喋ったのは…この小さい子?


「僕、サフラ。オマエ、名前、言え」


やっぱり小さい子の方が喋っていた。


「ああ、俺はハルトだ。よろしく」


「ルト、よろしく」


…微妙に字が足りてない。


「ルト、僕達、借りたい。何故、話、聞かせて」


〜〜〜〜〜


猫耳少女とサフラの後について行った所には、他のボロボロの家よりはまだ家らしい家があった。

ただ、それがリコの家に似ていたのは、なんとも言えない…。


中は特にこれと言ったものもなく、ただ布が2枚敷かれており、恐らくこの2人か寝ているのだろうと言うことしか見て取れなかった。


「はぁ〜〜〜」


どっかりと胡座をかいた猫耳少女が大きな溜息を吐いた。


「サフラが話を聞くってなら、テメェらの話を聞いてやる。

ウチはバステラだ。ここでサフラと一緒にみんなをまとめてる。


それで、力を貸せってのは、どういう意味だ?」


「そのままの意味だ。

こっちのリコのは、今回の新王選定にでる立候補者で、俺はその…参謀役だ」


「新王に立候補した?テメェが??」


猫耳少女…バステラは見るからに怪しんでいる様だった。


「テメェ…ハーフエル…いや「デミエルフ」だろ??同じ亜人じゃねぇか。よく立候補したな?」


「デミエルフ」…?

後で聞いとこう。


「リコは君たちと同じ、元孤児で亜人種が迫害されているこの国を変えようとしてるんだ。

でも、まだ戦力は俺とコッチの緋那だけだ。


そこで、君たちに力を貸して欲しいんだ」


「…それは「模擬戦争」でコマになれって意味か?」


低く唸る様にバステラが言った。

そのゴワゴワのブロンドヘアーも相まって、獅子に睨みつけられている気がする。


だが…ここで引くわけには行かない…!


「メリットがない…そう思ってるんだろ?」


俺の一言に、バステラの耳がピクリと動いた。


「今すぐ提供出来るメリットや報酬は、正直言って無い。ゼロだ。


だが、長期的に考えてみろ。

君たちが手を貸したリコが新王になれば、この集落で日々生きるのもやっとと言うような小さな子達を、今よりも良い環境で生活させてやる事が出来るんだぞ」


バステラは悩んでいるようだった。

リコが王になると、そのマニフェスト通りなら純人博愛主義は無くならずとも薄まるはずだ。

それを考慮すれば、一蹴する程悪い話では無いはずだ。


加えて、バステラと同年代のリコが、亜人種の為に立ち上がろうとしているのを目の当たりにして、自分も何か変えたいと思ってくれれば…!


「でも、」


サフラが口を開いた。


「報酬、遅い。

僕達、毎日、大変。いつ、死ぬ、不明。

みんな、弱い。」


サフラの言う通りだった。

日々を過ごすのもやっとな子ども達は、いつ死ぬかもわからない。

何ヶ月も先に支払われる、確定でも無い報酬は割に合わないと言っているのだ。


「あ!」


リコが何かを思い出したように声を上げた。


「軍資金…」


「「「「え?」」」」


その場の全員が、頭の上にハテナを浮かべていた。


「そうです!軍資金ですよ!!


「模擬戦争」に勝つ毎に、軍資金が貰えるんです。

欠けてしまった戦力の補助や増強のための資金なんですが、

新王に立候補する方って大概既にそれなりの権力と財力を持っているので、ほとんど皆さんお小遣いみたいな扱いなので失念していました!!」


「リコそれ早く言えよ!!!」


「ひぅ!ごめんなさあい!!」


リコは泣きながらも話をして続けた。


「な、なのでぇ!力を貸して下されば、そのしっかりと報酬は払えますとぉ」


軍資金があるのも驚きだが、その一部を払えるって…いったいどれだけの額が貰えるのか不明なのに…。

だが、現状ファインプレイだ。


額が少なかったとしても、目先の報酬を渡し誠意がある事を示せる。


バステラはなおもうんうん唸って頭を抱えている。

が、サフラがその肩をチョンチョンと突いた。


「なんだよサフラ」


「僕、力、貸す。バステラ、貸す?」


このサフラって子は思ったよりも思慮があるのだろうか。

無表情で、小さな身体で、片言。

わかりづらいな…。


「サフラがやるなら、ウチもやるって!!」


この2人は一心同体か何か?

でもまぁ、力を借りれるとなるとそれは心強い。


「それじゃ交渉成立って事で良いのかな?」


俺は右手を差し出し。


「ああぁ…ちぃっとばかり釈然としねぇけど、チビ達の為だ。

それにサフラが乗り気らしいしな、手を貸してやる」


バステラは文句を若干こぼしつつ、俺の差し出した右手をしっかりと握り返してくれた。


「ありがとう。

約束する。俺は君たちを絶対に死なせないさ」


「ハルトつったか?テメェ、その言葉忘れんなよ」


「当たり前だバカ」


俺は笑いながら返事をした。

そしてリコと緋那の方を向いた。


「よし、もう少し戦力が欲しいところだけど、

当面は大丈夫だろう。

後はグルミエーラ卿の戦力が分かれば良いんだが…あと傭兵も確認したいとこだな…」


そこまで言って、急に背後に悪寒を感じた。

恐る恐る振り向くと、


先ほどとは比べ物にならない程に怒りのオーラをまとったバステラがいた。

完全にその見た目は荒ぶる獅子であった。


「テメェ今、グルミエーラつったか?」

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