すぐ薬草持ってきます!!
「まさか…そんな事って…!」
リコの家…とゆうか小屋の前にて、リコは再度召喚を行っていた。
俺はそれを見て、やっと自分が異世界に来た実感を持ち始めていた。
地面に書いた魔法陣が輝き、その中心にあった藁人形がひとりでに燃えた。
やっぱりな。
イネ科の植物を乾燥させたものなら良いわけだ。
リコに命じ、小屋の横に積まれてあった藁で、例の召喚用呪術道具「サモンドール」を作ってもらった。
実験も兼ねて、本にあった「アシック」とやらを使わない、低コスト「サモンドール」で召喚をしてみたところ…。
「ぐ…くぅ…」
・・・ああ、低コストだったのがダメなのだろうか。
召喚されたのは、傷だらけでボロボロの、左肩に矢が刺さって血を流し、今にも死んでしまいそうな女の子だった。
「ハルト様!召喚!召喚ができました!!!」
「いや、それよりまずこの子の手当てだろ!?」
「は!そうでした!!すぐ薬草持ってきます!!」
慌ててリコは小屋の中に入っていった。
「おい、君大丈夫か?」
たった今召喚された女の子に駆け寄り声をかける。
「こ、ここは…我は今、雑兵に斬られる所だったと思ったのだが…」
雑兵に斬られるって…。
どんなとこから召喚したんだよ、リコのやつ…。
「取り敢えず今は安心しろ、すぐにリコが薬草を持ってきて治療してやるから」
「か、たじけ…なぃ…」
張り巡らせていた緊張の糸が切れたのか、少女は気を失ってしまった。
ちょうどそこにリコが薬草を持って駆け寄ってくる。
「お待たせしました!薬草で…おわぁ!!もう死んじゃいました!!!」
「気絶してるだけだ!早く治療してあげて」
「は、はい!」
〜〜〜〜〜
「…は!!!」
全身至る所を包帯で巻かれた少女は、勢いよく目を覚ました。
少女は辺りを見渡しポツリと呟く。
「ここは…いったい」
「お、気付いたようだな」
俺が小屋に入ると、召喚した少女は半身を起こしてキョロキョロしていた。
「お主は…?」
「俺は…ハルトだ、宜しく。君は?」
「我は天城宮 朱鷺上 緋那と申す者。
天城宮様の精鋭部隊「五色剣」の・・・」
「あぁ、ごめん!ちょっとストップ!」
俺は慌てて緋那の話を止めた。
「すとぷ…?何を言っているか分からないが、人様の話の腰をこうも堂々と折るとは…」
「いや、話を遮ったのは悪かった。けど、この世界じゃ、その「ゴシキノツルギ」?とかあんまり関係ないんだよ…」
「この…世界だと?」
〜〜〜
俺は、
ここが緋那や俺が元いた世界とは違う世界であること、
リコが俺たちを召喚し、緋那の傷を治療した事、
リコが新王立候補者である事、
新王選定は模擬戦争で決めるため戦力が必要な事を、
ざっくりとだが要所は端折ったりせずに伝えた。
〜〜〜
「なんとも…信じられるような話ではないが…」
「正直、俺もまだ半信半疑ってとこだよ」
「…だが、この地に「召喚」されなければ、我は死んでいたかも知れない」
緋那の目が今までの力強いものから、ふと哀しげな目になった。
「…参考までに聞いても良いか?直前までなにがあったのか」
「あぁ・・・「五色剣」の1人が裏切り、君主である天城宮様を討ったのだ。
天城宮様が討たれたと聞き、すぐさま君主の元へ向かった。
だが、それは罠で、
天城宮様を我が討ったとゆう誤報を信じた他の「五色剣」が、我を滅ぼさんと攻めてきたわけだ…。
そして、ロクに応戦も出来ず、利き腕の左肩に矢も受け、満身創痍の所を捜索中の雑兵に見つかり、
斬り伏せられる瞬間、
この地に呼ばれたとゆうわけだ。
・・・かなり大雑把に話してしまったが、我からすればつい先ほどの話をしている様なもので、少なからず辛いのだ。許せ」
哀しい目をした緋那は、その目のまま無理に笑顔を見せた。
「いや、俺の方こそ配慮が出来なくてごめん」
なんとも形容しがたい空気が流れる。
「…それにしても、元の世界へ帰れないとは本当だろうか?」
「あ、ああ。少なくとも俺のいた世界には「召喚」なんてものは無かったからな。
そっちの世界に「召喚」って技術があるなら…」
「あるわけなかろう」
「ですよねぇ…」
一瞬前とはまた違った空気が流れる。
不意に、緋那が意を決した様にその場に立ち上がった。
「ハルト殿と言ったな。我は、リコ殿に仕えようと思う。
まぁそれ以外に道がないとゆうのもあるが、傷の手当をしてもらった上に、ある意味命の恩人とゆう形にもなるわけだからな」
その目は、最初に見た強い眼差しになっていた。
「見るからにハルト殿。お主がリコ殿の勢力の参謀とお見受けする」
「さ、参謀…か。うん悪くない」
「この天城宮 朱鷺上 緋那。存分に使い潰してくれて構わない。
よろしく頼む」
「ありがとう。緋那。こちらこそよろしく頼む」
俺もその場を立ち、緋那と握手を交わす。
かなり幸先は良いと見える。
どう見ても武士とか侍な彼女の事だ。
かなりの戦力になってくれるだろう。
さて、あと3〜4人は必要になってくるし…そろそろリコが大事な情報を持って帰ってくる頃だ。
新王立候補者が出揃ってから100日の準備期間があり、
俺が召喚された時点で、40日は経っていたらしい。
そして今日は42日目。
約3ヶ月の内1ヶ月は経ったわけだ。
あと約2ヶ月。
この間に戦力を整える。
そして初戦を勝つ為に重要な情報の1つを、リコが持ってくるわけだ。
「さぁて…どんなイベントが発生するかな」