表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

再就職

作者: 四季語調

青空が良く見える窓際で僕は一杯の珈琲を片手にある資料を読んでいた。

その資料の内容は就職一覧表だ。様々な職業がずらっと並んでいる。

今日ここにきた理由は新しい就職先を選ぶからだ。

「あなたも新しい就職先を選びにきたんですか?」

いきなり男が喋りかけてきた。

見た目をいうなら、魚だ。しかも、コブダイみたいな。不細工な。

「僕もですねぇ、職を選びにきたんですよ。」

コブダイは独り言のように喋っていた。

「実は僕、前にもここに来たことあるんですよ。」

「しかも、これで10回目ですよ。」

「8回目でようやくいいところにつけたんですけどね、嫌になって辞めちゃいました。」

コブダイは笑いながら言った。

「それで9回目のときは前よりもレベルを下げたところに行ったんです。前いた職場よりも楽だったんですけどね、なんか物足りなくて定年退職したあとにまたここに来ちゃいました。」

コブダイは続けて喋る。

「やっぱり私達は何かをするために生きるんですよ。」

「それが、生きることの目的なんかじゃないなぁって、思うんですよ。」

「あなたは何回目ですか?」

急にコブダイが話をふってきた。

「僕は今日で2回目ですよ。1回目でいきなり重役を任されたんですけどね、僕には荷が重過ぎました。だから辞表も書かずにここに逃げてきましたよ。」

コブダイを見たらとても驚いた顔をしていた。

「もったいない!あなたは千載一遇のチャンスを無駄にしたんですか。」

そんなこと僕が知ったことではない。

すると、もう一人が僕らの話しているところに来た。

七三分けのしかめっ面した感じの悪い男だった。

男は不満そうに話し始めた。

「重役を任されたが社内に敵ばかり作ってしまった。」

「最初はみんなも私を慕っていたよ。」

「でもね、それは最初のうちさ、時が経つにつれてだんだんと敵が増えていくんだ。」

「最終的に部下の不満が爆発して私は退職に追いやられたんだよ。」

「人ってのは無情だな。」

男は悲しそうに呟いた。

「それでも最後まで慕っていた人はいたんですよね?」

コブダイが優しそうに男に尋ねた。

「まあ、いたさ。しかも熱狂的にな。退職直前まで一緒にいたよ。思えば良い部下だったな。」

一息ついたところで男は僕に話しかけた。

「聞けば君はまだ辞表も書かずにここに来たらしいね。今すぐ戻った方がいい。君はまだ若い。夢があるではないか。」

「いきなり重役を任されて戸惑ってしまったらしいね。それはしょうがないことだ、しかし逃げることは誰も良いように思わない。精一杯やることだ。そうすると答えが出てくるさ。」

男にそう言われると僕はなんだかまた戻りたくなってきていた。

またあの仕事をしたくなっていたのだ。

コブダイと男に礼を言ってから、その場所を後にした。

光が見えている。あそこに仕事がある。いつの間にか走っていた。

次は大丈夫だ。上手くやれる。

僕はそう思って走っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ