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生徒会長はお風呂でも揺るがない

お風呂ってあったかくていいよね

白鷺雪乃は冷静である。


 常に。


 例外なく。


 風呂の中でも。


「……白峰」


 言ってしまった。


 湯気の向こうに誰もいないのを確認してから。


「白峰くん」


 心臓が跳ねる。


 誰もいないのに。


 なぜか恥ずかしい。


「白峰悠くん」


 顔が熱い。


 これは湯気のせいではない。


「……悠くん」


 沈んだ。


 肩まで。


 湯の中に。


(無理無理無理無理無理)


 顔まで沈めた。


 五秒。


 十秒。


 十五秒。


 浮上した。


「無理でしょうそんなの……」


 三年間。


 三年間も名前で呼べていないのに。


 いきなり“悠くん”は無理だ。


 段階というものがある。


「白峰」


 よし。


 これは言える。


「白峰くん」


 まだいける。


「白峰悠くん」


 ここまでは大丈夫。


 問題は次だ。


 最大の壁。


「……悠」


 言えた。


 言えたが。


 死にそうだった。


「……悠くん」


 湯船に沈んだ。


 完全に沈んだ。


(無理)


 浮上した。


(絶対無理)


 沈んだ。


(でも呼びたい)


 浮上した。


「……悠くん」


 もう一回言った。


 今度は少しだけ自然だった。


「悠くん」


 もう一回。


「悠くん」


 もう一回。


「悠くん」


 ちょっと楽しくなってきた。


 そのときだった。


 脱衣所から、


 物音がした。


 止まる。


 完全に止まる。


「……」


 静寂。


 そして。


 恐る恐る言う。


「……誰ですか」


 返事がない。


 嫌な予感しかしない。


 ゆっくり立ち上がる。


 タオルを巻く。


 ドアを開ける。


 そして。


 目が合った。


 弟と。


 無言で。


 三秒。


 止まった。


「……」


「……」


 蒼は何も言わなかった。


 本当に何も言わなかった。


 ただ、


 親指を立てた。


「違います!!!!」


 雪乃の叫びが家に響いた。


「違います!!今のは違います!!」


「うん」


「違います!!」


「うん」


「違います!!」


「悠くんって呼んでたね」


「呼んでません!!」


「五回くらい」


「呼んでません!!」


「楽しそうだったね」


「違います!!」


「姉ちゃん」


「何ですか!!」


「変態」


「変態じゃありません!!!!」


 雪乃はタオルのまま逃げた。


 廊下を走った。


 階段を上がった。


 自室に飛び込んだ。


 ドアを閉めた。


 鍵をかけた。


 そして。


 ベッドに倒れ込んだ。


「……終わりました」


 人生が。


 終わった気がした。


 そのとき。


 スマホが震えた。


 画面を見る。


 通知。


『生徒会共有連絡:明日の資料について』


 送信者:


白峰 悠


「……」


 止まる。


 呼吸が止まる。


 心臓が止まる。


 そして小さく呟く。


「……悠くん」


 そのあと、


 枕に顔を埋めた。


どっちが変態だよ!? くん付け、ちゃん付けはむずい

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