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生徒会長は家でも揺るがない

弟欲しい

白鷺雪乃は完璧である。


 少なくとも学校では。


「ただいま」


 玄関で靴を揃える。


 鞄を置く。


 制服を整える。


 姿勢は崩さない。


 習慣は崩さない。


 規律は守る。


「姉ちゃん」


 だが。


「……何ですか」


 家では例外が存在する。


 弟だ。


 中学三年生の白鷺蒼あおい


「今日も白峰先輩と一緒だった?」


「……は?」


 一瞬だけ止まった。


 本当に一瞬だけ。


「なぜその名前が出てくるのですか」


「いやだって姉ちゃんさ」


 蒼は冷蔵庫を開けながら言う。


「“書記、白峰”って寝言で言ってたし」


 雪乃の動きが止まった。


「……言ってません」


「昨日言ってた」


「言ってません」


「一昨日も言ってた」


「言ってません」


「三日前も」


「言ってません」


 完全否定である。


 だが耳が赤い。


「あとさ」


「まだありますか」


「今日帰ってきてから三回スマホ見たよね」


「連絡事項の確認です」


「生徒会の?」


「そうです」


「白峰先輩から?」


「違います」


「来てないの?」


「来ていません」


「来てほしかった?」


「黙りなさい」


 静かに言った。


 だが効いていない。


「姉ちゃんさ」


「何ですか」


「好きでしょ」


「違います」


 即答だった。


 速すぎた。


 不自然なくらい速かった。


「じゃあさ」


 蒼は椅子に座りながら続ける。


「なんで名前呼ぶ練習してんの」


 沈黙。


 世界が止まった。


「してません」


「さっき部屋で」


「してません」


「“白峰くん”って」


「してません」


「“白峰悠くん”って」


「してません」


「“悠くん”って」


「してません!!」


 机を叩いた。


 初めて叩いた。


 家で。


 生徒会長が。


「……」


 蒼は笑っていた。


「図星じゃん」


「違います」


「じゃあ呼んでみて」


「何をですか」


「白峰先輩の名前」


「呼ぶ必要がありません」


「好きな人の名前くらい呼べないとダメじゃん」


「好きではありません」


「じゃあ呼んで」


「……」


 呼べない。


 学校では呼べる。


 仕事だから。


 だが家では違う。


 意味が変わる。


「……白峰」


 小さい声だった。


「うわ」


「何ですか」


「今のめっちゃ乙女」


「違います」


「もう一回」


「呼びません」


「悠って呼んで」


「呼びません」


「好きなんだ」


「違います」


「好きなんだ」


「違います」


「好きなんだ」


「違います」


 三回否定した。


 三回とも声が弱くなった。


「姉ちゃん」


「何ですか」


「卒業まで一年ないよ」


「……」


「告白しないの?」


 その言葉だけが、


 静かに刺さった。


「……」


 白鷺雪乃は黙る。


 そして、


 誰にも聞こえない声で呟いた。


「……できるわけないでしょう」


感想待ってます〜

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