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転生初日

目が覚めたら見知らぬ天井だった。


「ここどこ…」


ゆっくりと身体を起こすと違和感があった。


「あ…え!?」


身体が縮んでいる。手足の長さからして5歳児くらいだろうか。


「ちょ、どういう事」


意識を失う前の事を必死に思い返す。


あの信号のない横断歩道、路駐が多くていつも危ないなぁって思ってた。今日は浮かれて、いつもは絶対にする横断前の確認を怠って…


「タクシーにひかれた!?」


呆然としていたらコンコンとドアをノックする音がした。


「リリー気がついたのね、良かった」


シスターのような、白い服を着た20代くらいの女性が入ってくる。顔立ちは何だか西洋風だ。


「あら?あなたの髪、そんな色だったかしら」


「だ、誰ですか」


「あら、私のことを覚えていないの?」


「ここどこですか」


「ミモザ教会の孤児院よ。私はシスターのテレーゼ。木から落ちた時に頭を打ったのね、可哀想に…。それで少し記憶が混乱してるのかしら」


「こ、孤児院…?」


「ミカンの収穫のお手伝いははじめてだったものね。髪は落ちた時に汚れたのかしら…。見てみる?」


と、年季の入った手鏡を渡された。受け取って覗き込むと、5歳の時の百合とほとんど同じ姿の少女がうつっていた。少し鼻は高くなったかもしれない。


「若返った気がしますけど…」


「あはは、どうしたの?リリーったらそんな冗談言う子だったかしら。何だか髪が黒くなったように見えたんだけど…」


なんだかよく分からないが、私はリリーという存在らしい。私は18歳の百合だと言っても信じてもらえそうにない。しかも孤児院だ。気がふれたと思われて追い出されるかも分からない。とりあえず今はこの場を誤魔化して様子見するしかない。


「えっと、何も覚えてなくて…」


「そうなのね、しばらくはここでゆっくりしてちょうだい。食事置いておくわね」


テレーゼはそう言うと部屋を出ていった。


百合、もといリリーは混乱して痛む頭で考えた。


恐らくあの時私はタクシーにひかれた。


そして今は何故かリリーという推定5歳児になっている。ここは孤児院で、リリーは割と真面目な子だったようだ。


「これってもしかして転生じゃ…」


中学生の頃に好んで読んでいたネット小説を思い出しながら頭を抱えた。


もしそうなら、転生していきなり5歳児にジョブチェンジしたのか、転生してたけど前世の事は忘れていて木から落ちた衝撃で思い出したのか、どちらかだろう。


「というか転生ならチートじゃないの…?」


なんなら片親から孤児に養育環境は悪くなっている。用意してもらった夕食は硬そうなパン1つに野菜のみのスープ。食生活もレベルダウンだ。


百合はきっとこれは夢だ、目が覚めたら元の部屋に戻るはず…そう思いながらカビた匂いのする布団をかぶって目を閉じた。

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