休日
レイモンドの助言通り、初日と同じような労働が数日続いて休日にになった。レイモンドはあの日以降リリーの前に姿を現さなかった。
入学してから初めての休日になる本日、リリーはプリシラの案内で街に出かける予定になっていた。
勿論、鉱山ばかりのゴローニャだ。素敵な街歩きなどではなく、リリーの生活必需品を見繕う目的である。
そこまでの負担はかけられないと伝えたが、「リリーは私の付き人と思われているはずよ。私が買い与えないとおかしいでしょう?」と言われ好意に甘える事になった。何かを買うにしろ必要最低限にとどめたい。月に1回のこの買い出しと引替えに、毎週休みのどちらかはプリシラの事業計画を一緒に考える事になってはいるが、余計な借りを作るのは嫌だった。
今のところ服も靴も孤児院から持ってきたものが、ボロでサイズがあわないながらもあるし、食堂で食事は取れている。採掘過程のものはもう必要ないから、とプリシラから貰ったお下がりの教本を使っている。問題は筆記用具だ。孤児院では文字が分からない子が多いためほぼ必要とされない。地面に棒で絵を書いて指示されて終わりである。ちなみにこれは採掘過程の実習でも同じであった。
実習といえば水を入れる革製の水筒も欲しいと言えば欲しいが、今も川の水を飲んでいるし、慣れてきたから必須ではないかな。
早く給料を把握しないと、何を買って何を買わないかを決められない。
文房具屋でペンとノート(どちらも一番安いもの)をプリシラに購入してもらった。
プリシラはこれだけでいいの?と不思議そうに尋ねてきたが、来月までに必須なものはそれくらいだ。
寮に戻り、プリシラの卒業後の事業計画の相談に乗った。リリーはズブの素人だが、中学生時代に図書館の本を乱読していたお陰で、記憶の隅っこにあったビジネス書の内容を思い出しながら、午後の時間を過ごした。プリシラが楽しそうに目を輝かせているのを見ていると、リリーも今後の不安が薄れるような気がした。
夕食を摂った後に、
「リリー、これ頼まれていたものよ」
とプリシラから紙の束を渡される。
「ありがとうございます」
「じゃあまた来週のお昼過ぎにお話しましょ」
「はい」
自室に戻ったリリーは早速、プリシラから貰った紙の束に目を通し、紙束に書かれていた事と同じ内容をノート書き写し、そのページを破りとった。
そしておもむろにノートとペンを机に置くと、隠していた鉱石の1つを取り出した。
「今日の実験はノートとペン、ね」
日課となっている宝石魔術の研究を本格的に行う事にしたのだった。




