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12 帝国の終焉? どうでもいいことだと、クローヴィルとアンリエッタは思った

クローヴィルは不機嫌なのを隠しもせず、冷たい視線を二の姫に向けた。


「なんで帝国が婚姻を望んでいるのかわかってないな。ああ、馬鹿だからのこのこと我が国に来れたのか」

「あなた、小国の王子のくせに私を馬鹿にするなんて、生意気だわ」

「それはお前だろ。自分の立場や帝国が置かれている状況を何も分かってないんだから」


冷たい視線を向けながら吐き捨てるように言ったクローヴィル。姫はその眼差しの冷たさにやっとおかしいと思い始めた。


「一度しか言わないからちゃんと聞けよ。お前の国は神の言葉という免罪符をもって、他国を侵略し続けた。色々な国を併合したのはいいが、その国を守護する神が併合されたと共にその地の守護を辞めたんだ。お前の国の神がその地まで守護すれば良かったのだが、神はそれをしなかった。それゆえ帝国は領土が広がると共にたくさんの民を抱えて疲弊していったんだ。

で、とうとう他の神々の怒りを買い、お前のところの神は封じらえたのだ。

帝国は困り、婚姻により他国に助けて貰うことにしたんだよ。

だが他の国々から断られ我が国が最後の頼みの綱となった。


つまりお前が威張れる道理はないのだ。

大体俺には婚約者がいると断ったのに、勝手に押しかけてきたのはお前だ。

これにより神々の怒りをもっと煽ったことになるな。

まあ、自業自得としか言いようがないだろう」


クローヴィルに皮肉気な笑みを口元に浮かべて言われ、姫は何も言えず動かなくなった。


クローヴィルの言葉の通り神々は帝国の足掻きに激怒した。

反省をして殊勝な態度を見せれば、帝国民のために情けをかけるつもりだった。

が、結果はあれである。


姫は強制送還されたのだが、帝国で待っていたのは蜂起した国民だった。

皇族を捕らえ監禁したのだ。

国民は神々にお伺いを立てた。

皇族をどうしたらいいかと。

神々は協議の末、守護が無くなった帝国の国境を守る結界を維持させることにした。

というのも、守護が無ければその地は魔獣に蹂躙されてしまうからだ。


二の姫も父親たちと同じところに送られ、結界に魔力を送る日々を過ごすことになったのだった。


帝国は……皇族が捕らえられたことで上に立つものが居なくなった。

帝国民は話し合い、心ある貴族家が王家を興した。

しばらくはこの国に神がつくことはないだろう。


結局神々の介入により、最強の影の者が建てた計画は半ばで終わってしまった。

学園の卒業まであと半年。クローヴィルとアンリエッタは変わらず、穏やかに日々を過ごしていた。


二人の間にまた少しだけ変化があった。

それはお互いの瞳の色のブローチをつけるようになったことだ。

学校に着けてきても目立たない小さなものだった。

気づけば真似をする者が出ていた。



卒業式、最優秀者としてクローヴィルが卒業生代表で挨拶をした。

この三年間で二つ上の学年から一人、一つ上の学年から二人、同学年から三人、一つ下の学年から一人、二つ下の学年から三人、クローヴィルは家臣候補を見つけた。

二つ上の者と一つ上の者はもう、ディナン伯爵家で働いている。

同学年の者も、数日以内にディナン伯爵家に移ってくるだろう。

下の学年の者たちも卒業したクローヴィルに仕える事になるだろう。


アンリエッタも八人の令嬢を召し抱えることになる。

この令息と令嬢たちの中には良好な関係を築いている者もいた。

彼らが家庭を築き夫婦で仕えることになるのも、遠い未来のことではないだろう。



さて、あの者の縁で知り合った令嬢たちと、アンリエッタは終生交流を続けた。

友好関係が結ばれたことで、互いの国に行くことも可能になった。

クローヴィルとアンリエッタは各国を訪ねまわり、友好関係を強化していった。

お互いの子供たちが育ち、国を超えた婚姻がいくつも結ばれた。


クローヴィルとアンリエッタの子供もシェリーナの子供と婚姻をした。

子供夫妻も仲睦まじく過ごし、クローヴィルとアンリエッタは多くの孫に囲まれて穏やかにすごしたのだった。




「って、いう感じでどうかしら」

「いやそれ! なんでまだまだ先のことを物語にしようとするの?」

「えー、絶対ハッピーエンドの話は需要があると思うの」


学園の中庭のガゼボで、アンリエッタは抱えてきたノートを広げながらクローヴィルに力説していた。

今はまだ、最終学年の半分が過ぎたところだ。帝国の姫の件が片づき、穏やかな日常を取り戻したある日のこと。


クローヴィルはアンリエッタが思いついた話を聞いて、場合によっては内容を修正していた。

アンリエッタはクローヴィルの指摘を素直にきいて、余白に書き込む。それを元に物語を書いていた。

それはアンリエッタとクローヴィルを主人公にした物語(もちろん名前は変えている)。

幼少期の出会い編は刊行され、続編の代行謀略編も好評で、現在は学園編の上巻が刊行済みだ。続きの中巻はもうひと月ほどあとに発売される。後編は学園を卒業してひと月後に刊行予定だ。

そこで終わってもいいのだが、二人の結婚後の話も読みたいという要望が多数届いているのである。


そっと二人の様子を伺っていた学園生は、最近流行りの物語の学園編の後の話も刊行される予定と知って喜んだのだった。


これで終わりです。

お読みいただきありがとうございました。

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