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義理の兄は何百年と生きたロリコンエルフだった……

 私にはエルフの兄がいる。

 

 元々、親もいない、身寄りもない一人ぼっちだった。


 それに加えて、エルフは存在するだけで意味嫌われる種族。一人で暮らしていくには酷な世界であり、子供ならなおさら。


 境遇の不憫さに養子として引き取った両親は、できる限りの愛を兄に注いだ。ただ、エルフであることは家族の中だけの秘密。


 普段はローブなどで、目立つ耳を隠し生活をしている。おそらく、エルフがいると知られたら不味い。……そう考えたのだろう。


「お兄ちゃん遊ぼうよっ!」


「………………」


 お兄ちゃんがいる部屋に向かって声をかけたが、てんで返事がない……いつものお祈り? もう、そんな時間なの……。


 そう、お兄ちゃんは毎日お祈りをしているのだ。お母さん、お父さんに聞いてみたらエルフ特有の文化らしい。今、この瞬間生きていることを神? に感謝している……と聞いた。


 でも、遊ぶ時間が減るから神さんには困ったものだ。神さんにお祈りしている間は、部屋に入ってはいけないとお母さん、お父さんにきつく言われている。


 ……でも、この日の私は我慢できず、少しだけ扉を開けてしまう。……前々から気になっていたのだ。神さんとは一体誰なのかと……なにより、子供の私が我慢できるはずはなく。


 ――そこで見たお兄ちゃんの姿は、お祈りとは程遠く、いつもの頼れる姿はなく、下品な目でたくさんの子どもが映るなにかをみていた。

 

「……なにしてるの? お兄ちゃん」


「――ッ!?」


 後ろから話しかけると、手に持っていたなにかをポケットに隠し、なにもないところで盛大に転ける。そのまま、赤ちゃんのような四つん這いになりながら、返事を返してきた。


「……どうした、妹」


「ちょ、ちょっと大丈夫!? お兄ちゃん!」


 怪我をしていないかと急いで近づくが、手を突き出し、私がこれ以上近づけないよう静止してきた。


「…………見たか?」


 いつもの冷静沈着なお兄ちゃんからは、想像できないような下品な目をこちらに向けて、そう言ってきた。


「目……怖いよお兄ちゃん……」


 慌てた様子で顔を隠し、表情を整えると、そのまま話を続けた。


「あれだ……その……あの……えっと…………っあ!?」


 口ごもり、あわてふためき取り乱す。結果、ポケットに入っているなにかを落としてしまった。


 お兄ちゃんは類をみない速さで、ある物体を拾い上げる。しかし、それはただの布の切れ端だった。


 布を拾った拍子に布と布の間から、なにかが落ちたようなので拾う。


「……? なにか落としたよ……っ!?」


 その拾ったものは、お兄ちゃんが拾おうとしていたある物体であり、それにはたくさんの子供たちの姿が写真として映されていた。


「お兄ちゃん……? なに……これ?」


 困惑の表情を浮かべ、問いかける。


「……ッ! ――蔑むならいくらでも蔑め。お兄ちゃんはこうすることでしか欲を満たせない、バカ野郎なんだよっ!」


 完全に自暴自棄になってしまったお兄ちゃんは、部屋を飛び出し、どこかにいってしまった。


 急いで後に続き追いかけるが、距離を離され、気づけば見失っていた。でも、お兄ちゃんが行きそうなところは、だいたい目星はついている。


「――待ってて、お兄ちゃんっ!」


◇◆◇◆


「……よく覚えてたな。こんな場所……」


 膝に顔をうずめて、あからさまに落ち込んでいるお兄ちゃんをやっと発見した。


「だって、初めてお兄ちゃんと出会った場所だよ。忘れないよ……。なんで、こんな……」


 そう言うと、ポケットに入れていた写真を取り出し、見せつける。しばらくしたら、観念したように渋々話してくれた。


「……家族には言ってない、ある秘密があるんだ。――実は俺、何百年も生きている大人エルフなんだっ!」


「……え?」


 大人? いや、どう見ても子供だけど……?


「……驚いたよな。体は子供だが、精神年齢は大人なんだ。身長は十二のときから止まってる」


 お兄ちゃんはお爺ちゃんだってこと? う〜ん、よくわからない……。


「……そうなんだ」


「……そういう理由もあって、エルフは不気味がられてる。しかも、何百年も生きているから変な趣味を持つ奴も多いから余計に……。俺もその一人だ」


「……」


「それに、俺が家族のままじゃ、いつか迷惑をかけてしまう。いい機会なんだ……。両親にはよろしく伝えておいてくれ……」


 そう、お兄ちゃんは言い放つと、再び膝に顔をうずめた。


「……お兄ちゃん。大丈夫、顔を上げて」


「……へ?」


「……私、お兄ちゃんは全然自分を出せてないって思ってた。ここで、お兄ちゃんに会ったときから」


 初めて会ったあのときから、お兄ちゃんはなにかをずっと隠していた。


「……あぁ、本当の自分を認めてもらえないんじゃないかって……。子供の写真で興奮している俺を……」


「――でも、お兄ちゃんが撮った写真は子供たちの笑顔が映った写真。決して、淫らなものじゃなかった!」


「それでも、興奮していることには違いない……俺は悪人だ。そう、ダークエルフだっ!」


 確かに子供の姿に興奮するのはよくないかもしれない。だけど……!


「それでも。そんな下品な部分も全部まとめて、お兄ちゃんなんだもん。下品な部分も好きになっていきたいの!」


「――っ!? こんな俺を認めてくれるのか? こんな下品な俺を――」


「――当たり前だよ。だって、私のお兄ちゃんなんだもの!」


「い•も•う•とーーっ!」


「お•に•い•ち•ゃ•んーーっ!」


 ひとしきり泣いた後、一層仲良くなった二人。


 そして、私は無事ショタコンになりましたとさ!

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