【第28話】陰陽師とは? 精霊とは?
プロジェクターで映し出された資料には、赤橙の口調とは裏腹に難しそうなことが事細かに記載されており、中学学年首席であった志乃でさえ、よく分からないものだった。
「精霊って存在は多くの修行をした人に力を貸してくれる。そりゃ生まれつき好かれやすい体質ってものがあるから一概には言えないんだが……まぁそんな訳で修行をいっぱいした奴……つまりは陰陽師としての階級が高かったり、好かれやすい奴だったりってのがなんなのかをまず知っとかなきゃならねぇ。そこで階級と分類だ」
赤橙は最初のおちゃらけた雰囲気とは一変して、真剣な表情でその一目では分かりにくい映し出された資料を1つ1つ丁寧に説明していく。
「下から、陰陽師の見習いである『陰陽徒』、一般職員扱いの『下界』――これにほとんどの職員が該当するな。で、1つの小さな部隊を引っ張っていくリーダー的な扱いの『中界』、幾つもの部隊を率いる大隊長の『上界』、これら職員らに指令を出す司令官職――『高界』、全ての陰陽師のトップ――『至界』、その他の階級――例えば『神界』、これは神と直接契約している奴が該当する。もう1つ『禁界』ってのがあるんだが……神とも契約してないのに規格外っつうか……うーん、めっちゃ強いってことだけわかればいいと思う」
「あ〜あの人かぁ……強いとは言うんだ……尊敬は一切してなさそうだけど」
赤橙の最後の煮え切らない言葉に日南が同情の眼差しで一言呟く。なんだそれはと言及しようと思った志乃だったが、日南の哀愁漂う姿を見てそっとしておくことにした。赤橙以外の焔朝の職員を見回すと、皆深く頷いているようだった。あの東雲でさえ苦虫を噛み潰したかのような顔をしている。
(どんな人か気になるなぁ……うーん、萌黄ちゃんなら知ってるかな?)
志乃が勝手に萌黄を頼りにしているのには訳がある。萌黄は雑学王と呼ばれても差し支えがないほどに物知りなのだ。脳内の萌黄が快く承諾してくれた所で志乃の意識は現実に戻る。先ほどの渋い顔をしていた赤橙はどこへやら、またもやキリリとした表情で壇上に佇んでいた。
「分類……正式名称は霊色分類って言うんすけど、それは色でその陰陽師がどんなことに特化した術を扱うのか、分類するってもんだな。
『青』は集団の術式を安定させる中継地点の役割を担う制御・汎用系統に特化した奴、
治療を行う医師や術式を組み直す研究者のような者が多い治癒・調律系統の『翠』、
攻撃術式や虚の浄化に特化した『紅』、
霊具――霊的な力が宿った武具を作ったり、扱いに長けていたり、拘束術に長けているものが多く所属する『金』、
『黒』は結界とかの守護・封印系統に長けている奴、
何か例的存在――精霊とか神だったりと親和性が高くて、顕現できる霊媒系統が『紫』で、これに当てはまる奴は少なくて貴重だから、今聞いている奴の中でたまに不思議な声が聞こえるとかそう感じる奴は後で職員のところに来てほしい。まぁ人手不足ってヤツだ。
これらの系統に当てはまらない、もしくは全てを網羅している奴は『白」で特異系統とも呼ばれる。
最後に、外法――禁術とか意図的に人に害なす術式を使う奴は『無色』だ。色を付けるに値しないってことだな」
(日南ちゃんは何色なんだろ……? 聞いたら教えてくれるかな?)
近しい人がどんな特性を持つのか気になるのは人のサガだろう。志乃はいつも通りに日南やその他周りの友達に当てはめることで、理解を深めていく。志乃は斜め上を見ながらうーんと唸るばかりであった。しかしそんな志乃の事はいざ知らず、話は進んでいく。
「とまぁこんな感じで話をしたが……うん、君らのその顔はあんまりわかってなさそうな顔だわ。俺も学生時代そんな顔で授業聞いてたから、わかる。うーん、あねさーん、どうすれば理解できると思います?」
赤橙の学生時代の話を聞いてそれでいいんかと講堂にいた全員が思ったのだったが、確かにその通りなので、皆何も言えないまま東雲の方向を見据えた。東雲も眉間に皺を寄せ、「お前はそれで大丈夫だったのか?」などと聞き返しているが、赤橙はそれに関しては知らんぷりであった。
「……そうだな、嗚呼、まずみんなは陰陽師についてそこまで知らないんじゃないか? 私たちは知っている体で話しているからな」
東雲の言葉に赤橙は「なるほど、確かにっすね」と目を見開いて納得した様子であった。それには生徒たちも口々に、「確かに知らない」という言葉を小さく呟いていた。
「陰陽師ってのはいろんな神々だったり精霊、時には妖から力を借りて力を行使する人たちのことだ。文言を唱えて呪印を結んだり、呪符を使ったりして術を発動したりってのが1番強いイメージだな。だけど元々祝福が施されていたり、そう言う風に加工されている霊具――まぁ刀剣だったり銃火器もいけるんだが、それを使って物理的に戦ったりもするんだ。ちなみに呪符や武器みたいな所謂『媒介』を使わない攻撃は大きな威力になるから一撃必殺としては使えるんだが、ものすごく疲れる、本当に。切羽詰まってる時にしかやりたくない。できればやらない方向性でいきたい。切実に」
赤橙がブツクサを文句を言い始めたが、東雲が大きめの咳払いとひと睨みで沈めた。
「……使える術は修行の量で変わってくるから、日々精進し続けるやつこそ陰陽師に向いてるって言えるかもな。これは知ってると思うが、陰陽師は免許制で、しかも陰陽連に絶対に所属・登録しないといけない。所属のない奴は『野良』って言われて他の陰陽師に追われることになる。まぁ陰陽法に抵触しているから当然なんだけど。ちなみによく似た職業で『エクソシスト』と呼ばれる職業がある」
志乃は「エクソシスト」という言葉を初めて耳にした。




