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【第27話】これぞ、国父

『身体を鍛え、丈夫な体を作り、前のような事件にも対応できるような力を身につける……でも己を磨くのは何も身体だけの話ではない。精神の方も強くなってほしいんだ。いかに体が強くても心が弱ければ行動を続けるのは難しい。心が強くとも体が弱ければ行動に移すのが難しい。どちらかが欠けていても成り立たないんだ、我々生きとし生けるものというのはね。だからこそ、このあらゆるものを強化する行事で己を鍛え上げてほしい。そしてその力を誰かを守るような力として振るってほしいんだよ』


 ここまで言い終えた咲羽は少し俯くと、『ふふっ……』と困った顔で声を転がした。


『というのは建前なんだ。実のところ、何かに興味を持って行動に移すこと、その何かを一生懸命続けること、そして目的を完遂させること。これができるような大人になってほしいんだよ。簡単そうに聞こえるけれど、これら3つの行動をするには心の元気さ、体の元気さが必要不可欠なんだ。この先生きていく中で君たちは楽しい人生を送ってほしい。何かに興味を持って接して関係を築いて、形取っていってその良好な関係性を長く継続させて、もっと仲良くなる……まるで何かに似ていないかい?』


「あ……人間と人外の…………」

 

 この言葉に誰かがポロリとこぼした。


『結局何が言いたいかというと、君たちは身体を精神を強化し、互いを認め合えるようなそんな関係性を築ける人材に育ってほしいということ。私は国のためにも、個人的にも君達にはそんな大人になってほしいんだ。だからこの強化合宿、一生懸命頑張ってください。あなた方の中で何かを決心できたり、何かに気付くことができたり、何か優柔不断だった思いが吹っ切れたり……この合宿の中で何かを掴めるよう、私は願っています。ふふ……長々と申し訳ありませんね。私からの激励のビデオレターでした。では』


 映像はそこで終了した。映像の中の彼はやり切った表情をしていたように思えたが、残された講堂にいる人々は拍手も忘れて静寂が流れている。


(どんな方かきちんと見たことがなかったけど、立派な方だったな……みんなもそう思ってるのかな? 拍手すら忘れてるもんね……?)


 5秒ほど経過したのち、皆思い出したかのような拍手がちらほらと聞こえ出し、やがて大歓声が巻き起こった。隣で日南も珍しく全力で拍手をしている。志乃も負けじと拍手をした。


「さすがは国の父ね……あくまで個人の話から種別間の話にまで持っていくなんて、すごいわ……説得力が半端ないわ……本当に尊敬する」

「国の父かぁ……国民全員が天皇陛下の子供ってことでしょ? ……ふふ、あの人の子供だなんて結構嬉しいかも」

「王の器が大きくて立派なことが伺えますよねぇ」


 日南も志乃も萌黄も口々に感想を述べ、それが伝播するかのように講堂内はざわめき立っていた。この様子を見て焔朝の職員はもうすでにやり切ったかのように満足気である。


「ん、んんっ!」


 東雲がわざとらしく咳払いをすることで、講堂内は静けさを取り戻し、ついでに満足気であった他の職員をじろりと睨むと、燃え盛っていた火が一瞬で鎮火するように、皆真面目な表情に切り替えた。


「みんなも驚いたと思うが、あのお方はサプライズが好きで有名なんだ。と、まぁ話を戻すと、我々焔朝がこの場に訪れている理由は何も焔朝について学んでもらうためだけでは無い。この会場……「綾月公園」はみんなも知っている通り、精霊が多く住む公園として有名だ。ここで精霊とは何かだけを簡単に説明しておく」


 東雲はターコイズブルーの瞳を赤髪の男性にむけ、一言「赤橙、よろしく頼む」と呟いた。それに対し、赤髪の男性は気怠げに頷くと、マイクを東雲から受け取り、パソコンを叩く。


「あねさん……東雲に代わって、中界位、赤橙陽向(せきとうひなた)が解説を務めます。ってもうこの口調じゃなくていいんだったっけか……」

「おい、赤橙、ついでに位と霊色分類の話もしてくれ。忘れてた」

「あねさん……」


 前の席の方に座っていた生徒には聞こえるくらいの音量で東雲が耳打ちする。それに対して赤橙は嫌そうな顔で「……了解っす」と答えていた。


「まず、精霊の話をする前に、俺ら焔朝……いや陰陽師の階級と分類について、触れておくな?」

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