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【第21話】2人の意外な動き

来栖とアリスが呼ばれた事に対し、志乃は「まだだった……」と意気消沈気味。

 しかし、志乃以外の3人は来栖は兎も角、アリスがどれだけ動けるか確認できる言いチャンスだと思ったらしく、じっくり観察に励むらしい。志乃はこの前のことがあってから、日南がアリスに対して何故警戒していたのか、分かった気がした。


「よーい、はじめっ!」


 来栖は槍、アリスは木剣は木剣でもレイピアのような西洋剣を選んだようだった。

 開始と同時にアリスが仕掛ける。来栖はアリスが相手だからなのか、ニヤニヤしながら只々単純に突きの構えでアリスに向かって突進していく。アリスは何の焦りも見せずに悠々とそれを交わして、攻撃を仕掛けようろするが、それも見越していたのか、来栖はくるりとターンを決めてアリスの攻撃を防いだ。

 その様子に日南はほぅと息を漏らす。


「あの馬鹿野郎、あんなに動けたのか……ほーん?」


 萌黄も何か思った事があったようで、ニヨニヨしながら日南をつつく。


「意外と来栖くんてば、真面目なんですよぅ? いつも喧嘩している日南さん?」

「い、いや、別に、あいつが悪いし……」


 日南がしどろもどろになる姿を見て、志乃はクスリと笑い、試合に目を向けた。

 目を離していた隙にも打ち合いは続いていたようで、アリスは小さな動きで来栖の突きの槍を払い退ける。来栖は「クッ」と汗をひとつ滴らし、体勢を立て直すためか、槍の猛攻を止め、一度その場を踏み締めるが、その隙をアリスが見逃すはずがなく、アリスは速度を上げて細身の剣で来栖の土を踏み締めている方の足を攻撃した。来栖は足の痛みと片足を攻撃されたせいでバランス感覚を失ったお陰か、初めよりも焦りが見える顔で槍の持ち手を上の方に持ち替え、アリスの懐に突き刺す。アリスはそれを待っていたかのように、剣の柄を槍に思い切り打ちつけた。バランス感覚を失っているかつ、焦りがある来栖は槍を落としてしまうが、すぐに体術の方に切り替えたようで、手刀をアリスの剣を持つ方の腕に仕掛ける。


 この一連の流れは全て無言だった。これを見ていた志乃は来栖にもアリスに対しても、一種の尊敬を抱いたのだった。


(こんなに集中して試合に挑んでる……なんだかんだ言っても、みんなすごいなぁ……)


 志乃がこんなことを思っていようが試合は続く。

 手刀を受けたアリスの腕は剣を持ち続けることが不可能となり、剣を落とす。しかしアリスもここで諦めず、右手を手刀の形にして顔の横に、左手を握って胴体を守るような、おそらく上から見ると十字になっている、体術の型を構えた。


「あれ……英国式十字格闘術の構えじゃんか……」


 日南がまたしてもほぅと息を漏らす。志乃は日南の言っている「英国式十字格闘術」の意味が分からず、はてなを沢山抱える顔になった。


「その顔はぁ……ま、格闘術の種類なんて普通分かんないから、その顔も納得かぁ……『英国式十字格闘術』ってのはね、その名の通りイギリス生まれの格闘術の事なんだけど、使う人は限られててさ……王家に関係ある人とか側近の人じゃないと習得できないのよ。特徴は構えにあって、上から見るとまるで十字になるように、利き手は攻撃の手刀の構えで顔の横、利き手じゃない方は握りしめて、守りの姿勢で胴体を守るように腕を構えるのよ。ほらね、そのまんまでしょ?」


 日南が指をさして、ニヤと笑う。アリスの変わった構えを見て、志乃も他の人たちもワクワクを抑えられないと言うような、これから何が起きるのだろうという気持ちに陥っていた。


 お互いに構えている状態だった2人のうち、アリスの方が先に行動を起こした。

 アリスの右手が来栖の鳩尾を狙って俊敏な動きを見せるが、来栖はそれを払いのけ、カウンター攻撃を仕掛ける。アリスの腹に一撃が入ったかと思えば、守りの形に徹する左腕がそれを防いでいた。来栖の苦い顔とは反対に、アリスは何も感じていないような無表情で来栖の左頬を殴りつけ、少しよろけた所をここぞとばかりに蹴りを入れ、完全に転倒させる。来栖は起きあがろうとしたが、すぐにアリスに押さえつけられ、行動不能となった。


「そこまで! いやー2人とも、すんごいよかったよ。来栖はスピード感が良かったなぁ、だけど、焦りは禁物だから、そこは気をつけること。水無瀬は文句なしの結果だ。ただ……もう少し楽しんでも良いとも思うぞ?」


 起き上がった来栖は猫矢の言葉に対して舌打ちをしながらも、納得している顔であった。逆にアリスはというと、少しムッとした表情で猫矢に抗議している。


「猫矢先生、戦闘訓練に楽しむも何もないじゃないですか? なぜ、楽しむ必要があるのですか?」

「それはそうだけど……今は授業で、このお手本はみんなに戦闘を慣れてもらうためでもあるんだ。そんな怖い顔してたら、初めての奴らが萎縮してしまうだろう?」


 猫矢はまさか言い返されるとは思ってなかったようで、頭を困った顔で頬をポリポリと掻き、自分の意見を主張した。アリスはその言葉に納得がいかない様子で、座っていた場所に戻っていく。来栖は意外にも大人しく、文句も言わずに戻って行った。

 それに対して、萌黄はフフンと自信満々に言葉を紡ぐ。


「ほらね、来栖くんって、意外と素直でしょ?」

「なんでアンタが嬉しそうなんよ……」


 日南は少し呆れ顔だ。

 そんな茶番の合間にも授業は進むようで、教員の中でも、陰陽師免許を持っている面々が集まりだして何かしようとしていた。猫矢は先生方が集まったのを確認すると、生徒たちに声をかける。


「ほーい、じゃあ次のペア呼ぶ前に、ちょっと準備するから、準備の様子もみんな見とけー」

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