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異世界転魂
気づけば俺は、知らない誰かの身体にいた。
足元には今にも消えそうな魔法陣。
周囲には見覚えのない男女が肩を震わせて泣いていた。
どうやら俺は魂だけが異世界転生したらしい__
その時なぜか俺の頬にも涙が伝わっていた。
理由はわからない。
彼が最後に流した涙が、俺の中に残っていたかのように……
後に知ったことだが、この身体の持ち主は、不治の病に冒された少年だった。
彼を救えないと悟った両親は、せめて“身体だけでも”生かすために、
成功確率百万分の一といわれる転魂術に望みを託した。
そして、その奇跡は起きた。
身体が蘇った歓喜と、息子を完全には救えなかった悲しみ――
その涙は、絶望と希望のはざまで揺れる、親の愛そのものだった。