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も一度動物園に

ハクセキレイさん登場です。

一応渡り鳥の筈ですが、とある伝手を使って近所で繁殖を始めたりしてます。

今日は良い天気だなぁ。土曜日だけあって、まだ午前中だと言うのに、駐車場は8割がた埋まってるぞ。

隣に有名なアミューズメント施設があるからなのかな。あぁ、空がそろそろ秋から冬に代わって来たな。

そろそろ冬物を出さないと。


「………殿?……。」

「なんですか?一生懸命現実逃避してんです。」

「……これかぁ……。」

青木さんに呆れた声を上げられた。

けど、知らん顔。

「どれです?」



「ママ、あの人すごいねぇ。」

「ねぇ。何がどうなっているのかしらね。」

通りすがりの親娘に、少し離れたところで感心されてる。


それは何故か?


白黒の野鳥が2羽。僕の頭と肩に止まって、チュンチュン鳴いているからだ。  

何これ?


「ハクセキレイですね。水辺を好む野鳥です。」


おや、一木さん。

スーツ姿に白いハットを被った年配の男性に頭を下げられた。僕も静かに会釈を返すと、慌てて頭を下げる玉と青木さんの「慌てぶり」がちょっと可笑しくて見えない様に笑っちゃう。

「む?むむむ?」

あ。笑った事が玉にはバレた様だ。ちょっと頬っぺたを膨らましてる。


「ちょうど今、出勤して来たんですが、貴方と会えるとは何たる僥倖。」

「僥倖って言葉を本当に口にする人、初めて見ました。」

「野鳥を懐かせる人は良くいますけど、鳥の方から懐いてくる人は貴方くらいでしょうねぇ。そんな人を私も初めて見ました。」

そのまんま返された。


いい歳した大人が2人して、変に悪い顔をして、ニンマリ笑いましたよ。ええ。


そんな事を話しながら、僕らは入園しました。

あ、ちゃんと入園料は払いましたよ。

僕の分と玉の分は、あの怪しいパスポートがあるけど、青木さんの分がないから。

青木さんが財布を出そうとするのを玉に目配せして抱きつかせて抑えさせて、あっという間に3人分僕が出しました。はい。

市営の施設だし、大した額じゃないし。


あと、ハクセキレイが僕の髪を突いて遊んでんだけど。逃げる気配がないんだけど。

この仔たち、どうしよう。


★ ★ ★


「どっちかなぁ。どっちかなぁ。」


ゲートを潜って早々、前と右をキョロキョロ見比べて、固まっちゃった。


「??。どしたの?玉ちゃん?」

「どっちかなぁって。」


ぽん子にも早く逢いたいし、仲良くなったモルモットとも逢いたい。

玉と言えば玉らしい、迷い道クネクネ。


「順路通りに行きますよ。僕は行けないから、そこで待ってますから。」

「ですか。ですね。待っててねモルちゃん。」

玉はとてとて小動物コーナーへ走って行った。

「あ、玉ちゃん待ってぇ。」

とてとて22歳のOLさんが追いかけて行く。

僕は前回、痛い目にあったから、あのコーナーには近寄りません。死角になっているベンチで一休み。


メェメェブウブウキューキュー。


聞こえませんよ。

ヤギとミニ豚とモルモットの鳴き声なんて、明らかに僕を呼んでいる声なんて、全然聞こえません。ええ。ええ。


とはいえねぇ。人差し指を伸ばすと、2羽のハクセキレイがぴょんと飛び跳ねて来た。

君達ねぇ。野生はどこ行った?YASEI?


「ちゅん?」

「ちゅん?」


いや、僕に聞かれてもねぇ。

なんかもう、どうでも良いや。


★ ★ ★


しばらく(たっぷり30分)して、顔が艶々になった2人が帰ってきた。


「あぁ可愛かった、です。」

「モルモットって、向こうから寄ってくるんだ。初めて知った。」

「モルちゃんは玉のお友達なのです。仲良しになったから、玉が行ったら走って来てくれました。」

「玉ちゃんと菊地さんって、やっぱり似たもの夫婦よねぇ。」



因みに僕ですが。

ベンチに腰掛けて、のんびりとハクセキレイで遊んでいると、ハクセキレイが増えちゃいまして。合計5羽の野鳥にたかられてます。


なんだこりゃ。


通りすがりのお客様に遠巻きに囲まれてます。


「なんだこりゃ。」

「なんだこりゃ。」

「なんだこりゃ。」


おや、3人目。

誰かと思ったら飼育員さんか。


「園長からお客様がいらしたと聞きまして、案内をする様に言付かって来たのですが。いきなりやりやがりましたね。」

「ましたね。」

「ええと。どなた?」

「失礼ですが、貴女様は?」


「ちゅんちゅん。」

ハクセキレイって、雀みたいな鳴き方するんだね。

「ちゅん?」

「ちゅん!」


「…殿?佳奈さんと飼育員さんがバチバチですよ。」

「ぽん子に逢いに行こう。さあさあ。」

玉を追い立てる格好をします。

「……殿ってヘタレですか?」

「巻き込まれても損しかしない未来が見えます。浅葱の力を使うまでもなく。」

「……うわぁい。ぽん子ちゃん、元気かなぁ。」

他人(女性)が混じると、大体酷い目に遭って来た2人なので、そこは玉さんも空気を読んで、僕に併せてくれた。

だよねぇ。


★ ★ ★


「ひゃんひゃん!」


やれやれ。匂いなのか気配なのか、狸舎に近寄ると、ぽん子の泣き声(鳴き声にあらず)が響いて来たよ。

ハイハイ。隣のミーアキャットが驚いて、みんなして立ち上がってます。


「うふふ。ぽん子ちゃん、やっぱり殿がわかるんですねぇ。」

「ひゃんひゃん!」


ぽん子の泣き声を聞いて、何故かあっちで睨み合っていた2人が慌てて駈けて来た。


「よ!元気だったか?」

「わん!」



「すご、たぬきが懐いてる。あの人、普通のお客さんだよねぇ?」

「たぬきって、あんな風に鳴くんだ。」

「わんこみたいね。」


お客さんがコソコソ陰口?を叩かれる中、飼育員さんの案内で裏の入り口に案内される事に。


「ひゃん!」

ぽん!とぽん子は僕の胸に飛び込んでくる。

「よしよし。良い子にしてたか?」

「わん!」


外の客から、そして中に居た立ち会いの3人から、驚嘆と歓声があがる。

上がっても、知らんもんね。

だって、ぽん子が。


「あのね。こんな事があったの。あんな事もあって、ちょっと大変だったの。でも、兄さんも貴方も居なくて、やっぱり寂しかったの。兄さんに言われた通りね。私、寂しがり屋なの。だから、貴方の匂いがしてきて、嬉しかったの。」


とか、一杯喋ってくるから。

うんうんと頷くのに忙しい。

ほんの数日しか経っていないのに、ぽん子がこれだけ話したい事が溜まっていたとはねぇ。


「チュンチュン?」

「くふん」

「チュン!」


「気のせいかな。あの人に止まっている小鳥とたぬきが会話してるよ?」

「種族を越えた会話ねぇ。凄いなぁ」


畜舎の外からは、通りすがりの誰かので会話が聞こえるけど、胸のぽん子と、あたまや肩のハクセキレイが会話している訳で。しかも、その会話の中身も、大した事は話して無いけど、全部聞こえちゃう訳で。


なんだろう、この聞き耳頭巾状態。


「あぁ、ええと。お客さまが見えたら、ぽん子を兄狸と会わせてあげなさいと言われておりますので、その、もし良かったら…。」

「この仔たちが離れようとしないんですけど?」


「ちゅんちゅん!」


「…一応、園長の一木からも聞いております。野生動物はどんな病原菌を持っているかわからないので、私的にはあまりお勧めはしたくないのですが…。」

「だって。」


仕方がないなぁとでも言う様に、やっと5羽とも離れてくれる。


みんな、そこの枝に止まっているけど。


「わ、私もいいのかなぁ?」

「お客様もお客様のご同行者ですから、お客様だけハブにしたら叱られますので。」

「なんか、私にだけ、当たり強くない?」

「気のせいですよ。割と当たりな男性を見つけたら、女子を2人も引き連れてる誑しだとわかって、この感情を何処にぶつけたら良いのかわからなくて、とりあえず振り回しているだけです。」

「あのね。あの人、相当な鈍チンだよ。私達より狸の方が可愛いの。要らん事考えないで、一生懸命職務に励んだ方が多分良いよ。」

「多分とは?」

「私も自分の気持ちがよくわからないし、今までの自分から考えると相当図々しい事してるけど、ほら本人は。」


何やら聞こえてますけど、ぽん子がせがむので胸にしっかりと抱えて医務室に向かいます。

ハクセキレイが後を飛んで追いかけてきますけど。

その内1羽は玉の肩に止まったりして、玉はだらしがない顔をしたまま僕についで来ます。


そんな2人と1頭と5羽を見送る2人は呆れ顔だったそうです。


「あんなのを、どう扱ったら良いのか、私にはわかりません。あんな人、初めて見ましたから。」

「むう。私じゃ公務員って以外は武器何もないじゃないのよ。」

「だから、玉ちゃんも貴女も、(ついでに多分私も)、どうしてあんな意味不明な人が良いのよ?」

「それがわかったら苦労しません!」


この物語は既に完結・公開済みですが、この飼育員さんは最後まで名前が出てきません。(決めてません)

主人公のハーレム(笑)に入隊希望していますが、彼女は普通の女性として普通に生活している人なので、仮にハーレム入りすると、多分精神的に病みます。


そのくらい、玉と青木さんは特殊な人生を送って来ましたので、精神的に非常にタフなんですね。

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