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玉のお家

玉さんが自分の家の思い出を語っている姿と、それを微笑ましく見守っている殿の風景がなんとも気になってしまったので書き足しました。

殿に仕えていると、殿と暮らしていると、本当に色々な事が起こりますね。

というか、色々な事しか起こりません。

当の殿は家で美味しいお茶を飲んで、ほえほえしている方が好きだとおっしゃいますが、時々能動的に動かれると、大体滅茶苦茶でしっちゃかめっちゃかになります。


お母さんがやっぱり居ない玉のお家に行ったかと思えば、水晶玉の世界に玉のお家を引っ張って来ちゃいました。

お母さんに逢えなかったのは残念ですが、なんか久しぶりに思いっきり泣いたらすっきりしちゃいました。

殿は絶対にお母さんと逢わせでくれるって信じてますので、玉はお家を探検しましょう。

何か見つかるかもしれませんし。


………



玉のお家の入り口は、重い木で作られた引き戸になっています。

玉は結構大きくなったと思いますが、それでも一生懸命に開けないと、上や下に引っかかって開かなくなる事があります。

輪っかが付いていて、ころころ転がって開いてくれる殿のお部屋の雨戸とはえらく違います。


「よっこいしょ。」


入り口から中に入ると、厨房兼作業場の土間になります。

一番奥には竈門があって、お母さんがご飯やおみおつけを作っていました。

あ、米櫃がありますよ。


覗いてみました。

直ぐ蓋をしました。


その中身に見覚えがあったからです。


お米が底を突いて、粟とかの雑穀を拾ってきた「あの日」のままです。

お母さんが居なくなって、食べる物がなくなって、どうしようと思った時、玉はお社に吸い込まれたのです。


玉が悲しい顔をすると殿の機嫌が悪くなります。

だから玉はいつも笑っています。

でも殿は玉の気持ちに気が付いてます。

殿は誰かに怒る事を嫌います。

だから殿はいつも穏やかなお顔をしています。

残念ながら、玉にはまだ、殿のお気持ちを測り切れていません。


だからとりあえず、顔を殿に見せずに知らん顔してお家に上がりましょう。


「囲炉裏があるんだね。」


部屋の真ん中にある、そこだけ色が違う四角い床をご覧になって、いち早く殿が反応してくれました。


「冬は囲炉裏を焚いてましたよ。夏はこうやって床板を張ってましたけど。」

「ん?通年じゃなかったんだ。」

「この通り一間しかない家ですから。寝る時に邪魔になっちゃうのです。」

「なるほどねぇ。そういえば囲炉裏側での団欒風景って北口の印象あるなぁ。太郎の屋根に雪ふりつむとか。」

「?」

「あぁごめん。僕の時代に学校で習った''詩''だよ。」


詩、ですか。

詩ってなんだろう。

後で教えてもらいましょう。


半畳の床板は玉でも取り外せます。

そこにあるのは灰と自在鉤だけですね。

お母さんが居なくなったのは夏から秋に季節が変わる頃でした。


殿が珍しそうに覗き込んでます。

そういえば、お隣のお屋敷には囲炉裏がありませんでしたね。

殿の事ですし、聖域のお店の方にでも作るんでしょうか?


「ごんごん。」


殿のお部屋みたいな紙の襖と違って、押入れまで板戸なので、開けるのも一苦労ですが、これが懐かしい玉のお家です。


「殿のお家と違ってお布団はぺっちゃんこです。」

「中身は藁かな?」

「そうです。秋になったら枯れ藁をお母さんと集めて来て入れ替えてました。そうそう。玉のお仕事は、山に行って焚き木拾いだったんですよ。」


外には玉が集めて来た焚き木がまだあるはずです。


「斧で薪割りとかしなかったんた。」

「女手しかありませんでしたから。でもお母さんは巫女様もやっていましたから、炭の端っことか沢山貰えたので、あまり困りませんでしたよ。」

「なるほどねぇ。」


でもあれですね。

殿のべっどとお布団とまくらで一度寝たら、箱枕とお煎餅布団で板の間に寝るって無理ですよう。

玉は堕落した女になりました(笑)。


………



あははは。

この穴は知らないうちに鼠が齧った後です。

お母さんが箒を持って、家中どたばた追いかけていたら、美代ちゃん家の猫が乱入して来たんですよ。


「玉ちゃんちがかしましいから。」


美代ちゃん家とは離れているんだけどなぁ。

お母さんの「待てぇ!ネズ公!」

って声が近所中に響いていたみたい。


「まぁ、農家には天敵だからなぁ。」

「です。」

「玉の家じゃ、何か育てていたのかな?」

「菜っ葉ですね。直ぐ育っておかすになりますから。」

「うちの野菜も似たようなものか。」

「殿の畑の野菜は3日で収穫が出来ますから、一緒にしちゃ駄目な気がします。」



………,



あ、ほらこれ、

玉がお母さんと作ったお人形です、

神様に御供えする為に「ひとがた」として木端屑を掘ったんですよ。

秋のお祭りに、手作りの船に乗せて海に流すんです。

お祭りの前にお母さんが居なくなって、玉も居なくなりましたけど。


あ、殿が悲しそうなお顔をしています。

駄目ですよ、私!

殿の前では笑っていないと。



さて、最後は、一畳分の小さな納戸ですね。


ここにはお母さんや玉が来ていた巫女装束とか、普段あまり着ない着物とかが入ってます。

わぁ、ほら殿。

これ、玉が小さい頃に着ていた着物ですよ。


お母さんは似た柄の着物ばかり玉に着せていて、なんだろうって思っていたら、ある時小さくて着れなくなった着物を全部仕立て直したんですよ。

玉はびっくりして、それからお母さんにお裁縫を教わり始めました。

ほら、この雑巾。

縫い目が真っ直ぐにならなくて困ったなぁ。

お母さんはくすくす笑うだけだったし。


え?なんですか殿?

お仏壇?

玉のお家には、殿のお屋敷と違ってありませんよ。

石が一個あるだけで……

ありますね。


まるで何かのゲームみたいに、玉とその周りにあるべき物が少しずつ少しずつ戻って来ました。

当初のプロットではそんなこと考えてもいなかったのですが、玉(と青木佳奈嬢)の成長が主人公の大きな力になっていくのは、当たり前のことでしたね。

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