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追いかけて

昨日後書きで触れていた青木佳奈書き足し回です。

頭の中で、ドキドキとワクワクを2,000文字くらいコピペした原稿を提出したので、突き返しました。


何してんの?俺

私が一人暮らししている部屋は、千葉県松戸市の矢切と言う街にある。

駅より徒歩7分くらいの1Kで、家賃50,000円。

駅に近いのに家賃が安いのは理由わけがある。

いや、別に事故物件とかではなくて。

単に面している道が狭い(1.5車線も無いだろう)だけだ。

元々が台地の尾根筋に早くから開けた街だった為に、後で鉄道が通ったのに区画整理もままならないと聞いた。

区間整理しようとすると、傾斜地に落ちる地主さんが続出するらしい。

あと、伊藤左千夫の野菊の墓や、細川たかしの矢切の渡しの舞台でも有名。

私は読んだ事も聴いた事も無いけど。

更に私の知り合いが住んでいた部屋で、リフォームしないでいいなら敷金無しで契約するよ、と大家さんも言ってくれたから格安で入ることが出来た。


私の実家は埼玉県春日部市の北春日部で、職場は東京都墨田区押上。

実家からなら東武伊勢崎線1本で通えるのに、わざわざ一人暮らしした事には理由わけがある。


私はただ、「あの2人」に逢いたいのだ。


★ ★ ★


4年前。

私は訳の分からない体験をした。

異世界に閉じ籠められて、そのまま4年間暗闇の中で過ごしたらしい。

らしいというのは、私にそんな自覚がなかったから。


ただ暗闇でぼんやりしていただけ。

別に空腹感もおぼえなかったし、時間経過もわからなかった。

数分から数時間って、自分でもよくわからない体感時間だった。

ほら、寝起きにただボケっとしてたら8時とか9時になっていたみたいな。


そんな状態から助け出してくれたのが「あの2人」、菊地さんと玉ちゃんだった。

しかもあの時、誰かが私を助けてくれるって「わかって」いた事を覚えている。


あの2人と過ごしていたのは、せいぜい数10分ってとこかな。

埃で真っ白になった制服を玉ちゃんに脱がされてはたかれている間、私は洗面器に張られたお湯で手と顔(あと髪)を洗った。

身嗜みを整え終わる頃には、菊地さんが食事を用意してくれていた。


なんだかよくわからない岩に囲まれた空間で、私(と玉ちゃん)はお腹を満たして、あの2人とあれこれ話した。


信じられない話ばかりなのに、すんなり理解している自分がいた。

「令和」と言う元号を、私は日本で一番早く知っていたわけだ。


私は私の時間に戻った。

両親は祖母の体調不良の付き添いで、私1人が留守番をする夜だった。

私は泣いた。号泣した。


''私の側に、菊地さんと玉ちゃんがいない''事が堪らなく寂しかった。


ほんの僅かの間に、一緒にご飯を食べただけなのに。


泣くだけ泣いて、涙が枯れる程泣いて、我ながら冷たい女だと思っていた私のどこにこんな感情が眠っていたのか驚いて、ようやく私は自分の髪がカチカチになっていて、あちこち埃塗れな事を思い出して、お風呂を沸かしに行った時に思い出した。



「ここから武蔵野線の高架が見えた。」

「東武線はかなり離れている。」


あの2人は、令和の時代に生きている。

それも異世界とか外国とかじゃない。

東武線。東武野田線と武蔵野線がある場所にいる。


お風呂から上がると、お父さんの部屋から地図を持ち出した。

急いでいたので、身体も水浸しのままパンツも履かず頭にバスタオル一丁でお父さんの部屋に飛び込んだので、地図を取る時にまだ手がびしょびしょだった。

慌てて頭のバスタオルで拭った。


後年、菊地さんに「残念さん」と言われる様になった私は、実際残念な女なのよね。

残念。


武蔵野線が高架な部分は、江戸川を渡って西船橋まで点々と続いている。

これは台地と低地(谷)が入り組んだ地形を無視して真っ直ぐ線路を敷いたから。

台地は切り通しで、低地は高架で、一定の高度を保っているのだろう。


更に東武線の位置を辿る。

両線が私でも歩いて行ける距離に近づく船橋法典から南は対象外としていいだろう。

あと、東松戸。

直線距離では結構離れているけど、北総線で3駅先が東武線乗換駅の新鎌ヶ谷だ。

これも削除。


こうして南流山から新八柱の間と見当をつけた。

あとは、あの2人が寄りそうな場所をピックアップするだけだ。


南流山新松戸の大型店舗。

公園。アミューズメント施設。

幾つかの候補地に絞り込むと、私はその日を待った。


平成の今、あの2人に連絡を取る事は不可能だろうし、時間的な辻褄を考えるなら、今私が逢いに行っても、菊地さんは私を知らない筈だ。


それまでは。

一生懸命に探しても、女の子らしいところが何一つ見つからない私が女の子になる事に頑張ろう。

女の子としての女の子らしさを磨こう。


決めた!そう決めた!今決めた!


…だったら、早く服を着よう。  

いくら誰もいない家の中とはいえ、女子高生が全裸で居る今からなんとかしよう。

大丈夫か?私。


★ ★ ★


2年経った。

一応念の為、携帯に定型文を保存して、時々菊地さん宛てにメールを送って見るけど、全く繋がらない。

…まぁ今繋がっても菊地さんも困るだろうけど。


私は家政科の大学に進学した。

せめて人並みな女性スキルを身につけたいから。


そして暇に任せて候補地を歩き回った。

菊地さんと玉ちゃんの容姿は何故か克明に覚えていた。

見れば、逢えば絶対にわかる。

そうしたらどうしよう?

わからない。

自分が今何をしているのか、もはや自分でもわからなくなっている。

それでも私は歩き回った。

あの2人に逢う為に。


北春日部から通うには、武蔵野線沿線は行きにくい。

柏周りにしても、南越谷周りにしても。

だから私は矢切に引越した。

ここなら職場の青砥まで通いやすい。

家賃も同じ地理的条件の京成本線沿線より安い。

起点となる松戸も東松戸もバスか電車で1本だ。


そして私は探し続けた。


★ ★ ★


ある日、メールが繋がった。

あれこれ計算すると、あの日から4年が経った秋の日だった。

私は号泣した。

さすがに声は立てなかったけど。

一人暮らしで良かった。

私はその日、心行くまで泣き続けた。

スッキリした。


やがて、あの人からの返信メールが届いた。

本物だ。

菊地さんだ。

玉ちゃんだ。


良かった、諦めないで本当に良かった。


………


次の日、玉ちゃんに菊地さんがスマホを契約してくれた。

早速、玉ちゃんとメールのやり取りを始めた。

玉ちゃんは昔の人なので日本語は普通にわかるけど、50音順と言うものを知らないそうだ。

菊地さんが買った50音表を見ながら、少しずつ少しずつ、でもなんだかよくわからないメールを玉ちゃんはたくさん送ってくれた。

ほえほえとか、つるつるとか。

でもそれは、今のあの2人がしてる会話だと知ったから、一生懸命について行ったよ。

わけわかんないけど。


やがて玉ちゃんは写メを送ってくれるようになった。

菊地さんに教わったらしい。

大体は昼寝している菊地さんだとか、部屋の中の様子だとか玉ちゃんが手入れを始めた庭とかだけど。


その内、色々な手掛かりを私は掴む事が出来た。


「玉のお庭から」

と題のついた写真からは、住宅街の向こうに繁華街が見える。

あれ?これは?

引き伸ばしてみると、総武線の各駅停車車両が見える。


とすると、手前のこれは京成本線か。

だとするとこの建物は?


PCを開いてGoogle先生アプリを起動させる。

写された風景は市川真間駅近辺だと断定出来た。


そこまでくれば、

「玉と殿の愛の巣」

と題されたアパートの姿をネット上で見つけるのは、簡単な事だった。


★ ★ ★


私は鏡を見る。

何度も見る。


普段は何も手を加えない黒髪は、軽く明るくした。

このくらいなら服務規定以内だし、明日染め直す必要ないか。

タイトスカートに暗めのタイツ、スーツに皺が寄っていないか何度も確認。


矢切駅まで歩くと、丁度市川駅行きの路線バスが来た。

ラッキー。

しかも座れた。

ラッキー。ラッキー。


いつもは国府台の文教地区で混みがちのバス通りはスイスイと進み、大学下の京成線の駅まで数分でついた。


ここは快速が止まらないからちょっと待つ。

やばい。

ドキドキしてきた。

どうしよう。

怖気付くな私!


市川真間駅を降りて北に向かう。

あれだ。

玉ちゃんの写メと何度も見比べる。  

間違いない。


少し東に台地を登る坂道があった。

この後、何度も登り降りを繰り返すこの坂を、一歩一歩踏み締める様に登っていく。

じゃないと、私の心臓が保たない。

さっきからバクバクだ。


扉の前に立った。

表札は菊地。あと、玉って小さくマジックから何かで書いてある。

やっと。やっと。

やっとここまで来た。ここまで来れた。


深呼吸して、私は呼び鈴を押した。

 

彼女が主人公達と別れてから、何を考えて何をしていたか。

作者自身が書き足りない部分ではありました。

次回と一部被りますが、発信者が別と言う理由でわざとです。

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