表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/257

水晶玉

悪女(笑)2人が、裏で暗躍し始めます。

玉が選んだ絨毯は青かった。正確には水色に近い青。

浅葱色とか、青木さんとか、青に縁のある我が家だね。


それはいいさ。それは。

「空を飛んでるみたいですから。」 

その気持ちはわかる。僕も、水面を歩くような錯覚を楽しめるかもと思ったし。


だけどね。自由の女神の顔が真ん中にどどどーんとついてるデザインはどうなのよ。

「玉にとって、神様は荼枳尼天様だけですから。他所の国の女神とか知りません。」

「そういう問題ではありません。」


という訳で玉の選択は却下、焦茶をメインにした何やら幾何学模様が編み込まれたよくある地味系絨毯を買いました。

そのかわり、少しだけ奮発したので、毛の長い歩くと転びそうになるくらいふわふわの絨毯です。


「わわわわわ。ふわふわほえほえです。」

「そのケッタイな形容詞だらけの日本語をメールにして青木さんに送るなよ。」


あの人、多分頭からクエスチョンマークを盛大に浮き上がらせて、とりあえず返してきそうだから。

自分の仕事をほっぽらかして。

…そういえば、どんな仕事してんだろう。


「気になりますかぁ?」

絨毯に埋もれて、気持ち良さそうに目を瞑る玉は口元だけで悪い顔してる。


「いや、高校生の青木さんに逢ったのは昨日で、社会人の青木さんから連絡が来たのも昨日だ。誰とでも直ぐに仲良しになる玉と違って、僕は戸惑っているんだよ。玉といい青木さんといい、距離の詰め方が僕の理解の範疇を超えているんだ。」

「私や佳奈さんが女だからって、意識しなくていいですよ。」

「そんな訳に行きますか。」


僕が今まで交流があった女性は、クラスメイトや同僚から彼女になった人まで、もう少しこう時間がかかったし、そこら辺はデリカシーとかコンプライアンスとかウンタラカンタラ。


「あーもー!喧しいです。玉は殿が好きだからベタベタすることに決めてます。かなり明け透けに好き好き言ってる筈です。」

僕も木石ではないから、それとなくそう思ってはいるけど、半ば逆ギレで言われる事かねぇ。

「佳奈さんも決まってます。4年間ずっと待ってたって書いてたじゃないですか。殿をずっと待ってたに決まってます。処女もずっと守ってた筈です。」

「玉さん。女性から好意を寄せられると告白される事は嬉しいですけど、なんかとっても重たいです。」

「佳奈さんもお年頃ですから、さっさと殿は責任を取るべきです。」

「僕は4年前の彼女に小1時間逢い、22歳の彼女と数回メールを交わしただけです。その程度の縁で結婚しないとならないなら、僕は極度の重婚罪で捕まります。」

「殿は女の敵でしたか。」

「…玉はそろそろ自分で何言っているか、わからなくなっているでしょう?」

「ふわふわで気持ちいいので寝ちゃいます。」

おやすみなさい。

「…でも、佳奈さんも殿と仲良くなりたいって思ってますよ。きっと…ぜったい…むにゃ。」

だから、お前ら重たいっての。


★ ★ ★


絨毯を敷いた部屋のど真ん中で、枕も使わないで昼寝を始めた巫女様が邪魔なので、ソファセットが戻せない。

お互いの身体に触れないという制限以外は、玉の身体に他人や物は普通に触れるという、何が何だかさっぱりわからない状況なので、ハッキリ言うならば凄え邪魔。


かと言って彼女を起こしたり、ソファをぶつけたりするのは後が怖いので、こっちの部屋は放置しといて。

それまで使っていたラグを寝室の方に使う事にする。

こっちは和室なので、ベッド下には脚に靴下を履かせてあるのだけど、今更ベッドを動かすのも面倒なのでその手前、ベッドに乗り降りする箇所の畳に敷く事にしよう。

それもそれで、ほんのちょっぴりお洒落な気もしないでもない。


やれやれ。

大した汗もかいてないけど、軽く汗を拭う真似をしてそのままベッドに倒れ込んだ。


ピリ。

メールがなる。

『玉ちゃんがウニャウニャ書いてたけど、私も菊地さんと仲良くしたいですよ』

あの野郎、寝たふりして青木さんにメールしてやがった。

『あと、私はまだ新品なのです』

『知らんがな』

こんなテキトーな5文字だけのメール、同性の親友にだって送った事ねぇぞう。


スマホを枕元に置いて、なんとなく天井を見る。


前職をリストラされてひと月弱。

1人でこの部屋に来て3日。


なんだろうか、昔からずっと知っていた様な人達が盛んに話しかけてくる感じは。

僕は別に人嫌いではないから、不快だとは思わないけど、何かが急に始まってしまった事にまだ着いて行けてない。


僕を鎹にして1,000年歳と時が離れた2人が仲良くなる事は、間違った事では無いと思う。

彼女達はほっといても、彼女達の世界、彼女達の社会を築いていくだろう。

で、僕はどうする?なんだろうこの居心地の悪さ。


ベッドにねっ転がりながら大きく伸びをする。

玉がいるから。

青木さんがいずれ本当に僕らの周りに来るだろうから。

大人の男として、いつまでも無職ってわけにもいかないし。たしかに浅葱の力があってもやりたい事がない。


玉にハンバーグでも作ってあげて、「わわわわわ!はふぅ。」とか言わせれば満足できるのも事実だ。

そりゃ「新品」をくれるなら貰いますよ。

でも、その先に展開がない。

玉だってだ。無邪気な好意を寄せてくれるのは素直に嬉しい。浅葱の力の事だから、玉の「新品」も貰う事くらい、いずれ出来そうな気がするし、多分それは事実であり、確信だ。でも、その先をどうする?

玉をどうやって玉の時代に帰す?


そして、国麻呂さんか言っていた「何か」に2人を引き込む事になるのだろうか。


そう言えば、玉が来てからこっち。1人で考え事をしなくなっていたなぁ。

あの娘は賢い娘で、僕の考えを直ぐに悟るところがある。そして、僕が気を遣わない様に適度に我儘やおねだりもしてくる。


あれ?

和室なので簡易な床間もあるんだけど、小さな違い棚が設置されている。そこに2つの水晶玉が置いてある。僕はダイニングのテーブルに転がしっぱなしなので、おそらく玉が片したのだろう。

元々仏像を置いたスペースが簡略化して出来た建具なので、水晶玉という何やら神秘的な物に神性でも感じたのだろうか。あ、片方は玉が長年管理していたお社だった。そりゃ床間に置きたくもなるか。


「んしょっと。」

このベッド、僕の身長には微妙に低いので、立ち上がる時は気合いがいる。

今後の家族次第では書い直す必要もって、誰が増えるんだよ。自然とあの白く埃塗れな高校生が浮かんだのを頭から振り払って床間に歩いて行った。

別に水晶玉を手にした事に意味はない。


右の水晶玉には、玉と玉のお母さんが守って来たという荼枳尼天の社。左の水晶玉には青木さんが閉じ込められていた茶店。

変な話ではあるが、彼女達との出逢いが、彼女達との縁が、この両手の水晶に込められている。

なんだかね。

この水晶玉自体があり得ない「浅葱の力」の結晶であるわけで。しかも、こんなものが実存してしまうとか国麻呂さんも教えてくれなかった。


あの人は知らないものは知らない、わからないものはわからないと正直に言う人だった。

つまり、この水晶玉は僕だから出てきた、僕の仕業だ。何か、何か意味がある筈だ。

なんなんだろうなぁ。

2つの水晶玉を持ったまま部屋の中をうろうろしてみる。頭には何も浮かばない。


やめた。

まだ材料が足りないのかなぁ。水晶玉は割と重量があるし、そろそろ持ち歩くにも疲れてきた。



かちん



少し乱雑に置いたので水晶玉と水晶玉がぶつかってしまった。水晶のモース硬度は7。そうそう傷つくものでもないだろ。

僕は確認もあって顔を上げた。


そこには、水晶玉が一つしかなかった。

水晶はこの後、物語の大切なキーワードになって行きます。

家族の証になって行くんです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ