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第96話 恋バナは続く

 あいみとアルシアの『恋バナ』は、まだまだ続いた。



「実はあいみも先輩がいいな~っと思った頃もあったんだよ」

「えっ!?」



 アルシアはあいみの発言で、ようやく写真から視線を外して、心配そうな顔であいみの方を見た。



「でもね、最近他の人を好きになってしまって、その人が、アルシアの世界から来た魔法使いなんだ。でも、名前は聞かないでね」


「驚いた……そうだったの。でも、この世界に来れる魔法使いなら、かなり限られるわね」

「えっ!? そうなの?」



 あいみは少し焦った。恐らく、魔法使いなら誰でもここに来れると思っていたんだろう。



「でも、この世界の人は誰も魔法が使えないから、真由を送り込んだSランクの魔法使いがいると思っていたわ。その人かしら?」


「それって、もう誰か見当ついたりする?」

「うーん、選択肢は少ないはずなのに、誰か全く分からないわ。想像がつかないのよ」

「良かったー」



 あいみは一先ず安心した。



「魔法使いの方がいるなら、挨拶に行かないといけないわね」

「あっ! それは大丈夫! い、今は居ないんだ」



 あいみは焦ってすぐに誤魔化した。しかし!



「でも、ポンタが会いに行ってるはずよ。ポンタは魔法使いから魔力供給が無くなると、ただのヌイグルミに戻ってしまうから」


「いや、うん、でも、アルシア、正直今は、あんまり魔法使いの人に会いたくないでしょう?」

「うーん、確かにあいみに会うまでは、そう思っていたかもしれない。けど、今なら大丈夫だと思うわ」


「ああ、でも、今は組織の任務に参加していたから、当分帰って来ないかもしれないよ」



 あいみは、なんとかその場を誤魔化して、その魔法使いがカリバーだと言うことを隠し通した。



 こうして、恋バナは続いたが、アルシアが眠たそうになってきたので、ソファーから寝室に移動した。しかし、当然ながらベッドは1つなので、あいみが譲って床に布団を敷いて就寝することになった。


 そして、寝る前にアルシアが天井を見ながら、何かを思い出したように呟いた。



「ねぇ、真由は魔法が全く使えない状態で送り出されたのよね?」

「うん」

「私、真由に酷いこと言っちゃった。魔法の基本が出来てないから、厳しいことを言ってしまったわ」


「でも、それは真由の為のことだから、仕方が無いと思うよ」

「うーん」



 2人は、それ以上は喋ることなく、心地よい眠気もあって、ゆっくりと瞳を閉じて眠りについた。

 



 しかし、深夜になるとアルシアがまた、恐ろしい夢を見ているのか苦しそうな声を立てた。その声にあいみは目を覚まして、アルシアの元に駆け寄った。復活したように見えても、まだ心の傷は癒えていなかった。



「あいみも一緒に居るから、大丈夫。安心して」



 あいみは、ベッドに入り、アルシアを安心させるように撫でた。 



 

 その後、あいみが寄り添ってからは、アルシアもうなされることもなく、朝まで目を覚ます事は無かった。


 そして、最初に目を覚ましたのはアルシアだった。



「ん? えっ?」



 アルシアは、深夜の事を覚えていないせいか、あいみが隣で寝ている事に驚いた。



「なんか寝顔が可愛い……」



 あいみの寝顔を見つめていると、再び心地よい眠気に誘われ、二度寝しようとした時に、あいみを抱きしめてしまった。


 アルシアの世界では、お互いの魔力を活性化させる為に、女の子同士抱いて寝る事はあるので、アルシアにとってはそんなに可笑しな事ではない。アルシアにとっては……。


 しばらくすると、何か違和感を感じたあいみが目を覚ました。



「うーん、ん? え? か、顔近っ! って、ちょっ、ア、アルシア!?」



 しっかりと抱きしめているアルシアに、あいみは動揺した。



「ちょっとアルシア!? 起きて!」

「うーん、私……二度寝したみたい。おはよう」



 アルシアは目を覚ましたが、依然あいみを放そうとしなかった。



「うん、おはようって、何をしているの? もう起きてるよね? 寝ぼけてないよね?」

「ん?」



 アルシアは、首を傾げた。



「なんで抱いているの?」

「ああ、ごめんなさい。あいみは苦手なタイプなのね」



 そう言うとアルシアは、ゆっくりと手を放して、そのまま起き上がった。



「苦手っていうか……アルシアの世界では普通なの?」

「割と普通かな。そうやって魔力を回復させる事が出来るから」

「ははは、そうなんだ……」



 あいみは苦笑いをしながら、ベッドから起き上がった。そして、朝食を済ました後、あいみは仕事の準備をして、アルシアも昨日買った洋服に着替えた。


 アルシアの服は、いわゆる『オフィスカジュアル』というやつで、ベージュパンツに白のブラウスで、羽織るように着る黒のジャケットだ。スタイルがいいアルシアが着ると、出来る女性みたいな風格がある。


 あいみの場合はスーツを着ているのに、小さい身体に童顔のせいで女子高生に見えてしまい、それがコンプレックスになっている。 



「ううう……この差は一体……。ねぇ、アルシアって何歳?」

「18だよ」

「18!? あいみは19なのに、なんで」



 あいみは年齢を聞いて落胆したが、もうそれも慣れてしまっているのか、すぐに気を取り直した。



「あいみはこれから組織で仕事をするけど、アルシアはどうする?」

「私なんかが役に立たないかもしれないけど、組織に貢献して、もっとこの世界の事を知りたいわ」

「流石アルシアね。和田司令官に相談してみようか?」

「お願いするわ」



 こうして、2人は一緒に組織に向かい、和田司令官に相談することにした。

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