表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/202

第93話 最高の選択肢を

 和田司令官は上機嫌で話していたが、油断して浩二の名前を出してしまった。

 あいみも司令官も、真由として一緒にいたのは、ほんの数日でしかなかったせいで、真由よりも浩二が普通なのだ。



「いやいや何でもない。はっはっはー」

「和田さーん」



 あいみは焦った表情で、和田司令官の腕を両手で軽く掴むと、察したのか和田司令官は急遽話題を変えた。

 アルシアの方は、また浩二の名前が出てきても、まだ理解はしていないように見えるが、少し複雑な表情をしている。



「アルシア君、今日は外に出たみたいだけど、この世界はどうだった? 気に入ってくれたか?」

「あ、はい、驚き過ぎて疲れました。お金まで出して頂いて、ありがとうございました」



 アルシアは深く一礼した。



「いいんだよ。今度働いて返してくれたら」

「はい、分かりました。必ず返します」

「いやいや、冗談だからね。今日はゆっくりと休んでくれ」



 和田司令官は冗談のつもりだったが、アルシアは本気でそうしようと思っているぐらい、丁寧に返事をしていた。




 ――そして、その頃、無垢朗の研究室では、無垢朗とカリバーとポンタの3人は、一台のパソコンを取り囲みながら、何やら話し込んでいた。


  

「魔法少女だったら、この衣装がいいよ」

「アルシア君ならこっちが似合うと思うよ」

「吾輩はそれですね」



 3人はネットで魔法少女の画像を検索して、アルシアの衣装を考えていたが、皆の好みが色から服のタイプまで異なっていた。



「みんな好みが割れたね」



 無垢朗が頭を掻きながら苦笑した。



「アルシア様がお決めになられた方が、いい気がしますが」

「それはもっともだね。そもそも、魔法少女になりたいかどうかだけど」

「そうでしたね」



 無垢朗とポンタの会話のを黙って聞いていたカリバーは、静かに口を開いた。 

 


「でも、そうやってアルシア君に選ばせて上げられる選択肢を、用意する事に意味があるんじゃないかな?」


「確かにそうだね。なら、最高の選択肢を用意しないとね」

「最高の選択肢と言ったら、魔力を取り戻すことになるけど、流石にそれは無理なんじゃないかな?」


「一応、僕は魔力を取り戻す方法も考えているよ。でも、見当すらつかないけどね」



 ゼロから魔力を復活させるのは、カリバーは不可能だと諦めているが、無垢朗は疑似的に魔動三原則を再現する道具を製作する一方で、魔力の復活の方法も考えていた。


 そして、その後も3人は魔法少女のモデルとなる画像を検索して、話し合いは続いた。




 それからしばらく経つと、研究室にドアをノックしてあいみとアルシアが入って来た。

 その瞬間に、カリバーは魔法で消えるように奥の部屋に移動した。その咄嗟の俊敏さは、流石Sランクと言ったところだ。


 無垢朗も別に悪い事をしているわけでもないが、咄嗟にパソコンの画面をゲームに変えた。


 

「無垢朗さん、アルシアさんにスタミナドリンクを飲ませてあげたいんだけど、一本ちょうだい」

「それなら奥の部屋に……いや、僕が取って来るよ」

「ありがとう」



 無垢朗は奥の部屋にカリバーが居る事を思い出し、慌てて取りに行った。

 そして、戻ってくるとあいみの方に近寄り、小声で話しかけた。



(カリバー君もいるんだから、気を付けてくれよ)

(あ、ごめん)



 そう言うと無垢朗は、スタミナドリンクを手渡した。アルシアはそのドリンクが何なのか理解していないような様子で、一応受け取った感じだ。



「アルシアちゃんとは、初めましてになるね。僕はこの組織の研究員の戸田無垢朗っと言うんだ。君を全力でサポートするように、和田司令官から言われているから、いつでも頼ってくれていいんだよ。そのドリンクは、疲労回復の効果があるから飲んでくれよ」


「あ、はい、お世話になります。えーと、私はアルシアです」



 アルシアは自己紹介でどもってしまった。というのもアルシアの世界では、名前を紹介する時に「Aランクの――」とか「○○討伐隊の――」「魔法生産部の――」等の属性を頭に付けて、紹介するのが普通だ。

 でも、今は何もない。



「ねぇ、アルシアさんは病棟に戻るんだよね? まだ部屋は用意されていないんだよね?」



 あいみは無垢朗にそう問いかけると。



「もう退院許可は出ているけど、まだ用意されてないね。ご飯が食べれるようになったのは昨日の今日だし」


「だったら、あいみの家に泊めてもいいよね? アルシアさんもどうかな?」

「うん、あいみさんがいいなら、私も行ってみたいなぁ」


「和田司令官の許可が出ればいいと思うよ」

「吾輩はここにいます」



 ――こうして、あいみとアルシアは再び和田司令官の部屋に戻り、許可を貰いに行った。すると、二つ返事で許可が下り、さらに、あいみにアルシアが日本で生活出来るようにサポートするように命じられた。


 そして、無垢朗の研究室には、あいみとアルシアが出て行った後、カリバーが奥の部屋から戻って来た。



「やれやれ、行ったみたいだね。無垢朗君、さっきの時に魔法少女の話をすれば良かったんじゃない?」


「どうせならね、衣装と攻撃が出来るステッキを作ってからの方が、喜ぶんじゃないかと思って」

「という事は魔法少女なら出来そうっという事だよね?」

「まぁーね」



 そう言うと、カリバーはゆっくりと座りゲームを再開させると、無垢朗も奥の部屋に戻った。そして、ポンタは……。



「では、吾輩を抱いてゲームをして下さい」

「え、また……」


お読み頂き、ありがとうございます。


気に入って頂ければ、ブックマークや↓の☆をクリックしてくれますと、モチベーションが上がります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ