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第90話 お出かけ準備

 昨晩はアニメ『魔法少女ラムル』を見たせいか、その後はうなされて目を覚ますことは無かった。


 そして、いつものようにあいみは、朝食をカートに乗せてやって来た。すると、アルシアはノックの音で目を覚ましたのか、今起きたような様子だ。


 

「おはよう、アルシアさん。よく眠れたかな?」

「うーん、おはよう……。眠れたのかな……」



 アルシアは少し寝ぼけている感じではあったが、ちゃんと対応している。



「今日の朝食は食パンとヨーグルトだよ」 

「!!」



 食パンの芳しい香りが漂ってきたので、アルシアはまた衝撃を受けた。



「この香を嗅ぐと、口の中とお腹の中が……なんか変」

「ふっふっふ、そんな大袈裟なー。お腹が空いているだけだよ」



 アルシアの世界では、食事を楽しむ、美味しい物を食べると言った概念が無い。ただ生きるための燃料補給というぐらいだ。

 その燃料『ジュレ』は、一日2回補給すれば事足りてしまう。だからサバイバルには最高の代物だが、食事としては物足りない。でも、それがアルシアにとって当たり前のことだ。



「とりあえず食べてみて、きっと美味しいと思うから」



 アルシアは迷うことなく食パンにかぶりついた。



「何これ!? 美味しい!」



 あまりにも美味しそうに食べるアルシアの姿を見て、あいみも嬉しいようだ。そして、あっと言う間に朝食を完食してしまった。



「あいみさん、ありがとう。とても美味しかったわ」

「どう致しまして。でも、あいみが作ったわけじゃあないけどね」

「そうなの? でも、色々とありがとう」

「でも、こんなの序の口よ。もっと美味しい物なんてあるんだから」



 あいみは食器を片づけて、カートに乗せた。そして、改まってアルシアに話しかけた。



「ねぇ、今日は天気もいいみたいだし、外に出てみない? きっと驚くよ」



 あいみの誘いに、アルシアは少し考えた。



「うん、お願いします。私もこの世界の事を色々と知りたい」

「本当!? やったー! あいみに任せておいて! すぐに準備するから、ちょっと待っていてね」



 あいみは上機嫌で、カートを押して部屋を出て行った。

 そして、アルシアは特に何もすることも無く、ポンタと一緒にベッドに座って待っていた。

 

 それから15分ぐらい経つと、あいみは少し息を切らせ、自分の鞄ともう一つ、手提げ袋を持って再び部屋の中に入って来た。



「お待たせ! アルシアさんに似合うと思って、昨日お洋服を買ったんだけど、どうかな?」



 あいみがそう言うと、手提げ袋の中からカジュアルな服を取り出し、アルシアに手渡した。するとアルシアは、手に持ってじっくりと吟味し始めた。


 

「これは凄い……もの凄く細かく作ってある。これはあいみさんが『デザイン』したの?」

「はは、まさかー! 近くのデパートで買っただけだよ」



 一見、会話が成り立っているようだが、アルシアの世界での『デザイン』は、魔法のことを指している。それに対して、あいみは、服のデザインを考案するデザイナーと受け止めていた。

 

 アルシアの世界では、服は白色のシャツと短パンを、魔法で制服やパジャマ等に『デザイン』という魔法で変えることが出来る。

 これらの服は、着ることによって自然に魔力が供給され持続するが、着ずに放置すると、数日で魔力が無くなり、元の状態に戻ってしまう。


 だから、ほとんどの人は、服は一着しか持っていない。しかも、まともに『デザイン』の魔法が使える人は少ないから、お店で予めデザインされた服を買って着る人がほとんどだ。



「これを私にくれるの?」

「うん、その為に買って来たんだよ。あいみの服じゃあ、サイズが合わないから」

「ありがとう。とても嬉しいわ」

「えへへ、それに着替えて外に出よう」



 早速、アルシアは着替えようとしたが、普段なら魔法で服をチェンジすることに慣れてしまったせいか、ボタンが付いていたりするだけで苦戦した。

 でも、その様子を見たあいみはすぐに手伝ってあげて、ようやく着替えが終わった。



「きゃあー可愛い! アルシアさんよく似合っているよ。あいみよりちょっと大人な感じだけど」

「うん、ありがとう。こんなお洒落な服見たことがないわ」



 アルシアの服装は、ピンクベージュのふんわりとしたカットソーに、グレーのチェック柄プリーツスカートで、女子大生みたいな雰囲気だった。

 

 一方のあいみは、英語のロゴの入った白のTシャツに、大きめの黒のカーディガンを羽織り、デニムのミニスカートを履いていた。

 見た目の雰囲気はギャルだが、大人っぽい印象は無く、女子高生が頑張ってギャルっぽくしたような感じだ。それだけあいみは、背が低くて童顔という事だ。



「アルシアさん、出かけよう。今日は司令官から許可を貰っているから、思いっきり遊べるよ」

「うん。あ、ポンタも行くでしょう?」

「吾輩は遠慮させてもらいます。この世界でヌイグルミは会話をしたり、生き物のように動いたりしませんので」


「そうなの……残念」



 こうして、お出かけはあいみとアルシアの2人で行くことになり、ポンタはお留守番をすることになった。そして、あいみがアルシアを引っ張るように部屋を出て行くと、ポンタは数分置いてから部屋を出た。


 ポンタは廊下を人目に付かない様に、警戒しながら進み、無垢朗がいる研究室に向かった。

 部屋の前に着くと、ノックだけをして中に入った。


 ポンタが部屋に入ると、コントローラを持ったまま、寝込んでしまったカリバーと、奥の部屋の研究室で作業をしている無垢朗がいた。



「無垢朗様! お話があるのですが、お時間いいでしょうか?」



 ポンタが呼びかけると、無垢朗は作業を辞めて、奥の部屋から出てきた。



「ポンタ君。今日も魔力の補充かい? カリバー君は徹夜でゲームしていたから今は寝ているようだね」


「はい、それもありますが、今日は無垢朗様とカリバー様に、アルシア様の事で提案がありまして、参上した次第です」


「提案?」

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