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第83話 崩壊するラビットちゃん

 俺は自分の正体を包み隠さず明かしたが、二人は険しい表情で黙ったままであった。



「今まで黙っていてごめん。なかなか言い出せなかったんだ」

「……」

「本当にごめん……」

「……いや」



 ミルネはそう言ってその場を立ち去り、ミリちゃんもついて行くように何も言わず、どこか寂しげな表情で去った。


 正直、ぶん殴られる方がどれだけ良かったか。そんな顔して何も言われないのは辛いし、俺もそれ以上掛ける言葉も見つからない。


 こうなるのは心のどこかで分かっていたはずなのに……。

 でも、現実になると厳しいものがある。何をしていいのか分からない。俺の出来る事とは、許してくれるまで謝り続けるしか思いつかない。


 しかし、2人とも怒りの感情よりも、ショックの方が大きい感じがした。


 くそー!! なんで俺、女になってしまったんだ!?


 これじゃあ、一番の『闇』はダンロッパでじゃなく、俺じゃあねーか!!



 俺はその場を離れることもせず、かといって何かをするわけでもなく、ただ時間だけが過ぎ去って行った。

 本来なら、ベルリア学園に向かって進まないといけないし、留まるなら留まるで周囲の安全を確保しないといけない。


 でも、そういう気持ちになれないというのもあるが、2人に声を掛けるのに躊躇してしまっているのが本当のところだ。

 ただ、一つ救いがあるとするなら、2人とも俺と距離は置いていても、まだ声を掛ければ届く所に居てくれている。


 まだ俺の元から去っていないのがなんか嬉しい。



 

 ――そして、何も無いまま時間だけが過ぎて、気づけば辺りは薄暗くなっていた。 

 

 そろそろ夕食の準備をしないといけないが、そんな気分ではない。しかし、昨日から何も食べていないから流石に何か食べないと。


 俺は2人の方を見渡たすと、はっきりと見えないが、岩に二人が寄りかかるように眠っているようだ。


 まだ居てくれた……。

 


 俺が、夕食の用意したら食べてくれるかな?



 そう言えば夕食の準備をした事も無ければ、手伝ったことも無い。いつもアルシア任せだ。


 うーん、確かアルシアの鞄の中にジュレが入っていたから、まず鞄を元の大きさに戻す魔法を解除する。一応俺でも小さくする魔法は出来ないが、単に解除するだけなら大丈夫だ。


 そして、俺は女の子の鞄の中を、勝手に開けて悪いと思いながらも中を開けた。すると鞄の中には小分けにされた大量のジュレと、以前に図書館にあった魔力で文字が浮かんでくる本と同じような作りの日誌があった。

 あといくつか用途が分からない小物だ。


 まさか、今までの活動を記録してくれていたのか!?


 俺はその日誌に魔力を吹き込むと、図書館で見た本のように文字がふんわりと浮かび上がり、これまでの活動記録と感想等が記されていた。


 もしかしてこの活動記録を依頼完遂後に提出するんじゃないか?

 

 そして、大量にあるジュレの数だ。今回の依頼が長引くと予想していたのかな?  

 

 多分これなら一カ月ぐらは持ちそうだ。それとも、もう学園には戻れないと悟ったのかもしれない。

 いずれにせよアルシアはこんなに色々考えて準備していてくれたのに、俺はジュレの文句を言ってしまったことが恥ずかしい。

 

 でも今日は、俺がジュレの用意をしないと。アルシアみたいに味付けは出来ないが。



 俺は試行錯誤しながら魔力を適当に当てて、電子レンジで解凍するような感じでジュレを食べれるようにして、3人分用意した。


 あとはこれを2人に持っていくだけだけど、なんとなく気まずい。まだあれから一度も会話をしていないから余計だ。


 これがきっかけで会話が出来ればいいのだが……。


 俺はジュレを持って、2人がいる岩の方に行った。



「いやー、あの、お、お腹も空いただろうから、ジュレを持って来たよ」



 くそー、なんで俺こんなに緊張しているんだろう……。

 


「……ありがとう」



 ミルネは俺と目線が合うことなく、弱弱しい声で返事をしたが、この感覚は以前のダンロッパの時に見せた憂鬱な感じに似ている。そして、ミリちゃんに至っては完全にスル―だ。


 俺は少しでも会話をしようと思っていたけど、この空気の重さに耐えきれず、その場を離れてしまい、また振り出しに戻ってしまった。




 結局、一言も会話をすることもなく時間だけが過ぎて行き、床に就くことになった。当然だが今夜は俺一人になりそうだ。


 うぅぅ、寂しい……。


 一人で寝るなんて当たり前のはずなのに、何でこんなに寂しいんだろうか?  

  

 






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