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第81話 再びテレポート

 意識を失ってから、どうなったのか分からない。でも、俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。



「マユリン、起きて」



 うーん、俺を呼ぶ声は、ミルネか.....。

 

 どうやら俺は眠っていたようだ。そして、ゆっくり目を開くとミルネとミリちゃんが屈んで俺を起こそうとしていたが、表情はどこか暗い。

 

 いつもなら俺が先に起きるから、こんな光景は見た事が無い。



「マユリン、もうお昼だよ」

「うーん、え!?」



 もう昼かよ!? そんなに俺は寝ていたのか? て、いうかここは何処だ? 

 昨日の記憶がお酒を飲み過ぎたように無い。特に禁じ手を使ってからがどうなって現在に至ったかが、全く分からない。

 でも、2人が無事みたいだから、上手くいったみたいだけど。



「2人とも怪我とか無いか?」

「無いよ。それよりここ何処? あたし達小屋で寝たはずなのに」

「ミリは真由ちゃんとずっといた」



 そうか2人とも昨日魔王軍が襲撃して来たことを知らないのか。なら無理もないか。

 ここは何処かは分からないが、森の中の岩陰で周りから見えにくいような場所だ。  

 そこに寝袋を敷いてその上に俺が今、寝ている状況だ。


 でもあの禁じ手は理性が飛んでしまうから、この寝袋を敷いてくれたのはこの2人のどちらかだろう。

 とりあえず起きるか。



「いたたたたー」

「どうしたの? マユリン?」



 俺が起き上がろうとしたら、全身筋痛のように痛くて動けなかった。しかも、オーガに一発喰らったダメージがあるみたいで、ただで済むはずがない。


 アルシアの事もあるし、この2人にはこれ以上心配事を増やしたくないから、怪我の事は伏せておこう。



「昨日、少数の魔王軍がやって来たから、ここまで逃げて来たんだ。まぁ、そのせいで筋肉痛になってしまって」


「あ、ごめん。それあたし達のせいだよ。魔王軍の領域から高速移動したから」

「いや、そのお蔭でアルシアを助けられたんだから、気にする……ことなく……」

「……」 



 2人ともアルシアの名前が出ると、急に落ち込んでいくのがはっきりと分かった。 

 やっぱり心配でしょうがないんだろう。実際俺も、無事を確認出来るまでは不安だ。だから、もう一度今晩に様子を見に行きたい。

 


 

 それからは特に話すことも無く、下手に動いても魔王軍に見つかるかもしれないので、移動もせず、ただ時間だけが過ぎ去った。


 


 ――そして、日も落ち始めた頃、俺の腹の虫が鳴き出した。気づけば、朝から何も食べていない。

 

 そんな気分じゃなかったから忘れていたけど、流石に何も食べないわけにはいかないから、少し早い夕食にした方がいいかもしれない。



「そろそろお腹空かないか?」

「うーん……。マユリン、もう一回アル姉の所に様子見に行くの?」

「ああ、ミリちゃんが大丈夫なら」

「ミリは大丈夫」



 2人ともアルシアの事が心配で、食事どころではないのだろう。俺も本音を言うとそうかもしれない。

 ミリちゃんの魔力が復活しているみたいだし、先に様子を見に行った方が良さそうだ。



「よし、それじゃあアルシアの様子を見に行こう。ミルネはその間ここを守ってくれないか?」

「分かったよ」



 ミルネは、以前に俺が上げた素材ホーリの剣を取って、敵襲に備えた。もしこの付近に魔王軍が居れば、ミリちゃんのテレポートですぐに駆け付けて来るだろう。



「ミリちゃん、準備はいい?」

「いい。行くよ真由ちゃん」



 ミリちゃんはもうすでに行く気満々だった。もしかして2人とも俺が声を掛けるのを待っていたのかな?

 そして、いくらもしないうちにミリちゃんの魔力は溜まり始め、前回同様に周囲が白い光に包まれた。



「テレポート!!」



 ミリちゃんがそう言った直後に俺は、光の外側に出た。


 すると、またもや無垢朗の部屋の中で、無垢朗はパソコンに向かって何かの作業をしている所だった。当然ながら突然現れた事に驚いているのは、一目で分かった。



「突然で悪い! 時間が無いんだ! アルシアの容体はどうだ!?」

「ほ、本当にびっくりしたよ。もう大丈夫だよ。身体の方はほぼ完治したよ」

「いや、いくら何でもそれは早過ぎないか!?」

「それはね、カリ……ううん、あの魔法使いの魔法を、医者の指示通りに使って、手術をしたからすぐに良くなったよ。本当凄いよ。魔法と医学の合わせ技で―――」



 多分、医者の手となってカリバーが魔法で、切開したり繋げたりしたんだろう。それが上手くいったから、無垢朗が自慢げに話そうとしているんだけど、今は時間が無い。



「悪い無垢朗! 時間が無いんだ! とりあえず大丈夫なんだな。次いつここに来れるか分からない! それまでアルシアのことは頼んだぞ!」


「え!? ちょっと待ってくれよ! 彼女のメンタルが異常に良く無いんだけど、何かあったのかい?」


「……」

「真由ちゃん、早く!!」



 ミリちゃんの魔力が限界に近づいて来ているから、戻らないと行けないが、無垢朗が言ったアルシアのメンタルが気になってしまう。



「いや、すまん! 一旦戻る」

「真由ちゃん!」



 俺は無垢朗に何も言えず、一言だけ謝って光の中に飛び込んだ。

 一体何を謝っているんだろう? 俺.....。


 アルシアがそんな状態なのに、何も出来ない事なのか?

 そんな大事な事を無垢朗に丸投げしてしまった事なのか?


 両方なんだろうな……。


 何かいい方法は思いつかないけど、ミルネとミリちゃんも連れて見舞いに行ったら、少しは元気になってくれるかな……。


 でも、その前に俺の正体を言わないと、いけないと思う。


 

お読み頂き、ありがとうございます。


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