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第8話 異世界の食事

 食堂にはもう数十人の寮生が集まっていた。

 長いテーブルと椅子があり、卓上に部屋の番号が書かれた紙と、赤、青、緑、黄色のゼリーみたいなものが、それぞれの皿に並べてあった。



「何これ……」

「何って『ジュレ』だよ。何かおかしい?」

「い、いや……何でもないよ」

「???」



 下手に声に出すと、墓穴を掘ってしまうな。

 

 今の場合だと、普通の食パンを見て「何これ」って言ってるのと同じだ。

 またアホだと思われてしまう。気を付けないと。

 

 しかし、この『ジュレ』というものは、そのまま食べていいんだろうか? 

 まずは様子見だな。



「どれから食べようかな……。青ジュレにしようかな」



 ミルネが青色のジュレを取ったので、続いて俺も、青色のジュレを取った。

 

 

「マユリンも青ジュレにするんだ。これ、そのままでも美味しいよね」

「う、うん。」

 


 ミルネは青ジュレをそのまま食べた。

 「そのまま」というのが気になるが、俺もそのまま食べた。

 

 これは……微妙……。


 どう表現していいかわからない味だが強いて言うなら、こんにゃくみたいな素朴な感じか。

 これを上手く『食レポ』が出来たなら、そいつは才能があると言っていいぐらい特徴が無い。

 

 

「マユリン、青ジュレって何から出来ているか知ってる?」

「うっ」



 わざわざ質問してくるということは、答えられなくても変じゃないという事だよな?



「し、知らないよ」 

「あたし生産部の授業で習ったから、知ってるんだよ。それ魚なんだよ」

「魚!?」

「魔法で食べやすくなってるんだって」



 余計なことするなよ!! 普通に焼いて食え! 



「魚だったら、普通に焼いて食った方が旨いと思うけど」

「あははは、そんな原始的な食べ方しないよ。気持ち悪いし」

「気持ち悪い?」

「そのまま姿で焼くんでしょう?」



 魚の姿が嫌なのか? 焼くのが駄目なのか?



「焼かなくても、刺身なら生でもいけるよ」

「マユリンの野蛮人」

「ぬっ」


 

 俺はいつか、こいつに焼き魚を食わして「旨い」と言わせたくなった。確か、サバイバルグッズに調味料持って来てたよな。



「じゃあ、他の色のジュレも、野菜とか果実か?」

「そうだよ。緑が野菜で、黄色が果実。それで赤が魔物肉だよ」

「こんなゼリーばっかだったら飽きないか?」

「ん? 普通だと思うけど……。なんかマユリンって違う世界から来た人みたい」



 しまった。こっちの世界の感覚で話さないと。



「えーと……そういう意味じゃなくて……うーん」



 駄目だ。何も思い付かない。



「分かった! 魔法の『テイスト』のことを言ってるんでしょう!」

「そ、それだよ! そのテイストだよ!」


 

 『テイスト』って何だよ! なんとなく分かる気もするが……。



「あたし魔力に余裕がないから、授業以外は節約してるんだ。寝る時も魔法使わないから、寒むいよ。でも、マユリンのお蔭で、暖かくて良かったよ」



 俺を湯たんぽ代わりにしてやがる。



「テイストしたほうが美味しいんだけど……。やっぱり魔力がもったいないしね」



 今の会話でテイストとは、魔法で味付けするということだろう。



 コーン、カーン、キーン



「あ! 急がないと授業が始まるよ」

「相変わらず、リズムも音色も無いチャイムだな」


「マユリンはもうどの授業に出るか決めたの?」

「うーん、授業というか……システムがよく分からんからな」

「じゃあ、教えてあげる! 早く食べて校舎に行こう」



 俺とミルネは急いで食事を終わらせ(と言ってもゼリーだからね、あれを食事と言えるかどうかは別にして)校舎に向かった。

 


 ここは、面談に行った時の近い場所の出入り口付近だ。昨日はあまり人に出会わなかったからか、今は凄く人が多く感じる。

 

 みんな掲示板を見て確認しているようだが、多分あれに今日の授業の予定が書いてあるんだろう。



「あの掲示板だよ。人気の科目はすぐ席が埋まるから気を付けてね」

「どれを選んでもいいのか?」

「マユリンは何を専攻したの?」

「『魔法戦士』だけど」



 確かに掲示板には、『魔法戦士』と『魔法生産』に分かれている。



「じゃあ、あたしと同じだね」

「ミルネもそうだったのか」

「簡単に言うとね魔法戦士の科目は全部で、魔法生産の教養科目も受けれるよ」

「なるほど。『専門』と『教養』があるのか」



 でも、ここの学園って、最終的にランクを上げる事が目的だから、授業受けたからってなれるわけじゃないんだよな。



「そろそろ、あたしもう授業に行くね」

「ああ、ありがとう」

「じゃあね、マユリン」



 さてと、俺も授業を選ばないとな……。


 まず魔法が使えない以上、技能系の授業は外そう。なるべく基本的な学科の授業を選ぶ方がいいだろう。

 

 そうなると……これと...これぐらいがいいのかな...。

 おお! 『体力トレーニング』というのがあるぞ。体力だけだったらいけそうな気がする。



 よし、今日の授業は生産部の『魔動鉱物の基礎』『素材の基礎』と戦士部の『討伐隊の基礎』とさっきの『体力トレーニング』にしよう。


 意外に生産部の授業の方がここの世界の事がよく分かるかもしれない。

 

 まずは生産部の『魔動鉱物の基礎』からだな。場所は二階の教室か……。

 俺は授業を受ける為、教室に向かった。

 

 そして、教室に入った瞬間、みんなが俺を見てざわめいた。

 教室にいた生徒はほぼ男子だった。本来なら問題無いが、美少女だとなんかちょっと入りづらい……。


お読み頂き、ありがとうございます。


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