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第79話 一致団結!!

 俺がアルシアを助ける方法があると言うと、泣き崩れていたミルネとミリちゃんは顔を上げた。

 ポンタは俺がどんな方法を言うのか分かったのか、ゆっくりと頷いた。



「アルシアの為にも、落ち着いて聞いて欲しい。いいね?」



 俺が真剣に語り掛けると、ミルネとミリちゃんは涙を拭き取り、力強く頷いた。

 2人ともアルシアを助けたい気持ちは同じで、不可能だと理解していても、僅かでも可能性があるならそれに賭けてみたいと思ったのだろう。


 それとも単純に俺を信じてくれたのだろうか?



「ミリちゃん、今からテレポートをしたいんだけど出来るかな?」

「魔力を溜める時間が欲しい」

「分かった。早速取り掛かって。その間ミルネは、どんな魔法を使ってもいいから出血を止めて欲しい」


「分かったよマユリン。拘束系の魔法で止めてみるよ」



 俺の指示通り、2人はすぐに取り掛かってくれた。



「元主よ、吾輩にも手伝えることはありますか?」

「ポンタは、護衛を頼みたい。余裕があるなら、アルシアをこんな目に遭わせたガムイという男が、その辺りに転がっているはずだから、拘束しておいて欲しい。俺は鞄の中にあるテレポートに必要な石を小屋に戻って取ってくるから」


「分かりました元主よ」



 それにしても石があって良かった。

 あれでカリバーのいる所に行けるはずだから、直接組織に入ることが出来る。組織の施設内に医療施設もあるから、すぐに治療が可能だ。


 俺は高速移動で一旦小屋に行って、鞄の中から石を取り出し、再び高速移動で戻って来た。1分もかかかっていないが、一刻を争う事態だけにとても長く感じた。



「元主よ! ガムイは他の仲間がいまして、仲間の高速移動でここを離れました」



 俺が到着すると、ポンタが草木が生い茂る所から出て来て、俺の姿を見るなり呼びかけた。


 まさか仲間までいたとは思わなかったが、今はそんな事はどうでもいい。とりあえず、逃げたという事は、ここにはもう戻って来ないだろう。



「ミリちゃん、準備はいいか?」

「いつでもいい」

「ミルネは……って、大丈夫か?」



 ミルネはとても辛そうな顔で、残り少ない魔力を絞り出して出血を止めているようだ。恐らくここに来るまでに高速移動で相当魔力を消費したんだろう。



「ミルネもういいよ。あとはなんとかするから」

「ごめんマユリン……もう魔力が」

「戻るまでここで休んでいいから」

「でも、最後に……」



 ミルネは最後の魔力を振り絞って、魔法で出血を止めた。



「これで少しの間……止まっているから.....あとはマユリン……」

「分かった! ありがとう! 必ず成功させるから!」



 力尽きたミルネはその場に、ゆっくりと倒れ込んだ。



「よし、行くぞ! ミリちゃん、この石で俺が行きたい所に行けるか?」

「大丈夫、もう片割れの魔動石の所まで行ける」

「ポンタ、アルシアを宙に浮かして運んでくれ」

「分かりました、元主よ」



 まさかこんな形で元の世界に帰るとは思っていなかった。しかし、全員連れて行く訳にも行かない。

 かと言ってアルシア一人も辛いから、ここは二つの世界を知るポンタが一緒の方がいいだろう。

 

 

「じゃあ、ミリちゃんテレポートを頼む」

「分かった」

「ポンタはアルシアと一緒に居てやってくれないか? これはポンタにしか頼めない」

「分かりました! 元主よ」



 ポンタは快く二つ返事で答えてくれた。元々そういうやつだけど、俺の意図を汲み取ってくれた気がする。

 そして、その間もミリちゃんの魔力がぐんぐんと大きくなり、やがて周りが白く光り始めた。これは俺がここに来た時に、カリバーがやったテレポートと同じだ。


  

「テレポート!」



 ミリちゃんがそう言うと、一気に周りが真っ白になった。



「ミリちゃん、すぐにまた戻るからそのままの状態にしといて!」

「ま、真由ちゃん、そんなに長く持たない」



 前回のテレポートで要領は分かっている。白い光で周りが見えないがここはもう日本に着いているだろう。そして、ここは組織の中の無垢朗の部屋の中か、カリバーの所か、どちらかと言ったところか。



「ポンタ! アルシアをこの光の外に!」

「はい! お任せを!」



 俺とポンタ、そして宙に浮いたままのアルシアは、光の外に出た。すると、俺の予想通りに無垢朗の部屋の中で、無垢郎は突然の出来事に茫然としていた。



「無垢朗!! 頼みがある!! 時間が無いから手短に言うぞ! アルシアって言うこの女の子を緊急手術して欲しい! 重症なんだ! 詳しい事はお前が俺にくれたヌイグルミのポンタに聞いて欲しい!」


「い、一体どうしたんだい!? 何を言っているんだい!?」

「真由ちゃん、早く……もう限界」

「じゃあポンタ! アルシアを頼む!」

「はい、元主よ!」



 俺はポンタにアルシアのことを任せて、再び光の中に戻った。



「ミリちゃん、もういいよ」



 ミリちゃんは俺が戻ると魔力をさらに上げて、再び強い光を放ち、元の場所に戻ることが出来た。

 すると、到着した途端にみりちゃんはその場でしゃがみ込んでしまった。恐らく魔力を使い果たしてしまったのだろう。


 そして、俺達が戻って来ると座り込んでいたミルネは顔を上げたが、大分疲れ切っているようだ。



「マユリン、アル姉は? もう大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫。また明日様子を見に行こう」

「はぁー、良かった……」



 ミルネは安心したのか再び俯いた。と言うより眠ったと言ったほうがいいだろう。

 ミリちゃんも疲れて今にも寝そうだし、魔力を使い果たすとスリープ状態に陥るのかもしれない。


 でもこんな場所で寝るのは危険だし、風邪を引くかもしれないから小屋に戻りたいところだが、この2人は歩けるかな?



「ミルネもミリちゃんも、小屋に戻るけど歩ける?」

「……」

「……」



 うーん、2人とも動けない感じだな。しょうがない肩を貸すか。

 

 俺は2人を起こして、肩に掴ませて歩いて戻ったが、途中でミリちゃんが完全に眠ってしまったので、おんぶしながらミルネを支えた。

 こんな状況だけに小屋まで戻るのに結構時間が掛ってしまい、俺も疲れた。


 とりあえずこの2人の上に座らせてみたが、流石に3人寝るのは無理そうだ。

 仕方ない、俺は床で寝るか……。


 しかし、俺が立ち上がって2人を寝かせようとすると、俺の腕にしがみ付いてきた。それは、子どもがお母さんから離れたくないという感じだ。



「おい……」



 再び俺は座り、両脇にミルネとミリちゃんを寝かせるようにして、腕で支えた。

 こうしてみると、2人とも子どもみたいで可愛い。こうやって普段も大人しくしていてくれていたらなぁ。


 でも、こう見えてもしっかりと討伐隊してるんだよな。

 今思えばここに来た時、ミルネがミリちゃんを抱っこしてきたのは、サポータとしてSランクのミリちゃんに余計な魔力を使わせない為なんじゃないか? ポンタは先導と護衛役で。


 おかけでミリちゃんは魔力を消費することなく来れたので、魔力消費の激しいテレポートが使えて、アルシアを助けることが出来た。


 2人ともよく頑張ったよな。


 俺はすやすやと眠るミルネとミリちゃんの頭を撫でた。そして2人を見ていると、ある考えというか決意というか、そろそろ本当の事を話さないといけない気がしてきた。


 俺が別の世界から来たという事と、そして……。


 俺が男である事……。


 今はまだアルシアの事が心配だし、これ以上混乱させたくないから言えないけど明日もう一回行って大丈夫なら、本当の事をこの2人に話そう。


 受け入れてくれるかな……。



 っと、その時!!


  ガサガサガサ


 ん? なんだ今の音? それに外から魔力を多数感じるぞ。

お読み頂き、ありがとうございます。


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