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第70話 アンデッドの倒し方

 俺とアルシアは第一中継ポイントに向けて、道なりをやや早いペースで進み、日はすっかり高くなった。

 そして、こんな山奥なのに民家4軒しかない集落を発見して立ち止まった。もしこれが日本だったら廃村と思ってしまうほど過疎化した集落だ。



「アルシア、こんな所に人が住んでるんだな。魔物が現れたら、どうするんだろう?」

「市街の人は貢納金を収めるから、学園管理でやってるけど、区域外なら、どちらかの学園に魔力コインか、農作物を収めて討伐隊を依頼するみたいよ」



 今の話だと、区域内と外で優劣があるのかな? 



「真由の出身も区域外だと思っていたけど、違うのかしら?」

「俺の出身は……」



 どこだったっけ? 忘れた。

 確か、Cランク試験の受付で初めて聞いて、心の中でネトゲ廃人にツッコミを入れたのは覚えている。


 流石に出身地を忘れるのはまずいだろう。ミリちゃんみたいに頭を撫でて話題を変えるわけにはいかない。しかし、俺が脳みそをフル回転させて、記憶を呼び起こそうとしていたら、アルシアが静かに口を開いた。



「真由、区域外だからって恥じる事は何もないわ。市街の人が偉いとか私は思わない。こうして真由も学園に入学出来て、討伐隊長になっているじゃない。もっと自信持っていいと思うわ」



 いや、そんな重たい話でなく、ただ名前が出てこなかっただけなんだが……。

 逆にアルシアを騙しているみたいで……いや、実際騙しているんだけど……うーん、心が痛い。



「ありがとう、アルシア」

「うん、先を急ぎましょう」




 アルシアがそう言うと、率先して歩き始めた。

 俺は、ただアルシアの後ろ姿を見て付いて行くわけだが、その姿を見ていると忘れていた事を思い起こされる。

 

 そう、それは俺が男である事、異世界から来た事を隠している事が気になってしまう……。

 その度に憂鬱な気分になり、みんなとの仲が深まりにつれて酷くなっていく……。

 ミルネやミリちゃん、そしてアルシアの事を大事に思うと余計だ。


 いつか本当のことを話さないといけないと思うが、時間が経つほど簡単に決心がつかなくなっていく。


 うーん、いつか言わないといけないんだが……。

 




 こうして、歩き続けてから数時間経過して、周りが森の中ということもあって、辺りは暗くなって来た。すると、アルシアは突然立ち止まった。

 

 

「どうした? アルシア?」

「魔物の気配を感じるわ」



 アルシアに言われるまで気付かなかったけど、確かに近くに魔力の気配がする。

 これがもしかして、この少し違う感じの魔力はアンデッドなのでは? 



「真由、気を付けて! 魔力はの乱れがあるわ。アンデッドかもしれない」

「依頼で言ってたやつか」

「真由、警戒して!」

「あ、はい」



 アルシアの発した一言で、一気に緊迫した空気に包まれた。しかし、周囲は木々が生い茂っていて、遠くまでは見渡せない。

 

 

「どういうことかしら? 強い魔力も感じる」

「アンデッドの他にも何かいるのか?」

「真由、これは厄介よ! アンデッドで魔力を乱されたら上手く魔法で戦えなくなるわ」



 俺は……それでも大丈夫だけど。


 すると、薄暗い木々からその名通りのアンデッドが、ぞろぞろと現れた。



「スゲー! ゾンビみたいだ。これが死体に自然の強い魔力で蘇ったアンデッドだろ? あれ? アルシア?」



 アルシアは頭を抱えながら、しゃがみ込んでしまった。



「どうした? 具合でも悪いのか?」

「ごめん。魔力が上手くコントロール出来なくて……。少し暴走気味なの。真由は大丈夫?」

「うん、俺はあんまり影響ないかな」

「凄いわ。この状況でもコントロール出来るのね」



 いやー、単に感知して無いだけだと思うが。



「アンデッドは素材にデザインするのと同じで、50%以上破壊すれば再生出来ないから倒せるわ。こっちの魔力も乱されるから、いざという時は魔力弾を使いましょう」


「パンダライフでもらったやつだな。俺はいいから、アルシアが使えよ」

「真由は大丈夫なの?」


「俺は大丈夫。それに強い魔力を持った魔物もいるんだろう。その時に備えておいて欲しい。俺がこのアンデッド倒すから」

「分かったわ。ありがとう」



 よし、触りたくないから棒を拾って、MPCで倒すことにした。

 しかし!



 バコッ!


 バターン



「え?」



 力加減を試す為に、一回普通に棒で殴ったら、一発でアンデッドを倒すことが出来た。



「これがB級かよ!」

「真由、凄いわ!」



 恐らく、この世界の人間は、魔法で何でもやろうとするから、こんな弱いアンデッドをB級に設定したのだろう。けど、こんな魔物はD級で十分だ。


 

「アルシア! 魔法使わないで棒で殴れば簡単に倒せるぞ!」

「駄目よ! 魔物はちゃんと魔法で倒さないと」



 うーん、アルシアには魔法を使わず、棒で殴るという発想が無いのかもしれない。

 アルシアはみっちり勉強して、努力を重ねてSランク候補まで駆け上がった優等生だから、俺みたいに棒で倒そうなんて邪道でしかなのだろう。

 

 俺の世界ならこういう時は、使えそうな『物』を探すけど、この世界では使えそうな『魔法』で何とかしようとする。多分、この違いだけかもしれないが。



 そして、アンデッドを次々と倒していくと、突然強い魔力を持った魔物が姿を現した。



「アルシア、あいつが強い魔力の持ち主か!?」

「あの魔物はS級の『キメラ』よ!」

「またS級かよ!」

「でも、真由がアンデッドを倒しくれたから、魔法が使えるようになったわ」



 その魔物の顔はライオン、尻尾が蛇、背中にはドラゴンのような翼があり、複数の動物が合体したような姿だった。

 

 

「こいつもしかして、空を飛ぶのか?」

「鳥みたいに飛べないわ。でも、飛び移るぐらいの飛行は出来るから気を付けて!」



 このキメラという魔物は、以前に倒したアジリと共通するものを感じる。

 こいつも素早い動きをするのかな?


 そして、キメラは体勢を低くして翼を広げ、今にも飛びかかろうと言わんばかりの気迫を見せた。



 よし、俺はこいつで『アグリケーション バージョン3』を試してみようと思う。

 前回のスライム戦で、MPCの打撃と魔力の攻撃が同時にすると、一気に魔力が、調整出来ずに暴発したから、今回は時差攻撃で挑戦だ。




お読み頂き、ありがとうございます。


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