第69話 真由との別れ
第2の依頼で二手に分かれる事になったが、行先とメンバーは、自然に決まってしまった。
「二手に分かれてしまったら、お互い連絡は取れなくなるのかな?」
「魔王軍領域に行くなら避けた方がいいわ。魔王軍に居場所を教えるようなものだから」
一応、連絡は取れるみたいだが、魔力を使用するから使わない方が良さそうだ。
そして、アルシアは本部に報告するため、少し下がって魔法に集中し始めた。
その間にミルネは、少し切ない表情で俺の所に近寄って来た。きっと暫し俺との別れが惜しいのだろう。
「マユリンとお別れか……今の内にギュッとしよう」
「ギュッとするな!」
ミルネは俺の左腕を掴み、顔を寄せてきた。そして、それに触発されたのか、ミリちゃんまでも俺の右腕にしがみ付いた。
「たった一日に大袈裟過ぎるだろ!」
「マユリンとは一日3回はモフモフしたい!」
「ミリちゃんとすればいいじゃないか」
うーん、この2人が寝袋で一緒に寝ると、ミリちゃんはどういう風になるんだろう?
アルシアの時みたいに、大人しくなるのか? それとも俺みたいに理不尽に拘束したり、よく分からんプレイをするのか?
多分、後者の方だろうな。アルシアの場合は、お姉ちゃんオーラにミリちゃんが甘えているような気がする。
そして、ミルネにはそのオーラが無い。だから俺と同じよな扱いになるんじゃあないかな?
「ミルネ気を付けろよ。ひっひっひー」
「マユリン?」
「ミリちゃんの言うことに逆らうと、拘束されるぞ。ひっひっひー」
そうさ、俺はいつもやられているから、たまにはミルネもやられればいい。
すると、その会話を聞いたミリちゃんは、腕にしがみ付いたまま顔を上げた。
「真由ちゃん、拘束されるのが好きだからやっている」
「えぇぇぇ!!!???」
突然、可愛い顔したこいつは、急に何を言い出すんだ!? 俺が拘束されるのが好きだからやっているってどういう事だよ!?
「マユリン、拘束されるの好きだもんね。ミリちゃんと仲良くなるまで知らなかったよ」
「おい! 俺が変態みたいなことを言うなよ! 何でそうなるんだよ!」
「だってマユリン、簡単に拘束魔法に掛るし、魔力解析もしないんだもん」
「ミリが掛けた魔法は、解析簡単」
そうだったのか! また俺はこの世界の常識外れなことをやっていたのか。
うーん、やばいなー。
ミルネをからかったつもりが、逆に俺がピンチになりそうだ。
「じゃあ、なんでマユリンって、拘束魔法されたままでいるの?」
「それは……」
なんて答えたらいいんだ? 正直に言えば面倒なことになるかもしれない。一応俺はCランクの魔法使いだから、それぐらいは出来ないと変だし、だからと言って変態を認めるのもなぁ……。
俺がどういう回答すればいいか悩んでいる時、報告を終えたアルシアがこっちを見ていた事に気付いた。
「アルシアは報告を終えたみたいだし、この話は止めよう。次行ってみよう!」
「マユリン?」
俺は半ば無理やり会話を終わらせて、腕にしがみ付くミリちゃんの頭の撫でた。
こうすることでミリちゃんは少し大人しくなる。
そして、今度はミリちゃんが俺の頭を撫で返してくれる。これは一種のコミュニケーションかもしれない。
「マユリン、あたしも撫でてよ」
そのやり取りを見ていたミルネが、羨ましそうにしていた。
この2人から話題を逸らすのは、そう難しくはない。
こうして、いよいよ二手に分かれる時がやって来た。といっても、早ければ明日の晩にはまた会えそうだけど。
「じゃあ、マユリンお別れだね」
「ポンタの言う事をよく聞くんだぞ」
「真由ちゃんと離れても、ミリのものには変わりはない」
「どういう別れ言葉だよ!」
ミリちゃんは相変わらずだけど、しばらくは俺にとって安心して過ごせそうだ。
これから二手に分かれるが、方角的には、ベルリア学園が東方向で、魔王軍の領域は北方向になる。
俺とアルシアが向かう第一中継ポイントの小屋は、ベルリア学園と同じ方角になるので、引き続き来た道を進む。
一方の魔王軍の領域はここから北東に進み、魔王軍に向かう為の道というものは存在しない為、道なき獣道を行く事になる。
うーん、俺とアルシアは道なりに進めば目的地に着くが、ミルネとミリちゃんは道が無いから、大変かもしれない。
ここはポンタに任せよう。
こうして俺達は、それぞれの目的を達成する為、別々の道を突き進むことになった。
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