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第66話 女将、絶体絶命!?

 ポンタは、俺が眠ってしまった後に起こった出来事を、みんなに話してくれた。

 



 ――――――俺が眠った後の話。




「やっと眠ったか」



 そう呟きながら部屋に入って来たのは、まるまると太った若い男だった。



「くっくっくー、魔力感知炎で警戒していたみたいだが、マジックテックの要の僕にそんなのは無駄さ。食事を持って行く時に、盗聴の魔法を仕込んでおいたのさぁ。しかも、微量の魔力だし、魔力感知炎を出す前に仕掛けてあるから、炎の色はほとんど変化しない。そして、全員が就寝したのを確認して、拘束魔法をかければ、それで終了ということさぁ。くっくっくー」



 この男は、誰に説明するわけでもなく、笑みをこぼしながら独り言を呟いていた。



「では、早速拘束魔法を……ん? え!? なんだこの可愛い生き物達は!?」



 この男が拘束魔法を掛けようとした時、布団の中で寄り添うように寝る姿が目に入り、あまりの可愛さについ固まってしまったようだ。



「なんだこれ……ずっと見ていたい……いや、見るだけでいいのか.....ちょっとぐらい……ん? 端の方で倒れているツインテールの女の子も可愛い過ぎるだろ! どうなっているんだよ! この討伐隊は!? くっくっく! 僕は運がいい。拘束魔法を掛けた後は、美味しく頂こうかなぁ。くっくっく!!」


「そんな事は、吾輩が許しません!」

「げっ!! 誰?」

「吾輩の名前はポンタ。元主からの命により護衛を任された。こういう事もあろうかと、元主の考えでヌイグルミのふりをしていた」


「へ?」



 この男の前に登場したポンタであったが、見慣れない姿にこの男は、動揺を隠せなかった。



「一人で喋ってくれたおかげで、聞く手間は省けた。主たちを襲撃すると言うなら覚悟してもらう! マジックテックの要!」


「ちょ、ちょ、ちょっと待った! 僕はCランクのミツオって言うんだ。マジックテックだけど、戦闘はまだ授業で習ってないから勘弁して欲しい」


「ならば降参せよ」



 この男ミツオは、授業で戦いを習ってないという理由で降参して、その後女将が駆け付けて引き取った。



 ――――――以上がポンタの話だ。



 マジックテックは卑怯三昧だな。それにタイミングよく女将が登場して、引き取って行くのも変な話だ。聞けば、このミツオという男にも拘束魔法はかけていないみたいだし。

 

 てか、どんな女将やねん!



「ポンタの話からも、この宿に泊まる話があった時点で、マジックテックの作戦は開始されていたんだろう。状況からしてそのトップは女将だろうから、後で問い詰めよう」


「真由、もしそうだったら女将さんがこのまま大人しくしているかしら?」

「うーん、そうだな。最後にせこい事をしてきてもおかしくは無い」



 俺達は、女将が襲撃してくるとも考え、速やかに出発する準備を済ませた。 

 そして、警戒しながらフロントまで移動したが、特に何も起きる気配は無く、ただ爽やかな朝の光景が広がっていた。

 

 しばらくすると、フロントの奥から女将が、特に変わった様子も無く現れた。



「おはようございます。ゆっくり休まれましたでしょうか? この度はご宿泊して頂き、ありがとうございました。またのお越しを心よりお待ち申し上げております」


「何普通にやり過ごそうとしているねん! 鳥もなんか言え!」


「おほほほ、何の事でしょう?」

(うるせー! 帰れ! 帰れ!)



 何か仕掛けて来ると思っていたが、普通にやり過ごそうとしているぞ。

 それとも、また油断させて奇襲を仕掛けて来るのか?

 

 こうなったら、もうはっきりと言った方がいいかもしれないな。



「女将さんがマジックテックのボスなんだろ?」


「おほほほほ、そんなご冗談を」

(頭おかしいのか? このメスガキが!)



 その時、フロントの奥から、この宿を案内したイゴシが出てきた。



「ヨセノさん、この方達はもう気付いていますよ」

「おほほほほほ、はて? はて?」



 え? この女将はまだしらを切るようだ。

 ならば、これでどうだ。



「女将さん、昨夜拘束魔法を掛けていない状態のトバコを普通に連れて行ったけど、普通の女将ならそんなこと出来なよね?」


「おほほほほほほ、はて? はて? なんのことやら、おほほほほほほ」



 うん、もう笑うしかないようだ。

 しかし、またフロントの奥から、昨日襲って来た3人が出てきて、その内の一人が女将さんに話しかけた。



「ヨセノさん、僕たちは一人も倒せなかったから、あと全員お願いします」

「おほほほほほほほ」

「真由ちゃん、あれ欲しい」

「おほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ」



 女将はいかれたロボットみたいに笑い続けた。



「みんな警戒しろ! 何かしてくるかもしれないぞ!」

「おほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ」

「ミリが倒して、鳥をもらう」


「おほほほほほほほほほほほほのーほっ!!!」



 しばらくすると、女将の笑いを止まり、朝の静けさが戻った。そして……。



「すまん」

「何だよそれ」

「女将が悪かった。本当にすまん」

「喋り方が変わってるじゃないか!」



 女将はなぜか別人のようなキャラに変わり、頭を下げて謝罪した。



「謝るという事は、認めるんだよな? なぜこんな事をしたのか教えてもらおうか」


「話せば長くなりますが、ミリさんが討伐隊を編成したという情報を受け、調査する任務を受けました。でも、あわよくば『降伏の魔力印』を獲得出来ればと思い、このようなことになりました」


「割と短い話だったな」



 ベルリア学園もミリちゃんが討伐隊に入ったことを警戒していたんだろうな。

 でもここはマジックテックを通じて、敵意が無いとこを伝えれば今後の話がスムーズに進むかもしれない。


 そして、女将はミリちゃんの前まで近寄った。



「討伐隊長のミリさん、今回の件はすみませんでした」

「違う」



 ミリちゃんは珍しく全力で否定した。それもそうだ! 隊長は俺なんだからなっ!



「ミリさんじゃなくて、みりちゃん」



 そうだったよ、ミリちゃんはそこにしか興味がなかったんだ。

 女将も動揺しているな。



「あの喋る鳥が欲しい」



 ミリちゃんは鳥の方を指さした。



「この鳥は喋ったりしないんです。これは私の腹話術です」

「女将、もう一回謝ってもらおうか」


お読み頂き、ありがとうございます。


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