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第62話 魔法版ボードゲーム

 俺とアルシアが部屋に戻ると布団が燃えていて、そこにミルネとミリちゃんがいた。



「ミルネ!? 敵襲か!?」

「違うよ、ミリちゃんが布団を燃やしているだけだから、大丈夫だよ」

「そうか、ミリちゃんが布団を燃やしているだけか……って、おい!」



 宿の布団を燃やしておいて大丈夫っておかしいだろ! というか、一体何があってこうなったんだ? 

 本人に聞いてみるのがいいが、果たして満足のいく回答が貰えるかどうか……。



「ミリちゃん何やっているの?」

「要らないから燃やした」



 うーん、確か人数分あって、燃えている布団は2人分だ。

 人数分あるのになぜ要らない? 

 そして仮に要らなかったとして、なぜ燃やす? 

 

 これは、以前に寝袋を燃やした時と同じなんだろうが、今回は宿の物だぞ。



「あのー、ミリちゃん、これは人様の物だから、燃やしたら駄目だよ」



 俺がそう言うとミリちゃんは、ジト―とした眼で俺を見てきた。

 こんな眼で見つめられたと時は、今までろくなことが無かったから、今回も何かされるかもしれないと警戒した。しかし!



「ミリちゃん、人様の物をこんな事したら駄目でしょう!」



 アルシアが注意したが、もし、これが俺だったら、拘束されて変なことをされるだろう。果たしてアルシアの場合はいかに……。



「……ごめんなさい」



 ミリちゃんは下を向きながら、ぼそぼそ声で謝った。

 

 そんなバカな!? あのミリちゃんが素直に謝るなんて!?

 どうやらミリちゃんはアルシアの言うことは聞くみたいだ。何故だ!?



「分かればいいのよ。焦げた床とかちゃんと戻しておくようにね」

「うん、分かった」



 ミリちゃんはアルシアの言われた通りに、恐らくデザイン系の魔法で、床を修復した。

 

 残った二つの布団は、なぜか合体して一つの大きな布団になっていた。これはミリちゃんがみんなと一緒に寝たいから、そうしたんだろう。



 そして、一段落した所で俺は、湯船に起きたことをミルネとミリちゃんに話して注意を呼びかけたが、2人ともあまり興味が無さそうだ。

 それよりも2人は、他の事に興味があるみたいで、それどころではないみたいだ。



「マユリン、これ見て」



 ミルネが俺にボードゲームが入っているような箱を差し出した。



「これは何だ? どっから持ってきた?」

「何って、魔法ランキングゲームだよ。湯船から戻ってきたら、部屋の前にあったんだ」



 名前からして、すごろくゲームの魔法版というところかな? ただ、部屋の前に置いてあったのが気になるけど……。



「みんなでやろうよ!」

「うん、やる」

「なんか懐かしいわね」



 3人とも遊んだことがあるのか結構乗る気だ。もちろん、俺は普通のすごろくゲームならやったことはあるが、この魔法版は当然ながら知らない。


 もしこれが普通に魔法を使って遊ぶゲームなら、俺はまた恥をかくことになるかもしれない。

 ここは上手く誤魔化して、スル―しよう。



「俺はやめておくわ。さっきの戦闘で疲れたし、先に横になるよ。だから、3人で遊んで」

「駄目、真由ちゃんもやるの」



 そう言って俺の腕を掴んだミリちゃんは、俺の方をじっと見た。

 

 これはヤバいなぁ。このまま腕を解いて、布団に入ったら間違いなく何かやられそうだ。


 仕方ないここは、様子を見ながらやるしかないな。

 最初の頃と違って、少しづつ魔法が使えるようになってきているし、子どもでも出来るゲームならなんとかなるかもしれない。



「じゃあ、少しだけやってみようかな」



 そして、ミルネはテーブルの上に、箱から『魔法ランキングゲーム』を取り出して、何も書かれて無いボードを広げると、そのボードの上に手のひらサイズの四角の形をした、なんのデザインも無い駒を4つ並べた。



「なんだこれ? 何も書いてないぞ」

「マユリン、これから魔力を込めるんだよ」



 つい反応してしまった。分からない事があっても余計なことは喋らず、よく観察して把握していく方がいいだろう。



「あたしが魔力を入れるね」



 ミルネがそう言うと、指でボードをなぞるようにすると、すごろくゲームみたいなコースと、指示が書いてある文章がゆっくりと現れた。


 そのボードのマス目に書いてある内容は《魔力が上がる、魔法を習得する、Dランクになる≫と言った感じで、最終的にSランクの魔法使いになって『大魔法使い』『偉大なる魔法使い』とかの称号を得たものが勝ちのようだ。


 問題はこれをどうやればいいのか? ということだ。とりあえずサイコロみたいなものは無い。



「出来たよ! あとは駒に自分のデザインをするだけだね」

「うん、分かった」

「久しぶりね」



 やばい、そんな事出来ないぞ。デザインする魔法は、簡単なものならいいが、自分とか絶対無理だ。

 仮に無理にやったとしても、時間と魔力を消費してしまい、ゲームどころではないぞ。


 しかし、3人ともあっという間に、駒を自分の1/7サイズぐらいの大きさにデザインしていった。

 しかも! 本当にそっくりでかなり完成度の高いものであった。

 

 

「マユリンも早くやってよ」

「い、いやー、俺はさっきの戦いで魔力を使ったからな」



 とっさに言い訳を言ってしまったが、ここは誤魔化してゲームに参加しない方がいいだろう。

 もし、無理にデザインして、出来の悪い駒を見せてしまったら、俺が本当にCランクの魔法使いの実力があるのかと疑われてしまう。



「だから俺は……」

「真由、さっきの戦いで魔力なんか使ったかしら?」

「げっ」

 


 アルシアの的確に突っ込まれてしまった。うーん、言われてみたら全然使ってない。



「分かった! マユリンやった事ないんでしょう?」

「流石ミルネ! そ、そうなんだよやったこと無いんだよ。だから俺は……」

「簡単だよ。アバタ―の要領でデザインすればいいんだよ」



 アバタ―? 確か、鏡が無いから魔法で、自分を映し出すやつだったよな。それが出来れば苦労は無いよ!



「真由、どうしたの? やっぱりさっきの戦いで怪我したの?」

「真由ちゃん、怪しい」

「マユリン、怪しい」

「怪我はしてないけど、ちょっとね……」



 ああ、もうどうしたらいいんだよ! 


 とっ、その時!


 突然部屋のドアの外から女の子の声が聞こえた。



(やった! トバコのゲームにかかったよ)

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