第55話 スネークドラゴン討伐
いよいよ『スネークドラゴン』を討伐の為、洞窟に入るわけだが、中は薄暗く入口は割と広い。
この奥にいるらしいが、そもそも討伐する必要があるのだろうか?
でも、せっかく来たのだから、どんな魔物かぐらいは確認しておいてもいいだろう。
「今日はとりあえず、どんな魔物か確認にするだけにしようか?」
「そうね、緊急性は無いし、じっくり情報収集して念入りに作戦を立てた方がいいと思うわ」
「吾輩も賛成でございます」
「じゃあ、中に……って、ミルネとミリちゃんがいない……」
さっきまで居たはずなのに、どこに行った? まさか先に入ったわけじゃないだろうなぁ……。
それにしてもあの2人、今日で急に仲良くなった気がする。でも、ミルネとミリちゃんの組み合わせは、俺にとってとても危険な香りがするぞ。
「あの2人見なかったか?」
「吾輩、見ました。確か素材が何とか言いながら、中に入って行ったのを」
「止めろよ! あの2人がベタなことをやらかす前に、連れ戻さないと」
「申し訳ない。しかし主のやることを制止するのは、吾輩には出来ません」
ポンタに注意したが、ミリちゃんを止めるなんて、俺にも出来ないわ。
「ごめん、俺が悪かった。そうだよね……俺も無理だわ」
「真由、早く連れ戻さないと」
俺達は、あの2人を連れ戻す為、急ぎ足で中に入った。今日は軽く調査だけするつもりだったのに、何もなければいいが。
そして、中に入ると、明るい外から見れば中は真っ暗だったが、あちらこちらに魔力を持った鉱石が発光していたので、先まで見渡すことが出来た。
しかし、この洞窟の中では、魔力を使っての移動はスネークドラゴンに察知される恐れがある。だから、歩く必要がある。
普段から魔力を使用しない俺からすれば何の問題もないけど、ポンタは分からないがアルシアは大変そうだ。
「アルシア、大丈夫か?」
「はぁ、はぁ、真由は何でそんなに体力があるのかしら?」
「普段から魔力に頼ってないからかな」
「ふふふ、何それ」
冗談では無くマジな話だが、アルシアが笑ってくれた。
「元主よ、もう少し先に主の魔力を感じます」
「あいつら、魔力で移動してないだろうな」
もちろん俺には魔力の気配なんぞ全く分からない。
「この魔力は一時的に発したもので、何か魔法を使ったと思われます」
「真由、こんな所で魔法を発動させるのは危険だわ。私より早く歩けるなら先に行って止めてもらえないかな?」
「分かった! 俺に任せろ! ポンタ! アルシアを任せたぞ」
「はい、元主!」
俺は何を仕出かすか分からない2人を止める為、駆け足で先に奥に進んで行った。
しばらく走っていると、ミルネの騒ぐ声が反響しながら聞こえてきた。
あいつこんな大声出したらスネークドラゴンに聞こえるんじゃないか?
俺はとにかく走り、ようやく2人に追いついた。
「おーい! こんな所で魔法使ったり、騒いだりしたら駄目だろ!」
「あ! マユリン! これ見て! ミリちゃんにデザインして貰った!」
「おお、これは鉱石を使ったのか? 綺麗だ」
「でしょう! ここで見つけたんだ」
ミルネが嬉しそうに差し出したのは、鉱石をおはじきのような形をした綺麗な物で、少し発光しているようだ。
うーん、こういう小物は街で売れそうだな。そしたら討伐隊の資金がって!
そうじゃあない!!
隊長として2人の行動をちゃんと注意をしなければ!
「2人とも勝手に――」
「真由ちゃんも上げる」
「あ、ありがとうございます」
「マユリン、良かったね」
駄目だ、この2人のペースになってしまうぞ。
でも、ここはちゃんと注意しないと、せっかく俺だけ走って追いかけたんだから。
しかし、注意しようと思った時、アルシアとポンタが追い付いて来た。
「ミルネもミリちゃんも、勝手な行動をしたら駄目よ。ここは危険なんだから」
「アル姉、ごめん」
「アルシアちゃん、ごめん」
というか、ミリちゃんはアルシアの言うことは素直に聞くんだな。
「アルシアちゃんも、これ上げる」
「あら、綺麗……ありがとうミリちゃん。他にもあるなら見せて」
「おい」
アルシアまでミリちゃんのペースにハマってしまいそうだ。
でも、ここまでこの2人が魔法使って騒いでしまったのなら、もう注意深くする必要無いのでは?
今俺達は、言わば敵のアジトに潜入しているわけで、そんな時に大声出して、さらにデザイン魔法や素材採取時に魔法を使っておきながら「さぁ、敵に感知されないように気を付けよう」というようなアホ丸出しの事をやっている。
だったらもう魔法使って移動するなり、もう普通でいいような気がしてきた。
「アルシア、もう普通に魔力を使用してもいいんじゃないか? 察知されたならミリちゃんの魔法で気づいているだろうし」
「うーん、そうね。でも、慎重にみんな離れずに行きましょう。真由は私が運んであげるわ」
「ミルネちゃんは、ミリが運んであげる」
「ありがとう! ミリちゃん!」
「では、吾輩は荷物を」
再び、この奇妙な集団は奥へと進んで行くのであったが、間もなくして、ドームみたいに広い空洞に辿り着いた。
天井は野球が出来そうなくらいの高さがあり、3メートル程の高さの黒い壁で円状に仕切られて、道幅も車3台分ぐらいで、所々に落下した岩があった。
この黒い壁が人工物なのかは分からないが、今まで辿って来た洞窟の壁とは全然違う上に魔力の発光も無い。もしかしたら、この壁の向こう側にスネークドラゴンはいるかもしれない。
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