第54話 楽勝??真由 vs スライム
突然俺達の前にスライムが現れた。
大体の弱い魔物は俺達の魔力で、向こうから逃げてくれるみたいだが、こうやって偶発的に遭うこともあるらしい。
それにしても、もっと序盤で出てきて欲しいものだ。
でも今回は、魔力を『MPCシステム』でコントロールする『アグリケーション バージョン2』を試したいから、ちょうどいいだろう。
「アルシア、やっぱりスライムも退治するのか?」
「ええもちろんよ。C級だけど人間を捕食する場合もあるから、危険なのよ」
「ここは吾輩にお任せを。すぐに片付けます」
「いや、ここは俺に任せてくれ。ちょっと試したい技があるんだ」
「そういうことでしたら、元主にお任せします」
俺はスライムの前に立った。
実は無茶苦茶強いとかいうオチとかやめろよ。
「よし、みんな下がっていてくれ」
「マユリン、何するの?」
「とっておきを見せてやろう」
俺は目を閉じて、全身の魔力を探るようにして、それをコントロールするイメージを描いた。
がっ、しかし、これから技を出そうとしてるのに、全く空気を読まないスライムは俺に攻撃をしてきた。
「真由! 危ない!!」
「えっ!? なに!」
スライムは変形して、俺を捕食しようと覆いかぶさった。
俺は思わず払い除けようとしたが、ヌルヌルして上手く剥がせず、しかも顔から身体全部に取り付いているので、呼吸が出来ない。
うっ、やばい死ぬ……。
「真由! 全身に魔力を纏って!」
そ、そんなこと言われても……出来ない。
クソー、俺はスライムに負けてしまうのか?
「アル姉、マユリン救助した方がいいよね?」
「そうね」
このままやられるぐらいなら、一か八かで『アグリケーション バージョン2』をブチ込んでやる。
俺はそのまま屈み込んで拳を握り、スライムの顔辺りを内側から殴った!
そして、当たる瞬間を狙って『MPCシステム』で魔力を拳に集中させた。
「これがアグリケーション バージョン2だ!!」
俺が発動させた瞬間、魔力が爆発的に発生し、それが轟音と共に周囲を吹っ飛ばす衝撃波が走った。
「うわああ!! なんだこれは!?」
その衝撃はアルシア達にも襲いかかった。
「きゃあーー!!」
「吾輩にお任せを!! 魔動結界!!」
そして、衝撃波も収まり、ようやく通常の状態に戻った。俺は自分の衝撃波で少し飛ばされ、地面に転がっていた。
言うまでも無いがスライムは跡形も無く消えていた。その代わり、スライムの残骸で俺の全身はヌルヌルになってしまった。
「みんな大丈夫か?」
「マユリン、今何したの?」
「真由ちゃん、やり過ぎ」
「真由大丈夫?」
みんな驚きを隠せないようだが、一番驚いているのは俺だ。こんなにパワーがあるとは思わなかった。
地面は大きくえぐられて、周囲の草木が倒れている。ポンタがバリアを張ってくれなかったら、大変なことになっていた。
「真由、何をしたのか知らないけど、今のは危ないわよ」
「ご、ごめんなさい」
「マユリン、なんで寝たままなの?」
そうなんだよ。俺も起きようとしてるんだが、魔力を一気に使ったせいか身体が思うように動かない。
「すまんが起こしてくれないか? なんか身体が動かなくて……」
「しょうがないね」
そう言うとミルネが俺の所に来て手を差し伸べた。
「あれ? マユリン、ヌルヌルして滑るよ」
「うん、さっきのスライムのせいだ。ついでに魔法のクリーンをして貰えると助かるんだが」
「でも、ヌルヌルして触り心地いいよ」
「おい、何している?」
ミルネは俺を助けようとせず、全身ヌルヌルの俺の身体を触り始めた。当然ながら、それを見逃さなかったミリちゃんもやって来て、ミルネと一緒に触り始めた。
「お、おいやめろ!」
「ほーう、真由ちゃんヌルヌル」
「マユリン、もうちょっとだけ」
「お、おい、やあんめんかい!」
駄目だ! 身体が動かないから抵抗出来ない。
「や、止めろ! これ以上やると変な気持ちになってしまう! そうだ!アルシア! 助け……え」
「…….」
アルシアは、その光景を黙って見ていて、ちょっと羨ましいそうな表情にも見えた。
「アルシア助けて!」
「あっ! ちょっと2人ともいい加減にしなさい!」
アルシアが注意をしてくれたおかげで、2人は俺から離れ、さらにクリーンの魔法をかけてくれたので、ようやくヌルヌル地獄から解放された。
「ありがとう、アルシア」
「もーう、真由気を付けないと、魔力の使い過ぎよ」
「はい、すみません」
「動けるようになるまで私がおんぶしてあげるから」
「えっ? おんぶ?」
別に何でもいいんだけど、なぜおんぶなんだろう?
アルシアは俺をおんぶすると、当然ながらアルシアの身体に密着した。おんぶも魔力を使っているとは思うけど、疲れないのかな? お姫様抱っこで、魔力で持ち上げる方が楽のような気がするが。
「ミリもおんぶしたい」
「ミリちゃん、疲れた時は頼むわね」
「じゃあ、ミルネちゃんおんぶする」
「いいの!? やった!!」
「荷物は吾輩にお任せ下さい」
うーん、ますます謎の集団になっていくな。
――こうして、俺達はおんぶをしながら、どんどん先に進ん行くと、日はまだ高いが、目的地であるボルボン山脈の『スネークドラゴン』が眠る洞窟にやって来た。
思っていたよりかは早く到着したが、よく考えれば俺はほとんど乗っけてもらってただけだった。
やっぱり、魔法での移動は楽で良さそうだ。俺も早く慣れないと。
「真由、着いたけど大丈夫?」
「そうだな、あれ? 身体が普通に動くぞ。もう回復したのか?」
「真由、そのために密着したんだから」
「密着すると、回復するの?」
「私から発している魔力が、真由の魔力を刺激して、活性化したからよ」
なるほど、密着するだけで魔力も回復出来るのか。
これから『スネークドラゴン』の討伐の前に、動けるようになって良かったぞ。
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