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第53話 アルシアもモフモフしたい!?

 まぁ、無事に朝を迎えたわけなんだが……。

 昨日はあんな状況だったのに、いつの間にかぐっすりと眠ったんだよな? 

 拘束も解けているし。


 それに一番不思議なのは、身体の痛みが無くなっていることだ。

 

 うーん、そんな二日三日寝て治るような傷じゃあなかったと思うが、これはミリちゃんが何かしたのかな? 

 でも、この世界に直接治す魔法は無かったはずだし、俺が以前にお世話になった回復室だけだったと思うのだが.....。


 まぁ、いいか。治ったわけだし。

 


 昨日のアルシアの話だと今日の予定は、いよいよネスタリア区域を出る事になり、今までは管理された道を進んできたが、これから先はボルボン地方に入る為、管理されていない区域になるそうだ。


 しかも、獣道になる場合もあるので、魔物に遭遇する可能性が高くなるから気を付けないといけないみたいだ。


 もうすでに魔王や幹部に遭遇してしまった俺にとっては、「ふーん」って言う感じだけどね。


 

 

 ――そして、俺達は朝食を済ませ、そろそろ出発する頃なんだが、なぜかミルネは俺をお姫様抱っこしようとしている。

 昨日出来なかったせいか……。



「おい、ミルネ何している?」

「昨日出来なかったから、今日はあたしがするの」

「もう怪我は治っているぞ」

「いいの! ミリちゃんがいいって言ったんだから」



 どうやら俺の許可が無くてもいいらしい。でも、その方が楽に移動出来て悪くないかもしれない。

 しかし、ミルネはポンタやミリちゃんみたいに慣れてないのか、動作がぎこちない。



「おい、大丈夫か? 俺を落とすんじゃないぞ」

「分かってるよ」

「絶対にだぞ」

「大丈夫だって」



 うーん、あともう一回言ったら逆に「落としてくれ」という意味になりそうだから、これ以上言うのはやめておこう。



「マユリン、おんぶしてあげる」

「あ、諦めやがった」

「……」

「おい、どうした?」



 ミルネは俺をおんぶしようと、俺を魔力で持ち上げようとしたらしいが、そのまま動かなくなってしまった。そして……。


 ドスーン!!



「落としとるがな!」

「ごめんね。マユリン持ち上げての移動は、魔力のコントロールが難しいよ」



 簡単に言えば、同時に2つの事をするのが苦手のようだ。でも、ミルネなら少し練習すれば出来るようになるだろう。



「今回はパスするよ」

「今回は?」

「じゃあ、次はアル姉の番だね」

「えっ!?」



 突然のミルネの提案にアルシアは驚いた表情を見せた。



「えっ、私もやるの?」

「そうだよ、ミリちゃんの許可はある」



 アルシアは恥ずかしいのか、顔を赤くさせ俺の方を見た。そのせいで、俺もドキっとしてしまい、変な緊張感に包まれた。



「でも……お姫様抱っこは……」



 アルシアは珍しくモジモジさせながら、どう対応していいか分からないような感じだった。



「アル姉、無理ならいいよ」

「いいえ! 私やるわ!」

「あっ、うん」



 話が流れそうになると、アルシアは力強く返事をしたので、ミルネも少し驚いたようだ。


 もしかして、アルシアも俺の事を、この2人と同じようにモフモフしたいとか思っているわけじゃないよな? 

 頼むぜアルシア、お前もこの2人のようになってしまったら、収拾がつかなくなるぞ。



「ひっひっひー、マユリン可愛いから、分かるよ」

「も、もうそんなじゃないってばー」



 そうじゃないことを信じてるぞ、アルシア。



「さぁ、行きましょう」

「お、おい」



 アルシアは照れているのか、俺を素早くお姫様抱っこをして、出発しようとした。

 

 先頭に俺とアルシア、その左右側からミリちゃんとミルネが興味津々で俺を見ていて、さらにその後ろに、俺の荷物を持ってくれているポンタがいる。


 うーん、これはもう討伐隊には見えないだろう……。


 それにしてもアルシアは、俺の方を時々ちら見して、その度に顔を赤くして、視線を再び前に戻している。

 


「どうかしたか? アルシア」

「えっ? 別に……何も」



 そうやって照れるアルシアは可愛い。今までそんな表情した事がないから、俺まで照れてしまう。

 

 なんか気まずくなりそうだから、ここはちょっと真面目な話でもして落ち着こう。

 アルシアに、この前の魔王軍幹部のマリが使ってた魔法のことでも聞いてみるか。



「アルシア、魔法の事でちょっと聞いてもいいか?」

「なに?」

「『魔動引力』と『魔動ショック』という技なんだけど……高度の技なのかな?」

「『魔動引力』は難しくないけど、実戦で使えるレベルになるのは大変だし『魔動ショック』は、この魔法自体がもの凄く難しいの。この魔法がどうしたの?」


「うん、もう少し詳しく知りたいなーと思って」



 アルシアはこの魔法について、分かりやすく親切に俺に教えてくれた。

 

 真面目な話をし出したせいか、ミルネとミリちゃんは一緒に後ろの方にまわって、何やら楽しそうに会話をしている。

 その会話の中に俺の名前がよく出てくるので、話題は想像がつく。


 そして、アルシアの話を要約すると『魔動引力』は使用しても、簡単にかわされるから使用する人はあまりいないらしい。

 

 かわし方は、相手の魔力を感知して引き寄せるみたいだから、疑似的に魔力を出して、対象を自分から逸らすことで回避出来るらしい。


 でも、術者が高度な魔法なら、疑似的な魔力に引っかからないらしいし、その逆も一緒で、対象者も高度な魔法で疑似的に魔力を出せるなら、勝敗は分からなくなるという事だ。


 だから、魔王幹部のマリは、この魔法に自信があって使用したのに、俺が何もせず喰らってたから、ふざけてると思ったんだろう。


 そしてもう一つ『魔動ショック』だが、これは興味深いことが分かった。

 この魔法は『魔動拳』みたいに単純に魔力を纏って殴るとかではなく、相手に攻撃が当たるギリギリで瞬発的に魔力を纏わせるみたいだ。

 

 そのせいで、相手もギリギリまで魔力感知が出来ないので、攻撃パターンが読めなくなる上、瞬間的に爆発的にな魔力を纏うので攻撃力も高く、省エネらしい。


 いいことだらけの魔法だが、瞬間的に的確に魔力を纏わせるのはかなり高度の技が必要で、Sランクでも出来る人はあんまりいないという事だ。


 それで、なぜこれが興味深いかというと、この技のやり方が『MPCシステム』と同じという事だ。


 つまり、今までは『MPCシステム』に単純に魔力を上乗せして、攻撃をしていたが、この発想なら魔力自体を『MPCシステム』でコントロールして、瞬発的な攻撃が可能になるのでは? という話だ。


 しかも、最近は自分の魔力も感じれるようになったから『MPCシステム』でコントロール出来ると思う。もしこれが成功したら、俺は結構強くなるんじゃないか。



「ありがとう、アルシア。いい勉強になったよ」

「どういたしまして。でも真由はもっと基本っ。な、なに?」

「うわ!」

「あれはスライムだわ」

「スライムだと?」



 ひっひっひー、ちょうどいいところに、いい魔物が現れたな。

 これは早速試せって言っているようなもんじゃないか。


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